ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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火龍パーセク⑤

 フローラ・ペンとクライヴ・パーカーは、ジャックの仲間として幾度も同じ戦場に立ったことがある。

 

 しかし、『龍』と相対するのはこれが初めてであった。

 

「しゃあああ!」

 

「か、硬い!」

 

「逃げていいかな僕⁉」

 

 そして、これまでその機会に恵まれなかったことに感謝し、巡り合ってしまったこの瞬間に恐怖していた。

 

 やっていることは、後方に下がって薬品をなげつけ、奇跡でジャックらの回復を行う支援が主である。

 直接『龍』と相対しているわけではなかったが、それでもいつ次の瞬間に命が四散してもおかしくないとの緊張に苛まれ続けていた。

 

 まさしく、次元が違う。

 それでも逃げ出さずに支援に徹しているのは、流石の精神力であった。

 

「うあっ!」

 

 強烈な一撃を受けて、ジャックが吹き飛ばされて転がった。

 すぐさま追撃の火炎弾が降り注ぎ、一帯は熱で溶岩と化していた。

 

 

「早く戻ってこい!」

 

「立ってジャック!」

 

「わかってるって!」

 

 それでも、すぐさま起き上がることができたのは、フローラらの治癒と、モルガンに(断りなく)渡された鎧のおかげだった。

 

 『銀龍』を模したその鎧をジャックは好かなかったが、彼女の言葉通りに、圧倒的な強靭さと耐性を誇っており、『火龍』の炎すら防ぐことができていた。

 

 が、刻一刻奪われていく体力は如何ともしがたい。熱気と相まって、長期戦となれば不利になる一方だった。

 

「くおおっ! 龍とはこれまで⁉」

 

「まずいね……」

 

 ナギサ、ヴァージニアは戦線を支えているが、『龍』へ決定的なダメージを与えることは出来ていなかった。

 

 堅牢な鱗と『時の癒し』が相まって、さながら動く巨山と戦っているかのようだ。肉体的、精神的な圧迫は、彼女らがこれまで感じたことのない異様なものだった。

 

「しゃああ!」

 

「ー‼」

 

 辛うじて、ジャックの一撃は傷を与えている。

 だが、『時の癒し』による回復により『龍』も依然として力を保っていた。

 

「ジャックさん!」

 

 形勢が変わったのは、ようやくミランダらが味方を引き連れて戻った時だった。

 

 エルウェン、ジェラルドら、各ギルドから一線級の仲間らが駆け付けた。

 

「助かったぜ! ナギサたちは下がって、大隊長たちと交代しろ!」

 

「ま、まだやれる!」

 

 抵抗するナギサを、ヴァージニアたちが抑え込んで下らせる。

 

 『ヴァレス』の面々による一斉魔砲攻撃でできた、『龍』の怯みを一瞬の隙としてジャックは大きく息をついた。

 

「おら、へたってんじゃねえぞ!」

 

「おっす! まだまだ!」

 

 ジェラルドに喝を入れられ、ジャックは息を整えた。

 

「ジャック、あれはパーセクなのですか?」

 

「違うみたいっす……おっさんじゃない。言葉も通じません」

 

 傍に立ったエルウェンにジャックは答える。

 謎多きラジアータ王国最強の剣士は、先の戦争で戦った火龍パーセクとも知古であったのだ。

 

 もし、彼と同じ個体であったら……淡い期待が否定されると、切り替えも早く『聖剣アヴクール』を構えた。

 

「いけますか?」

 

「もちろん!」

 

「どれどれ、ワシらも手を貸すかの」

 

「ふむ、修行の成果を見るよい機会じゃ」

 

 すっ、と音もなく二人の翁が並んで立っていた。

 『オラシオン』の重鎮、フェルナンドとゴドウィンである。優れた僧侶でありモンクとしてもマスターの腕前を誇っている。

 

「フェルナンド翁、ゴドウィン翁、ここは俺たちに任せてください。年寄りには荷が重いですよ」

 

 ジェラルドが言う。口は悪いものの、彼なりの気遣いであった。

 

「ほっほ、坊主が言うようになったのう」

 

「エルウェン殿によう泣かされておった泣き虫が立派になったもんじゃわい」

 

「え? 副長にそんなダッサイ過去が?」

 

「昔はよう泣いておったわい」

 

「迷子になって送ってやったこともあったかの」

 

「おい! くだらねえこと聞いてんじゃねえ!」

 

「いってえ!」

 

 思わずエルウェンも吹き出していた。さしもの『斬鉄』も、生き字引の二人にはまだまだ敵わない。

 

「ててて……でも副長、副長にはあっちを何とかして欲しいっす」

 

「あん?」

 

 ジャックが指さす先には、迫りくるブラッドオークやモンスターの群れの姿があった。『龍』を守護戦としているのか、単純な戦闘意欲に駆られてか、ともかくすさまじい数だった。

 

 グレゴリー、ワルター、ナギサらが応戦しているものの、その数と一個の手ごわさから劣勢に陥っているようだ。このまま放っておけば、二正面作戦を強いられることになる。

 

「っち……大隊長!」

 

「そちらは任せました、ジェラルド」

 

 軽くうなずくと、ジェラルドはブラッドオークたちへ先陣を切って突入していった。

 彼の登場を受け、戦士たちも活気づく。すぐさまに押し返せはしないものの、互角以上に戦い当面は任せても大丈夫そうだった。

 

「さっすが副長!」

 

「ジャック、向こうは任せて、こちらは火龍を倒しましょう」

 

「うっす……みんな、よろしく!」

 

「うむ」

 

「参ろうかの」

 

「ー‼」

 

 いよいよ、『火龍』との本当の決戦が始まった。

 

 

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