「よくやってくれました、ジェラルド」
エルウェンに労われて、ジェラルドはバツが悪そうに頭をかいた。
「みっともねえです、取り逃がしちまった」
「いえ、おかげで『龍』を撃退できました。残りの敵にも、油断せずにあたりましょう」
「それが良さそうじゃのう」
「もう少し体を動かすか」
残ったモンスターたちを掃討し、落ち着きを取り戻すにつれて、『火龍』を撃破したという高揚が静かに皆の間に広まっていった。
「この戦争も勝てるぞ!」
「おれたちには『龍殺し』がついてる!」
「また『龍』が蘇っても恐れるに足りない!」
あちこちで声があがる。先の戦争で大いなる脅威となった『龍』の復活で立ち込めていた暗雲が、一気に晴れるかのようだった。
「ケガをしている人はこちらへ」
「オラたちが手当するべ~」
オラシオンを中心とした負傷者の救出、戦後処理もスムーズに進んでいき、人々の間には明るい笑顔が交わされていた。
「ふう……」
しかし、ジャックの顔は晴れなかった。
モルガンに渡された鎧によってもたらされた疲労に加え、パーセクの復活、その正体らしき黒い鎧の男、謎はますます深まる一方であった。
「『龍殺し』の名に恥じない働きでした、ジャック」
「大隊長……おっさん……『火龍』は、どうして蘇ったんですか?」
懐からオーブを取り出す。『火龍』が封じられているはずのそれは、内部で焔が燃えているかのように赤く輝いていた。
「おっさんは、ここに……それに、あいつはあの鎧の男だった」
「残念ながら、私にもそれはわかりません。このトゥトアスは今、過去にない時を進んでいます。あなた自身で、確かめるしかないでしょう」
「……そうっすね」
「忘れないでくださいジャック、時には皆で歩むことも大切です。どれだけ強くとも、賢くとも、それは不変です」
それだけ言い残し、エルウェンはワルターに呼ばれてその場を後にした。
何か知っているにしても、彼女の口から告げられた言葉では意味をなさない。そう含められているような気がした。
「よっしゃ」
考えることは得意ではない。ならば、行動して真実を確かめよう。ジャックはそう思い直した。
「ジャック!」
「無事みたいだね」
ナギサとヴァージニアが小走りでやってきた。手当はされているものの、あちこちに生傷が見て取れる。『火龍』との戦闘後も、ブラッドオークらに応戦していたのだろう。
「ところでさ、これだけのことしたんだからご褒美あるよね?」
「まだまだ剣技未熟なれど、いずれはお主を超える! 次なる『龍殺し』は我よ!」
ジャックは、無言で二人を抱き寄せた。
「なっ⁉」
「ちょ、ちょっとジャック……」
「ありがとうな……」
本心から出た言葉だった。
二人の振る舞いは自分勝手なもの、だが、そこにジャックはたくましさを見出した気がした。
それがありがたかった。ついつい陰に進みがちな今の自分には、これくらいの仲間がいてくれた方がいい。
「これからもよろしく頼むぜ! 二人とも!」
「わ、わかったから」
「離して!」
ジャックに抱きしめられているのが嫌なのではない。
照れくさいのと、尋常ならざる殺気を含んだ複数の視線がいくつも向けられていることに焦ったからだ。