ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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風龍セファイド⑥

 誰であろうジャックが、見まごうはずがない。

 

 最高の鎧の一つである『ヴァリアントメイル』に身を包んだ、長い金髪を携えた少女。

 

かつて、その髪はツインテールにまとめられていた。

 

「リドリー‼」

 

 咽喉が枯れんばかりにジャックは叫んだ。

 

 『リドリー』はじっとジャックを見つめると、無言で周囲のダークエルフを手招きした。

 

「おい! リドリー! お前なんだろ⁉」

 

 『彼女』には、なんの表情も浮かんでいなかった。出会ったばかりの頃の、背伸びした険しいそれも、『霊継ぎ』の後の、憂いを含んだ顔も。

 

 全くの無だ。

 

「リドリー‼」

 

 ジャックは今にも飛び掛からんばかりだった。トーテムポールを使わず、台地へ飛び移ろうとしさせした。

 

「リドー」

 

 そんな『彼女』のそばに、黒い鎧の男がふわりと降り立った。奈落の底から飛び上ったのか、ともかく、消えたはずのそれは『リドリー』の傍に佇んだ。

 

「……」

 

 そして、兜に手をかけ―

 

「⁉」

 

 素顔を露にした。

 

「⁉ ……⁉⁉」

 

 ジャックを更なる混乱が襲った。

 

 兜の下にあったのは、龍でも妖精でもない。

 

 ジャックとうり二つの顔だった。

 

「……」

 

 『リドリー』が手をかざすと、彼女と周囲が光りに包まれ、程なく消え去った。魔法による瞬間移動だろうか?

 

 ジャックはと言えば、混乱の極致にあって動けずにいた。『リドリー』らを追うでもなく、ジーニアスたちを助けるでもなく、ただ立ち尽くしていた。

 

 『リドリー』、そして自身とうり二つの存在、ダークエルフたちの問いかけ、ほとんど彼はパンク寸前だった。

 

「……」

 

 ジャックがようやく動いたのは、結局『リドリー』を追おうと決めたからだった。ダークエルフと共にいたなら、『緑森京』に行けば何かわかるかもしれない。

 

 無論、敵である自分がいけば拒絶させるだろうが、押し通ってでも『彼女』について聞き出す。

 

 ほとんど無意識に、ジャックは『風虫の谷』の入り口まで戻ってきた。

 

 その前に、ヴァージニアが立ちはだかる。

 

「ジャック君?」

 

「ああ、うん、『風龍』は倒したから……」

 

 上の空で答えて行こうとしたジャックを、ヴァージニアが引止める。

 

「待って」

 

「お前のおかげでここまで来れたよ、ラークスさんにも伝えるからさ。……じゃ」

 

「待ってって」

 

「なんだよ⁉」

 

 悲鳴に似た叫びをジャックは上げていた。今は一秒でも早く、『リドリー』について知らねばならないのだ。

 

「あの眼鏡の学者さん……それから、『テアトル』のお仲間は?」

 

「ああ、お前から騎士団に助―って!」

 

 脛を蹴られてジャックは呻いた。

 

 ヴァージニアが、見たこともないほど冷徹な視線で見据えて来る。

 

「放っておくのかい? 一緒に戦ってくれた仲間を」

 

 ようやく、ジャックは我に返った。ジーニアスは勿論、スターたちも満身創痍のはずだった。

 

「僕は別にそれでもいいけどさ」

 

「……悪かった、サンキュ」

 

 ジャックは深呼吸をひとつ、彼らの元へ舞い戻った。ジーニアスを抱きかかえ、マーク・Ⅱにスターとセバスチャンを背負わせて、改めて入口へと立つ。

 

「砦に戻ろう、案内頼む」

 

「そこまでが仕事だからね」

 

 ヴァージニアはいつもの調子に戻っていた。

 

 もし、彼女を知る者がいたら、この光景を夢か幻かと疑うだろう。

 

 仲間を置き去りにすることを咎める。それを、『白狼』が『本心』から行っているのだ。

 

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