気を取り直して、滅多に味わえない御馳走に舌鼓を打とうとしたジャックであったが、そこへラークスがやって来た。
「いえ、そのままで」
以前のジャックであれば、「あ、ども」などと言って料理を取りに行っただろうが、流石に今の彼には多少の分別があった。立ち上がり、挨拶をして次の言葉を待つ。
「大人になりましたね」
苦笑しつつ漏らしたその言葉には、どこか寂しさも混じっていた。かつてケアンともそっくり同じやりとりをした記憶がよみがえったからだ。
「何度目かですが、『火龍』討伐にお礼の言葉もありません」
「みんなに手伝ってもらったからっすよ」
これは謙遜ではなかった、ジャック一人では勝てなかっただろう。良くて相打ちだ。
「レナードからの報告によると、その正体は黒い鎧を着た人物だそうで?」
「はい」
「仮初の姿という事でしょうか? これまでのように?」
「う~ん、それとかについても、ジーニアスと話したいんすけど」
「まだ戻って来ないようです……調査が長引いていると」
ジーニアスの頭脳は知っていたし、彼の判断に異議はなかった。とはいえ、手紙を一通寄越しただけで報告が何もなしではいささかの苛立ちも覚える。
「待つしかなさそうですね」
「そうっすね……」
「それと、エアデールさんにもあなたの活躍を伝えてあります。謝礼金もお渡ししましたので」
「? ありがとうございます……」
唐突に姉の話をされて戸惑うジャックであったが、彼が知らないだけでラークスはケアンの娘であるエアデールのことももちろん認知していた。
残念ながら父ほどの剣才には恵まれなかったが、騎士として、そして友として良く知る男の娘とあれば気にかけない訳もない。
「ジャックさん、ここだけの話なのですが」
「はい?」
「妖精たちの動きが活発になっているとの報告が入っています、ヘレンシア砦の周辺で特に」
「戦争に?」
「いえ、まだ偵察の段階のようですが……『龍』はあと3体……場合によっては『銀龍』と『金龍』も残っているはずです」
ジャックは唸った、『風龍』、『地龍』、『水龍』、そして因縁の『銀龍』、『金龍』は復活していない、というのは希望的観測に過ぎるだろう。それも強化された『龍』だ。
「ジャックさんには、ひと働きもふた働きもしてもらわねばならないでしょう」
「ですね……」
ラジアータ、そこに暮らす人々を守るため。
そして、リドリーと目される妖精を率いる少女。
その結末を見届けるまでは、生き延びねばならない。
「期待していますよ」
「うっす……ま、どーんと任せてください」
「ふっ……長く時間を取らせてしまいましたね、さ、宴を楽しんでください」
「ジャック~」
「すっごくおいしいよ~」
「おう、今行く!」
「ジャックさん! 大きい声を出さないでください! アナスタシア様がお話し中です!」
「礼儀作法に欠けてるのね」
ダニエルとナルシェ、その他に呼ばれ、ジャックは一礼して去った。その周囲には多くの仲間がいる、所属も歳もまるで違う、多くの人々が。
ラークスは、その姿を見ると何故か安堵を覚えた。