「うわああああ~⁉」
ジーニアスが悲鳴をあげる。普段の傲慢で理知的な彼からは想像もつかない姿だ。
だが、この惨状では無理もなかった。目が慣れてきたジャックは、あちこちに散らばる騎士たちの亡骸を見た。恐らく、ジーニアス以外は全滅してしまったのだろう。
かくゆう彼自身も、風前の灯火だった。血まみれで、そばには円盤(ルーキッシュ)の残骸らしき破片が転がっている。はいずっているのは、立っている気力体力がないからだろう。
絶え間なく吹きすさぶ暴風は今にも彼を谷底へ放り投げてしまいそうで、生じたカマイタチが地面を抉る。
「ヴァージニア! あいつを拾ってくるから、ここから離れてくれ!」
「早くしてくれよ? 今すぐにでもおさらばしたいんだから」
ジャックは躊躇なくトーテムポールの風に乗って、ジーニアスの元へはせ参じた。
「しっかりしろ!」
「うう……」
ジャックに担ぎ上げられた時点で、限界を迎えたのかジーニアスは失神してしまった。暴れずにいてくれるのは嬉しいが、問題は『風龍』の方だ。
「―」
どうやら、素直に戻らせてはくれないらしい。明確にジャックを認識し、その前に立ちふさがった。
「悪い、ちょっと待っててくれよ……」
ジーニアスを置いて、ゆっくりと『ヴェルバーン』を構える。
黒い雲の巨躯は、相対しただけで失神してしまいそうな迫力があった。
対する『風龍』も、迂闊には動かない。目の前の青年が、侮れる相手ではないと見知っているようだ。
「あの黒い鎧のヤツなのか? お前も?」
返事はない。ジャックも、答えを期待していたわけではなかった。
撃破すれば、恐らくそれは判明する。『パーセク』と同じく、黒い鎧の男が変身した姿であるのだろうか?
両者の睨み合いは刹那、当人たちの間では永遠に続くかと思われる間のことだった。
「うおおっ」
「着地成功です」
「分析を開始します」
スター隊がトーテムポールの突風に乗ってやってきた時、近郊は崩れた。
「―」
『風龍』の元から、強烈なカマイタチが放たれた。
「しゃあ!」
迫りくるそれを、ジャックは『ヴェルバーン』の一薙ぎで霧散させる。
スターには無論不可能であるから、セバスチャンが前に立って盾となったが、頑丈無比の彼でもしっかりと傷跡が残るほど衝撃に襲われていた。
「標準……OK!」
最新型のマークⅡは、流石にその強烈な技を受けきっただけでなく、難なく反撃の体勢をとっていた。回転銃とミサイルポッドからの一斉掃射が、雲の巨人へ降り注ぐ。
「むっ……」
が、それが届くことはなかった。
暴風によって、マーク・Ⅱの攻撃は着弾前に飛散して次々に暴発、あるいは失速していったからだ。
「ならば……」
レーザー砲へと攻撃を切り替える。だが、こちらも暴風には揺るがず巨人の肉体へと直撃したものの、いささかの損害も与えたようには見えなかった。
「むおっ」
そればかりか、さらなる風撃によりマーク・Ⅱは吹き飛ばされてしまった。如何に頑強でも、風そのものを無効化はできない。
「らああ!」
ジャックは果敢に斬りかかっていったが、『ヴェルバーン』を振り上げた時点で殺気を感じ取り、慌てて鎧を発現させた。
「っ……」
頬に痛みが走り、血が流れる。間一髪、『風龍』の不可視のカマイタチから身を護ったのだ。少しでも鎧の発現が送れていれば、ジャックの細切れが出来ていただろう。
「‼」
すさまじい風圧が叩きつけられる、モルガンによって勝手につけられてしまった銀龍の鎧だが、皮肉にもそのおかげでまたも命を拾った。
どうにか態勢を立て直し、『ヴェルバーン』を担いで反撃を試みるジャックであったが、強烈な風圧とカマイタチの前に、接近すら許されなかった。
「くそっ……」
千日手の様相を見せ始めた戦闘に、ジャックは舌打ちした。
銀龍の鎧は、『デモンズメイル』のように刻一刻体力を奪っていく、長期戦は不利だ。
一人であれば、技を全て回避すればよいが、気絶したジーニアスにも注意し、時には盾にならねばならない。
「ぬおおお~まずいのである~!」
「は、離してください」
スターはすっかり怯えてマーク・Ⅱにすがりついていた。下手に動かれるよりは良かったが、戦力にはならない。