ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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チーム・ヘクトン①

「隊長~、しっかりしてください」

 

「依頼を捜しにいこうよ」

 

「うるへ~、タナトスの野郎~」

 

 

 『ヘクトン』の部隊室へ入ったジャックの視界に、ふて寝するジャーバスと、それを介抱しているダニエル、そしてナルシェの姿が飛び込んできた。

 

「ま~た吞んでんのかよ隊長?」

 

「え? ! じゃ、ジャック⁉」

 

「お兄ちゃん⁉」

 

 ダニエルとナルシェがジャックに駆け寄ってくる。方やぽっちゃり体形に気の抜けた顔、方やひょろりとした幼さの残る少年と、にわかには戦士と信じられない二人であった。

 

「ジャック、戻って来たんだね!」

 

「お兄ちゃん! ぼく、病気を治して戦士ギルドに入ったんだよ!」

 

「久しぶり、ダニエル、ナルシェ。ナルシェのことはアディーナに聞いたよ。

がんばったんだな」

 

「へへっ」

 

「あん? ジャック?」

 

 のそりと、ジャーバスが立ち上がった。

 

「どもっす、隊長」

 

「おい、大隊長に挨拶はしてきたんだろうな? 全く勝手に消えやがって」

 

 憎まれ口もジャックには懐かしく思えた。かつて騎士を目指していたこの戦士は、挫折の経験からかジャックにはややあたりが厳しかった。

 

「うん、それで、しばらくは依頼をこなせってさ」

 

「そうか、大隊長の決定ならなにも言うまい」

 

 と、言い残してまたもふて寝しようとするジャーバスを、ダニエルとナルシェは慌てて起こした。

 

「だーっ、なんだ!」

 

「なんだじゃないですよ隊長、今日こそは依頼を受けないと」

 

「ぼく、ヘクトンに入ってまだ4回しか依頼をこなしてないよ」

 

「うるへー、タナトスのやつが仕事を回さねえんだ」

 

「イザベラにご飯を買ってあげられないよ」

 

「お部屋にいるのは飽きたよ~」

 

「あ~、じゃあ……みんなでいくか?」

 

 

 

 ジャック、ジャーバス、ダニエル、ナルシェの4人は、エキドナ門へ向かって水と英知の青街を歩いていた。

 

「ジャックのお陰でイザベラがお腹いっぱい食べられるよ」

 

「ぼく、ダニエルさんに斧を教えてもらってるんだよ」

 

「はは、ダニエルも一丁前だな」

 

「むっ、今のぼくはヘクトンの副隊長なんだぞ」

 

「ん? ってことは……ナルシェ、負けちゃったのか?」

 

「うん、ダニエルさんは強いよ」

 

「お、おい、もうちょっとスペースを落としてくれえ」

 

 受付に向かったジャックにタナトスが紹介したのは、エキドナ門付近に最近異常発生したスカルヘッドの駆除任務であった。

 

「肩慣らしにはちょうどいいだろ」

 

 とのことで、難しいことは何もなく、ただ趣き目につくスカルヘッドを狩る。だけのシンプルな任務であった。

 『アハト』の隊長であるジャックには、隊の編成権がある。今回はジャーバスたちヘクトンをそのまま組み込んだ形となった。

 

「隊長、酒控えなって」

 

「うるへー、飲まずにやってられるか……ぜえぜえ」

 

 久しぶりの任務とジャックとの再会で意気揚々としている二人と比べると、ジャーバスはいかにも頼りなかった。

 とうとう、ヴァレスの前で息切れして座り込んでしまう始末だ。

 

「しょーがないなあ、休憩すっか」

 

 といっても、ジャックたちはジャーバスの息が整うまで手持無沙汰でいるしかない。自然と、世間話に花が咲くのだった。

 

「じゃあ、エキドナ門の近くにも街ができるんだ?」

 

「うん、その工事を今してるんだけど、モンスターがいて中々進まないんだ。それで、こういう任務が結構来るんだよ」

 

「どうしてタナトスは隊長には紹介しないんだ?」

 

「前に一回受けたんだけどね、隊長ったら二日酔いですっぽかしちゃったんだよ。それで、タナトスさんが怒っちゃったんだ」

 

「あらら……」

 

「こら……ナルシェ! あれは……急病って……言ってるだろ!」

 

ジャックは青い顔で抗議するジャーバスを呆れ半分で見た、それなりに腕もあり、人格的にも劣悪ではないが、酒での失敗はこの男の半ばお家芸なのだった。

 

「あれっ? あなた……」

 

ヴァレスから出てきた生徒が、ジャックらに声をかけてきた。

赤髪の団子頭に眼鏡をかけた、そばかすが目立つ少女、マリエッタである。

 

「よ、久しぶり」

 

「やっぱり! あなたね! どこに行ってたの、心配したんだから」

 

「悪い悪い」

 

 元気にまくしたてる少女とそれをいなすジャックから、ダニエルらは外に置かれていた。

 ラジアータに住み、ヴァレスからの依頼を受けることもあった彼らは、当然マリエッタがヴァレスの生徒であるとは理解しつつも、面識がほとんどないためどうしたらいいかわからなかった。

 

 彼らが、特別交友関係が狭いという訳ではない。各ギルドの長や上級幹部を別にすれば、名前と顔が一致する程度にしか相手のことを知らないのはごくごく普通のことだった。

 故に、ジャックの顔の広さは異常なほどであった。どこへでも遠慮することなく顔を出し、4大ギルドの上から下までほぼ顔見知りで、何かあれば力を借りるし貸すこともする。

 「龍殺し」の称号を得る前から、ジャックは良くも悪くも有名人であった。

 

「あら?」

 

「どした?」

 

「あれ? また私眼鏡忘れちゃったかしら? あそこにモンスターが……」

 

 マリエッタが指さしたエキドナ門には、確かにモンスターがいた。

 それも、大工のエレフらを追い立てながら、今しも街中へ突入しようとしているところであった。

 

 

 

 

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