盗賊らを撃退後、なんとジャックたちはそのまま朝の説法へと参加した。
これは、ホリィの意向とジャックの思惑が一致したためである。彼女は襲い掛かって来た盗賊などよりも神への祈りが重要であって、ジャックは考える時間が欲しかった。
(アナスタシアだよな……)
皆を前にしてのカインの説法とホリィの紹介をする横で、ジャックは盗賊たちの『雇用主』が間違いなく、この場にいるライアン家当主であろうと当たりを付けていた。
何しろ傍若無人が歩いているような彼女のことだ、面子をつぶした(と思い込んでいる)相手をただで済ませる訳がない。
一方で、だとしてもあれほどまでに性急な動きを取るかという疑問はあった。流石の彼女でも、あれだけで命を取ろうとまではすまいと思える(確信はできなかったが)。
ならば、彼女の『周辺』の先走りだろうか? 一強状態の『東方山猫家』、すでにある権力の強化を、あるいはその権勢に連なろうと考える者は多いはず。アナスタシアが意図したかどうかは別として、ホリィの一件を知った者が顔を売ろうと……。
「ジャックさん」
フローラの咎める声で我に返ったジャックは、自分以外が立ち上がり壇上を下りるカインを見送っているのに気付いて慌てて立ち上がった。
(いっけね……)
こんな『ややこしい』ことを考えるのは、自分には似合わない。だが、全く無視してもいられない、これは成長であるか妥協であるか。
結局ジャックは、折角の説法の最中であるのに、一度も神へと意識を割かなかった。
「ホリィ、しばらく協力してもらうぞ」
「まあ、ジャック様からお声がけをいただけますとは。光栄です」
説法が終わり、ジャックはホリィへそう声をかけた。
しばらくは、アナスタシア『周辺』の影がちらつくかもしれない。そうなると、ホリィ自身よりも周囲が危険だ。『サガルヴィア』の再演は避けねばならない。
朝の一件は、どうやら『表沙汰』になっていないようだ。その証拠に、騎士団が未だに尋ねて来ない。襲撃自体が『なかった』ものとして扱われているのだ。
ラークスはどこまで関与しているだろうか? いずれにしても、彼でも『東方山猫家』の意向を完全に無視することはできまい。
「目も覚めちゃったし、よっしゃ、ギルドに行くか」
「お供します」
その決定には、様々な彼なりの思惑があった。
しかし、それが外からどう見えるか、それを失念していた。
『オラシオン教団』の女性陣からの強い感情のこもった視線が、ジャックとホリィへと注がれているのだった。