ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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風龍セファイド⑤

 戦争の前、ジャックは妖精たちとも親交を深めていた。

 

 ダークエルフ、ドワーフ、グリーンゴブリン。国交を絶っているライトエルフ、オーク、ブラックゴブリンらは別として、彼らとともに冒険に出、同じ時を過ごした。

 

 だが、戦争は起こってしまった。個々人の間の感情を、戦争は容易く蹂躙してしまう。

 

 『戦争』の名のもと、ジャックと彼らは引き離され、守護者たる『龍』を殺した彼は、妖精たちにとって許されざる者となった。

 

 戦いに敗れた彼らは身を潜め、人の前に姿を現さなくなった。

ザイン、守護者の龍を喪い、ただおびえる日々を過ごしていた。

 

 しかし、今また彼らは現れた。新たなる指導者、リドリーに似た少女に導かれて。

 

「ハイアン、ロマーリオ……」

 

 『風虫の谷』、『セファイド』……否、黒い鎧の男を倒したジャックは、不意に現れたダークエルフたちの火球にさらされていた。

 

 黒い雲はいつの間にか消え、陽光が白日のもとに彼らをさらけ出している。

 

「みんな……」

 

 ジャックは、一瞬黒い鎧の男から注意をそらし、銀龍の鎧も解除してしまっていた。

 

「……」

 

「あっ!」

 

 その一瞬は、逃走に十分すぎる時間だった。黒い鎧の男は転げて台地から落ち、奈落へ消えて行った。

 

 自害した……とは到底思えなかった、間違いなくあの男は生きていて、近いうちにまたまみえることになると、ジャックは確信に近いものを抱いた。

 

「ジャック……」

 ミカエルに呼びかけられ、ジャックは我に返った。

 

「ジャック……だよね?」

 

 ダークエルフの酒造り職人、読書が好きで、ジーニアスとも親交があった少年だ。

 

「ミカエル……」

 

「ジーニアスは……大丈夫?」

 

「気絶してる」

 

「そっか……」

 

 ミカエルは俯いた。『セファイド』に処置を任せた以上、ジーニアスが命を落とすだろうと覚悟していた。

 

 彼が生きていたことに安堵する反面、自分にその資格があるのかとも逡巡しているのだった。

 

「ジャック! きみはどっちの味方なんだい⁉」

 

 ロマーリオが、ずいと前に出て叫んだ。

 

 正義の味方を自称する勝気な少女、だが、彼女が今掲げている正義は、かつての子供じみたものでなく悲壮さがあった。

 

「どっちなんだい⁉」

 

 ジャックは答えられなかった。迷ったのではなく、質問の意図がわからなかったのだ。

 

 『龍殺し』が、妖精たちの味方であるはずもない、現に自分はこうして戦っている。しかし、同様に疑念は他のダークエルフにも見えた。

 

「な―」

 

 真意をたださんとしたジャックだったが、雷に打たれたように硬直してしまった。

 

 ダークエルフたちの中に、淡く輝く少女の姿を見たからだ。

 

「リドリー……」

 

 リドリー・ティンバーレイクがそこにいた。

 

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