戦争の前、ジャックは妖精たちとも親交を深めていた。
ダークエルフ、ドワーフ、グリーンゴブリン。国交を絶っているライトエルフ、オーク、ブラックゴブリンらは別として、彼らとともに冒険に出、同じ時を過ごした。
だが、戦争は起こってしまった。個々人の間の感情を、戦争は容易く蹂躙してしまう。
『戦争』の名のもと、ジャックと彼らは引き離され、守護者たる『龍』を殺した彼は、妖精たちにとって許されざる者となった。
戦いに敗れた彼らは身を潜め、人の前に姿を現さなくなった。
ザイン、守護者の龍を喪い、ただおびえる日々を過ごしていた。
しかし、今また彼らは現れた。新たなる指導者、リドリーに似た少女に導かれて。
「ハイアン、ロマーリオ……」
『風虫の谷』、『セファイド』……否、黒い鎧の男を倒したジャックは、不意に現れたダークエルフたちの火球にさらされていた。
黒い雲はいつの間にか消え、陽光が白日のもとに彼らをさらけ出している。
「みんな……」
ジャックは、一瞬黒い鎧の男から注意をそらし、銀龍の鎧も解除してしまっていた。
「……」
「あっ!」
その一瞬は、逃走に十分すぎる時間だった。黒い鎧の男は転げて台地から落ち、奈落へ消えて行った。
自害した……とは到底思えなかった、間違いなくあの男は生きていて、近いうちにまたまみえることになると、ジャックは確信に近いものを抱いた。
「ジャック……」
ミカエルに呼びかけられ、ジャックは我に返った。
「ジャック……だよね?」
ダークエルフの酒造り職人、読書が好きで、ジーニアスとも親交があった少年だ。
「ミカエル……」
「ジーニアスは……大丈夫?」
「気絶してる」
「そっか……」
ミカエルは俯いた。『セファイド』に処置を任せた以上、ジーニアスが命を落とすだろうと覚悟していた。
彼が生きていたことに安堵する反面、自分にその資格があるのかとも逡巡しているのだった。
「ジャック! きみはどっちの味方なんだい⁉」
ロマーリオが、ずいと前に出て叫んだ。
正義の味方を自称する勝気な少女、だが、彼女が今掲げている正義は、かつての子供じみたものでなく悲壮さがあった。
「どっちなんだい⁉」
ジャックは答えられなかった。迷ったのではなく、質問の意図がわからなかったのだ。
『龍殺し』が、妖精たちの味方であるはずもない、現に自分はこうして戦っている。しかし、同様に疑念は他のダークエルフにも見えた。
「な―」
真意をたださんとしたジャックだったが、雷に打たれたように硬直してしまった。
ダークエルフたちの中に、淡く輝く少女の姿を見たからだ。
「リドリー……」
リドリー・ティンバーレイクがそこにいた。