「うひゃ~、やっぱりここはあっちいな~」
「火山か」
「もう帰りたくなっちゃったよ」
ナギサ、ヴァージニアを伴って到着したジャックを見て、面々に安堵の空気が広まった。
『龍殺し』がいるなら、これほど心強い味方はなかったし、それ以上のものを見出している面々も少なくはなかった。
「重役出勤ですね、ジャック」
エルウェンがジャックをたしなめた。一応、テアトル所属の戦士であるから、大隊長として規律を守らねばならない。
「うっす、すんません。でも、ラークスさんと話してたんですよ」
「彼は何と?」
「任せるって」
思わず彼女は苦笑した。同時に、ラークスの意図も読み取れる。ジャックに限れば、下手に縛るのではなく自由に動かしたほうが最大の力を発揮させられるという腹積もりだろう。
「大隊長、おっさんは―」
「レナード団長だろ」
レナードが本陣からやって来た。彼をしても、ジャックの到着は有難いとしか言いようがない。
「丁度いい、お前ら、偵察に行ってくれ」
「いいの? そのまま、龍倒しちゃうかもよ」
「調子に乗るな、いいから行ってくれ」
「了解~」
相変わらずの軽い調子に、思わず周囲から笑いが上がる。
一方で、エルウェンら各ギルドの実力者たちは、それが彼がわざとそう振る舞っているのだと察知していた。
「よっしゃ、それじゃ~……いっちょ行ってくるか」
「待って下さい、ジャックさん」
呼び止めたのはミランダら僧侶ギルドの面々だった。
「私たちも一緒に、やけどを負ったら治して差し上げます」
「そう? ならお願いすっかな。おっさん、宴会の準備しといてくれよな~」
「おっさん言うな!」
『龍殺し』2度目の龍討伐は、限りなく軽く始まった。
「せい!」
「よっとっと……」
「ぐっ……」
ナギサとヴァージニアの一撃を受けたブラッドオークの巨体が力を失くし、転げ落ちて溶岩に呑まれて消滅した。
その脇では、ジャックがフレイムアントの群れを薙ぎ払っている。
『偵察任務』に一行が出発してから数刻、すでに彼らは100を越える敵を倒していた。
「これがオークか……『鬼』に似ておるな」
「話には聞いてたけど、乱暴な妖精たちだねえ」
「トゥトアス最凶の種族だからな……」
ジャックが睨んだ通り、モンスターに加えてブラッドオーク達が立ちはだかっている。それも、たまたま出くわしたのではなく、意識的にこの一帯を守護しているのだ。
本能のままに生き、『強きものに従え』を唯一の掟としている妖精にあっても異端の種族。それに集団行動をさせている以上、妖精たちにはかつてのザイン、ガウェインらのような強者がいるのは間違いない。
それはリドリーとされる少女か、あの黒鎧か、はたまた別の存在か。自分はそれに勝てるのか?
「ジャック……そろそろ帰らねえだか~?」
「あのな、クライブ、俺たちは偵察に出てるんだぞ」
「だったらもういいべ、ここはあぶねえのがいっぱいおる。そう報告すっぺ」
「クライブさん、私たちは火龍がいるかどうかを見ないとダメなんですよ?」
「だべ~」
そして、今ジャックたちの最大の問題は僧侶ギルドの面々の状態だった。