「ジャックはいるか~」
「こっちだぜおっさん!」
「おっさん言うな!」
ほどなくして、レナードが率いる本隊が到着した。
ジャック、エルウェンらから事の顛末を聞いたレナードは、負傷者の救出と騎士団の再編を図ると共に、各ギルドへ帰還命令を下した。
少なくとも今は、この場にこれだけの戦力を残しておくことは得策ではない。第2、第3の『龍』が今すぐにでも蘇らないとは限らないのだ。
「ジャック、いずれラークス様から呼び出しがあるからな」
「おっけ」
ジャックとしても、ラークスから何か情報が得られればと思っていた。ジーニアスの動向も気になる、レオナから渡された手紙は、彼には難解すぎる内容だったからだ。レオナですら解読が困難であったのだから、当人にしかわかりようがない。
「よく休んでおけよ、……多分、他の『龍』も復活する」
「だろうね……」
これはレナードに限ったことではなく、誰もが薄々予感していることであった。
その原因は定かではない、しかし、ザインらを喪った妖精たちが反攻の兆しを見せているという事は『そういうこと』なのだろうと想像できた。
「ま、この『龍殺し』のジャック様に任せておけって」
「調子に乗るな」
へらへら笑いながら去っていくジャックに、しかしレナードは一抹の不安を感じずにはいられなかった。
やはり、この少年は無理して明るく振る舞っている。
招集した人々が一度に帰ると混乱が予想されたため、何組かに分かれての王国への帰還となった。
ジャックは一番最初の集団に組み込まれ、同じく組み込まれたナギサ、ヴァージニアらと共に帰路につくのだった。
『龍』を滅したとはいえ、妖精たちの報復、徘徊するモンスターたちの襲撃が予想されるため、遠征する時と同様に警戒体制での行軍となった。
「なんと、姉上が師匠と言うのか?」
「まあそうだな、それからは……師匠っていう師匠はいないかな」
ナギサはジャックを質問責めにしていた。武を貴ぶ彼女は、『龍』を倒した彼を目の当たりにして、ますますその力へ関心を持ったのだった。
それを上回るならば、出来るだけ情報を集めねばならない。
「う~む……」
「エアデールさんに弟子入りでもするの?」
「い、いや……そうではない」
ヴァージニアは反対に、ジャックの身の回りの情報に興味を強めた。
その実力は、かつてジャックが彼女の故郷を訪れた時に十分以上に理解させられた。『龍』を打倒したことも、納得の域である。
ならば、それをどう利用し役立てるか。それこそが関心ごとだ。
「先の翁達も凄まじかった……格闘を磨くと言うのも……」
「どうにか言いなりにさせられれば……僕がヴォイドを……」
「ま、好きにしなよ」
ジャックは周囲への警戒に気を張っていた、遠巻きにだが、妖精たちの姿が見え隠れする。
こちらを見張っているのだ。
仕掛けては来ないが、やはり戦争は、すでに始まっているのだった。