パジャマのまま、ユーリに強引に連れ出されたジャックは、『ビギン食堂』の惨状を見てようやく眼を覚ました。
「ネーチャンメシマダー?」
「ジュースクレー」
「あ、あのね、私はアクセサリー屋さんなのよ?」
『ジャック』たちが、好き勝手に振る舞っているのだ。
「ね?」
「いや、ねって言われても……」
「だって、ジャックさんでしょ?」
「自分で言ってておかしいと思わない?」
確かに、『ジャック』ではあるが……。いや、そもそも自分はここにこうしているわけで……。
「なんとかして」
この『ジャック』たちは一体? まさかあの黒い鎧の男……、違う、何かが違う。
「ロボスーツ?」
ジャックが持つ鎧の一つに、ロボスーツというものがある。
以前、スターが実家の鎧を持ち出して騒動になった際、礼にと渡されたものだ。
防御は並みだが、あらゆる状態異常を防ぐという特筆すべき性能がある。さらに、着込むと見た目がゴーレムよろしく機械仕掛けになるのだ。
『ジャック』たちは、丁度その時の姿だった。
「っていうか、俺じゃねえだろ!」
「ジャックさんじゃないどう見ても!」
「どこがだよ! 眼が光ってるしネジがついてるだろ!」
当人にとっては真剣な問題について議論する間に、運悪く『テアトル』の面々が昼食をとりに来店してしまった。
「む……」
「分身? 影武者か?」
「にぎやかですねえ」
「うわー狭くなっちゃうよ~」
「おい、どうなってんだこりゃ!」
「俺が聞きたいくらいっすよ!」
しばらく押し問答を繰り返していると、今度は『オラシオン』のエドガーが飛び込んできた。
「あ、いた。ちょっと君、君をどうにかしてくれよ」
「は……待て、他にもいるのか⁉」
ジャックはエドガーに連れられ、何故か『ジャック』たちも伴って、『オラシオン』礼拝堂に駆けつけた。
「静かにせんか!」
「ヤダヨーヘッヘヘー」
「タノシイゼー」
『ジャック』たちがあちこち駆け回り、モンクたちが捕まえようと躍起になっているのだ。
「ジャック様、静粛にしなければならない場所では、きちんと振る舞いを正されるのが神の―」
「おれはここにいるだろ!」
ジャックは頭を抱えた。一体何が起こっている?
「アニキー!」
アルマとジョケルが飛び込んできた時、ジャックは次の言葉を聞くまでもなく理解した。
「レッツソウルマッスル、ハイハイハイ」
「ヒュ~イカスゼー」
「モットヤッテクレー」
「んふふ、あんさんたちの応援を受けちゃ、頑張っちゃうわあ」
『紅蓮京』で、ピーキィのパヤパヤダンスに興じる『ジャック』たちであった。
これは害が少ない……と思うのは、他で毒された結果だろうか。唖然としながらジャックは呟いた。
「カッコイイゼ」
「オレタチモヤロウ」
何故かついてきた『ジャック』たちもダンスに興じ始めた。
どうしたものかと思案するジャックの前に―
「ふう、まったく手間がかかるわ」
次なる来訪者は、アーシェラだった。