ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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チーム・アハト⑥

 レレ・C・ロスからの『お説教』からようやく解放されたジャックは、片付けに明け暮れる『ヴァレス』の面々の片づけを少し手伝ったあと、ホリィを伴って出立した。

 

「あらら~ん、あんさん見つけちゃったわあん」

 

 妙に悪寒のする声色に聞き覚えがあった。

 ジャックがふり返ってみると、違わずそこにはピーキィがいた。

 

 人目をひくアフロヘア、やや鋭角の男らしい顔立ち、そしてそれらを全て吹き飛ばすオネェ言葉。『ヴォイド』の幹部の一人である。

 

「オルトロスの旦那が呼んでるわよ~ん、探したんだからあ」

 

「あ~……、後でいい?」

 

「だめよ、あんさん。旦那が呼んでるんだからあん」

 

 口調も声色もなんら変化はないが、有無を言わせない圧があった。

 『ヴォイド』のメンバーの中では比較的温和な彼(彼女?)だが、そこは見誤らない。

 

「それにねえん、あんさんのためになる情報もあるってよ」

 

「はあ……わかったよ」

 

 こうした件で、オルトロスに無駄足を踏まされたことはなかった。

 決して尊敬や好意を寄せる相手ではないが、『信用』はできるのが『ヴォイド』の若頭なのだ。

 

 

 

 

 奈落獣を抜け、『ヴォイド』の事務所に通されたジャックたちは、呼び出された立場であるというのにしばし待たされた。

 

 

「神は全てに慈愛を授けてくださいます」

 

「んあ~? 肉をくれるのかあ?」

 

「うっす、悪の神様にしっかり毎日祈ってるっすよ」

 

「信仰を持つのは良い事です」

 

 ボディガード役のジョケルとアルマ相手に説法するホリィを横目に、ジャックはオルトロスから呼び出された理由と『情報』へと思いを馳せた。恐らくは―

 

 

「お待たせいたしました」

 

「やっほー」

 

 オルトロスと、ヴァージニアも一緒だった。気品と威厳にあふれたその姿は、物々しい義眼を除けば大物政治家か財界人にも見える。

 

「お呼び出てしながら申し訳ございませぬ」

 

「いいよ」

 

 正直、この『遅刻』が本物か、この場の主導権を握るための『手法』の一部かジャックには判別がつかない。ならば、下手に追求しないに限る。

 

「さて、ジャック様。ホリィ様の件で少々面倒なことになっておりますな」

 

「あら、私のお名前を御存じで?」

 

「よ~く知ってるよ、『鉄腕の聖女』さん」

 

 ジャックは苦虫を嚙み潰したようだった。やはり、今朝の襲撃の件だ。 

 

「お城の高貴な方々はもちろん、私どもも困惑しておりまして。ジャック様のお知り合いとは」

 

 老人は暗にこう言っている、『仕事を邪魔された』と。

 あの襲撃者たちは、『高貴な方』に依頼されて彼が手配した者たちであろう。

 

 つまり、『ヴォイドの法』によれば、ジャックは折角の『仕事』を邪魔したことになる。

 こと『ラジアータ』の裏社会では、表よりも裏の法が尊ばれるのだ。

 

「だって、放ってもおけないし……俺も殺そうとしたし」

 

「私どもこそ陳謝せねばなりません、『オラシオン教団』のお膝元で無法者を暴れさせ、ジャック様とご友人に襲い掛かるなどと……手抜かりでございます。ですがご安心を、以降、決してこのようなことはさせませぬ」

 

 オルトロスの言葉を額面通りに受け取ってはいけない。

 その裏には老獪で海千山千の裏社会の大物らしい『真意』が隠されている。

 かつてはそれに気づかず、『やけに丁寧なおっさん』程度にしか彼を理解していなかったジャックは、その頃が無性に懐かしくなった。

 

 

 

 

 

 

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