ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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幽霊の勘?

 そのまま、一行は城へと運ばれ歓待を受けた。ジオラス王との謁見、祝賀パーティ、スターは有頂天で、散々はしゃいだあげくに酔いつぶれてそのまま眠ってしまい、充電と修復を終えたセバスチャンとマーク・Ⅱに実家へ運ばれていった。

 

 ジーニアスは病室に運ばれ、モーフの治療を受けた。曰く、命に別状はないが数日は安静にしておかねばならない。他の騎士たちも同様に、ベッドに寝かしつけられていた。

 

 ジャックは、『龍殺し』と友誼を結ばんとする貴族や有力者らとの顔合わせに忙殺された。

 

「ムホホホー! アータシの家来よー!」

 

「家来じゃねえって!」

 

「アナスタシア様は、あの『龍殺し』を従えているのです!」

 

「顔見知りってことなのね」

 

 当然、アナスタシアたちもいる。『東方山猫家』の威光を高めんがため、ジャックを連れまわす。

 

ようやく解放された頃にはパーティも終わっていた。結局、戻ってから食わずじまいだ。

 

「あ~……」

 

「お疲れ様です、ジャックさん」

 

 一人寂しく暗くなった会場で脱力していたジャックは、すっくと背筋を伸ばして立ち上がる。

 

 彼が姿勢を正す数少ない相手、ラークスがやってきたのだ。

 

「うっす」

 

「お疲れのところすいませんでした」

 

 ラークスとしては、『風龍』討伐の祝賀をここまで派手にするつもりはなかった。

 

 国民たちを高揚させ、安心させるために祝賀をしないわけにはいかないが、『火龍』に続いて騎士団に多大な被害が出ている。

決して手放しで喜べる勝利ではなかった。

 

 だが、『東方山猫家』、というよりもアナスタシアを御し得ず、押し切られる形で、盛大な出迎えとパーティが開催されてしまった。

 

 自他ともに認めるラジアータのNO2、軍権と政治を担い、ジオラス王が『象徴』であることを鑑みれば、実質的なラジアータの最高権力者がラークスである。

 

 彼をして、貴族社会の一強状態であるアナスタシアを無下には出来ないのだ。

 

「『風龍』の討伐、お見事でした」

 

「皆に助けてもらったっすから……」

 

「エアデールさんも、さぞお喜びでしょう」

 

「あ、そうだ姉ちゃん……こっちに来てるんすか?」

 

「いえ、お呼びしたのですが、自分はなんら称えられるようなことはしていないと。慎み深い方です、せめてもと、王からの恩賞を届けておきました」

 

「ありがとうございます」

 

「ジャックさん……やはり、残る『地龍』、『水龍』、さらには『金龍』と『銀龍』も復活すると思いますか?」

 

 ジャックは答えられなかった。『龍』は黒い鎧の男、自身と酷似した者が変身した姿である。果たして今後も立ち塞がるのだろうか? そもそもその正体は?

 

「恐らくは……現れるでしょうね。貴方には、また重責を負わせてしまうことになる」

 

「そんなヤワじゃないっすよ、ラークスさん。残りもちょちょいと、任せてください」

 

「……頼もしい限りですね」

 

 空元気とわかっても、この少年の陽性は周囲を活性化させる。

ケアンやガウェインらとはまた違った才能だとラークスは思った。

 

「そうだ、それに関してなんすけど。ジーニアスが元気になったら、教えてくれませんか? 色々聞きたいことがあって」

 

「もちろんです、すぐに知らせを遣りましょう」

 

「どもっす……それじゃ、俺もそろそろこの辺で」

 

「はい、お疲れ様でした。ゆっくりと休んでください」

 

 

 すっかり暗くなった城の中を進む途中、ジャックはふと懐に手を伸ばした。

 

「あ、そうだ……」

 

 今更ながら『オーブ』を取り出した。かつて風龍を封じたそれは、やはり淡い緑色に光りを放っていた。

 

 龍は、ここに封印されている。

 

 黒い鎧の男……もう一人のジャックは、4龍のいずれでもない。

ジーニアスであれば、その正体がわかるだろうか?

 

「きれいだね」

 

「ん? ああ、まあ宝石じゃな……っ!」

 

 ジャックはもう少しで悲鳴をあげるところだった。

 

 いつのまにか、トレニアがそばに立っていたのだ。

 

 見かけはあどけない少女。その実態は、城に住まう幽霊である。

 

「お、おまっ……心臓に悪いよ」

 

「ごめんね」

 

 子供たちと、ジャックを始めとした少数の大人たちにしかその姿は見えない。城が建て始められた頃から、ここにいるらしい。

 

「久しぶりだねお兄ちゃん」

 

「ああ、元気そう……って言っていいかわかんないけど、お前もな」

 

「近頃はトーマちゃんも忙しそうで、あんまり会えないの。お兄ちゃんも、お城に来たら遊んでね」

 

「わかったよ……じゃな」

 

 トレニアと別れ、ジャックは再び歩きだした。

 

 トレニアも夜の散歩に戻ろうとしたが、ジャックが気になってその背が見えなくなるまで見送ることにした。

 

 何か、他の人たちと違う妙な感じがした。どうとは言えないが、昔々に永い眠りから目覚めた時のような……。

 

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