「およ?」
「よお! 早いな!」
『星と信仰の白街』へ差し掛かったところで、クライブとエルヴィスに出会った。
「おっす」
「おはようございます、信徒の皆さまですね」
「んあ? ああ、オラは『オラシオン』の僧侶だども」
「君は初めて見るな! おれはエルヴィス! よろしく!」
初対面らしいホリィと二人に首を傾げたジャックだが、すぐに合点がいった。昨日絡んでいたのはアナスタシアとエレナ、アディーナ、それからカインとアキレスだ。
解放されたのが深夜だから、まだカインは信徒に布告していないのだろう。ひょっとすると、朝の説法で知らせるつもりかもしれない。
「ホリィと申します、どうかお見知りおきを」
「んで、おめえはこんな朝早くにどうしただ? 『テアトル』の仕事か?」
「あ~……ちょっと、お祈りに」
クライブとエルヴィスは顔を見合わせた。
「神への信仰に目覚めたのか⁉ 嬉しいぜ!」
「ひょっとしておらの説法で改心しただが? ひゃ~、おらも一人前だべ」
「違うよ……はあ」
実際は姉から逃げるため&ごねるのも面倒という理由だが、流石に信徒相手にはバチアタリだろうと口を閉ざすだけの良識がジャックにはあった。
「丁度おれたちもカイン様の説法へいくところだ! 一緒にいこうぜ!」
「ゴドウィン翁に自慢できるだあ」
「いや、俺そこまで本格的な―」
と、ジャックは周囲に鋭い目を走らせた。
「ジャック様……」
「ああ……クライブ、エルヴィス、ちょっとまずいぜ」
その真意を二人が問う前に、朝もやの中から『それ』が姿を現した。
バーグラー、盗賊である。皆一様に同じ格好で、袋を被って誰が誰やらわからないようにしている。
悪事を働く際の『伝統的』な立姿で、『ヴォイド』の関係者、あるいは雇われた人間が素性を隠すのに好んで纏う。
「む! なんだお前ら!」
エルヴィスの叫びを無視して、四方に展開したバーグラーたちはじりじりと距離を詰める。どうやらジャックらを害するのが目的のようだ。
「ひゃ~、物取りだべ」
「よし! 日頃の修行の成果を見せてやるぜ!」
緊迫した状況なのにどこか間延びしたクライブと、気負って叫ぶエルヴィスをよそに、ジャックとホリィは冷静だった。
「ここも荒んだ場所のようです」
「まあ……、色々あるよな」
「悪しき方々でしょうか?」
「盗賊だからなあ……」
ジャックは昔、『テアトル』の依頼で呼び出された場所で、こうやって囲まれたことがあったのを思い出していた。
丁度、『アハト』の隊長として売り出し始めていた頃だ。とするとこれは、『龍殺し』を再び成し遂げた自分を誰かしらが狙っているのだろうか?
「やれ」
リーダー格らしい一人が呟くと、全員が一斉に動き出した。
連携は確かで無駄がなく、中々の練度を誇っているらしい。しかも、狙いはホリィのようだった。
「覚悟し―」
その時点で、彼らの命運は尽きていた。
切り込み隊長役らしき一人が、ホリィの蹴りで『弾き飛ばされ』、そのまま動かなくなった。
「なにっ―」
それに次いでいた二人目は、ジャックに切り捨てられ斃れた。
またたく間に、ジャックとホリィにより蹂躙され、盗賊たちは戦列を乱していた。
「引けっ」
半数がやられた時点で、リーダー格の男は素早く撤退命令を出した。
負傷、あるいは絶命した仲間を回収し、実に手際よく盗賊たちは姿を消した。情故に、ではない。置いていった場合の情報漏れを怖れてである。
それなりに腕の立つ者たちであったが、相手が悪かった。