「あ、良かった」
チーム『ツヴァイド』の参謀役、ジェラルドからは拍子抜けする男と評される戦士に似合わぬ柔和な男だが、かなりの切れ者でもある。
「どしたの?」
「騎士団の方々が探してますよ、龍の出現です」
「―! 了解。姉ちゃん、ちょっと行ってくっから」
「あ―」
何を言おうととしたわけでもなかった、気を付けろ、等と今更忠告しても仕方がない。
ただ、やっぱり弟は心配だった。
「……しっかりするのよ」
「うっす」
いくらか精悍に見える弟へ姉はそう告げ、弟は頷きつつ部屋を出た。
「待てい! 我がスター隊もゆくぞ!」
「あ、スター様!」
「龍か……興味深い」
続いてスターたちも飛び出し、残されたゴードンはエアデールへ挨拶をし、もしもを考えて自宅に待機するように言い含めた。
『騎士団』の面々から情報を聞いたジャックは、驚き半分確信半分の心境であった。
風龍『セファイド』が出現したのは、『風虫の谷』。前回の戦争と同じ場所なのだ。
火龍『パーセク』の場合と同様……、が、それに加えて今回は見過ごせない事態が起こっていた。
「本当にジーニアスが?」
「はい、帰国前に最後の調査といって……そこへ龍が!」
ジーニアスが巻き込まれている。彼が調査に赴いたということは、何かしら重大な事象があるはずだった。
「護衛の騎士たちは壊滅状態だそうです。エルフたちも集まっていて、詳細な情報も掴めません」
本当なら、ジャックは十分に準備をしてから向かいたかった。
だが、ジーニアスが危機にあると聴いてはそうはいかない。彼には聞きたいことが山ほどある。
「大丈夫ですかスター様?」
「げほげほっ、ま、マーク・Ⅱよ、おんぶしてくれえ」
「軟弱すぎますよ」
問題はスター隊の面々もついて来ていることだが……。
『風虫の谷』の途上、『ヘレンシア砦』に差し掛かったところで、ジャックは思わぬ面々と出くわした。
「やあ、ジャック君」
「んだこらっ、遅えんだよ」
『ヴォイド』の面々が、砦に集まっていたのである。
オルトロスの姿はなかったが、イリスが指示役として構成員たちをあちこちに動かしていた。
正直予想していなかった。『テアトル』、もしくは負傷兵たちの治療役に『オラシオン』が招集されているものと踏んでいたが。
「いっとくけど、偶々さ」
ジャックの疑問を感じ取ったか、イリスが告げる。
「『仕事』で来てたときに、『龍』が出てね、とんど誤算だよ」
「っけ、騎士団の連中め、顎で使いやがって」
エリートや権力者を嫌うアルバが吐き捨てる。要はタイミングよく近くにいたため、協力を要請されたようだ。
「そっか……それで、どうなんだ『風龍』は?」
「正直わかりかねるわね、『風虫の谷』までずっと、エルフたちがゲリラ戦を仕掛けてきてて近づけない」
「おれえらでも無理だ、間抜けな騎士なんぞにわかるわけねえ」
「エルフか……」
砦は負傷した騎士たちで溢れている、治療に忙殺されて、攻勢どころか情報収集すら覚束ないだろう。レナードの姿もない。
本隊と各ギルドからの増援を待って、準備をしてから行動する。それが基本方針のはずだった。
しかし、ジャックにはそれを待ってられない理由がある。
「よっしゃ……いっちょ行くか!」
「やっぱり」
「っち、バカには勝てねえぜ」
ヴァージニアにアルバがダゴルを渡す、どうやらジャックがどうするかで賭けをしていたようだ。
「お待ちよ、行く気ならこの子を連れて行きな」
「よろしくね」
「あん?」
「頭からの言伝だよ、『龍殺し』の暁には『ヴォイド』の協力があったことをお忘れなく、ってさ」
相変わらず、あの老人の頭のキレは怖ろしい。だが、今はそれに甘えるとしよう。
「よっしゃ、頼んだぜ」
「任せて」
「あ、こらワガハイを無視するでない!」
「待って下さ~い」
「ふむ……」
「あいつらはいいんですかい?」
「あたしたちが命じられたのは、あの子への言伝だけだよ。さ、こっちはこっちの仕事をこなすよ」