ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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在りし日

 見え隠れする妖精たちの姿とモンスターたちの襲撃に悩まされながらも、『火龍』討伐に駆り出されたジャックを含むギルドメンバーの第一陣は、ラジアータへ帰還を果たした。

 

「なんだあ?」

 

 到着と同時にジャックが漏らした言葉は、ダニエルやクライブからも聞こえた。

 

 ルプス門の外には騎士たちが立ち並び、鼓笛隊の奏でる音楽が響き紙吹雪の舞うパレードの様相を見せていたからだ。

 

 ニットやユーリら住民たちが歓声を上げている姿も見える、この前パレードがエルフたちの襲撃でご破算となった、アナスタシアや従者、エレナらも参加しているようだ。

 

 戸惑うジャックたちが立ち往生していると、騎士たちを引き連れながらナツメがその前へ歩み寄って来た。

 

「『火龍』討伐の義、誠に見事でした! 『桃色豚闘士団』副長ジャック・ラッセル殿! また各ギルドの皆さま! どうか城にて傷をお癒しください!」

 

 形式と仕草は完ぺきであったが、やはりどこかまだ貫禄に欠ける宣言であった。

 

 

 

 そのまま、ジャックたちは大歓声の中を連れられて城へと通された。

 待っていたのは国王からの直々の労いと、全員への報酬金の授与、贅を凝らした酒と料理の山だった。

 

「伝令からレナードの報告を受けています、『火龍』討伐へ参加した全ての方に同様の御礼をするつもりです」

 

 ナツメの宣言を受け、各ギルドの面々は思い思いにこの桃源郷を過ごすのだった。

 

 酒豪のジェラルドを始めとする戦士ギルドメンバーは、浴びるように滅多に口に出来ない上等酒を水のように呷り、貯蔵庫を空にする勢いで料理を腹に収めていた。

 

 『神聖オラシオン教団』の面々は、これを機に城の貴族、重臣らと新しい縁の構築、関係強化を狙う新体制派と、食事を持って帰り施しとして配るために保管する旧体制派、どちらでもなく飲食に夢中なものと3分されていた。

 

 『ヴァレス』の面々の姿は少なく、セシルが代表として来ているほかは生徒が数名見えるだけだった。

彼らに取っては祝宴よりも自身の研究が大事なのだろう。

 

 『ヴォイド』からは、オルトロスやノクターン、イリスと言った幹部らが出席し、不気味なほど品性正しく過ごしていた。

 

 

 さて、『龍殺し』の名に恥じぬ活躍をしたジャックはというと、うんざりするほど続いた『挨拶』を終わらせた後は、隅に座って何をするでもなくぼんやりと過ごしていた。

 食事を載せた皿を側に置いてはいるものの、少し手を付けた程度で放置され、すでに乾燥し始めている。

 

 ジャックを憂鬱にさせているのは、過去の記憶であった。

 

 騎士となって最初の任務、ドワーフのゴンドノビッチを護衛した帰り、凱旋パレードの有無をガンツに尋ねてリドリーに呆れられたのだった。

 

 その後、リドリーの誕生会に呼ばれて顔を合わせたが、そこそこで席を外した。

 

 そして……

 

「はあ……」

 

 欲しかった(どうかさえ定かではないが)ものが、否、それ以上のものが今目の前に広がっている。

 

 しかし、リドリーもガンツも、一番一緒にいて欲しい者はもう……。

 

「どしただ、腹でも痛えだか?」

 

 間の抜けた顔で、クライブがジャックをのぞきこんでいた。

 

「いや、ちょっと疲れただけだ」

 

「ほーん、まあ、体には気を付けるだぞ」

 

「わかってるよ」

 

「おめえも随分上にいっちまったけどよ、おらも頑張ってるだぞ。次は『龍』を倒して見せるだ」

 

 ジャックは失笑した。しかし、不愉快ではない。とことんマイペースなのがクライブの長所でもあるからだ。

 

「やめといた方がいいぞ、めちゃくちゃ強いんだから」

 

「んだと~?」

 

「クライブ、ちょっと手伝っておくれよ」

 

「お、わかっただ。そんじゃな」

 

 エドガーに呼ばれてとことこ去っていく彼の後ろ姿を見て、ジャックは少しだけ気が楽になった。

 

 

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