「これで全員かしら?」
「セメエヨー」
「クワガター」
「アイスクレー」
「はいはい」
「ちょっと待ってねー」
今、『ジャック』たちは礼拝堂に集められていた。アーシェラがアイスをあげるからと言うと、ぶつくさ文句をいいつつそれに従ったのだった。
同様の手法で『ジャック』たちは集められ、アーシェラを前に大人しくしていた。
「ニコクレー」
「だめですよ、お腹を壊します」
「トイレイキタイ」
「もうちょっと我慢してね」
他にも、今回の件で被害を受けた面々が集められ、アイスの配布に駆り出されていた。
「で、こいつら何なんだ? ゴーレム?」
憮然としながらジャックが問う。
「ご明察の通りよ、彼らは新世代ゴーレム『JACK』シリーズなんです。私の持てる技術の全てを注ぎ込んだの」
「はあ」
「思えば自信作のゴーレムをジャックさんに一蹴されて、私は絶望の底に沈んだわ……。けれど、泥をすすって再起し、借金を重ねついに、『JACK』シリーズを生み出したの」
「また借金したのかよ……」
「あの『龍殺し』の6割もの力をもつゴーレム、それをこんなにも大量に。ようやく私の努力が実を結んだわ」
「6割……それはいいんだけど、俺そっくりなのは?」
「『龍殺し』というネームバリューは大きいんです。今や、エルウェンさんよりも受けがいい」
「マジ? そっか俺はとうとう大隊長を……いやいや、待った、俺そんなの聞いてないぞ! 勝手にやるなよ!」
「ですけれど、一つ問題があります」
「一つじゃきかないだろ!」
「ジャックさんをモデルにしたせいで、デザインの他、知能に難があるんです」
「それは納得ね」
ジャスミンが答えた。
「がさつ、バカ、能天気、見栄っ張り、調子に乗りやすい、ジャックさんの悪いところを全て備えてしまっています」
「喧嘩売ってんのか!」
「そのせいで制御がままならず、こうして脱走騒ぎを起こしてしまったんです」
納得の声があちこちから聞こえて、ジャックはますます腹が立ってきた。
「アイスモットクレー」
「カエリタイー」
「ああ、モデルに致命的な知能面の欠陥がなければ、完璧だったのに」
「それじゃ困りますよ」
「そうです、ジャックさんがこんなにいたら大迷惑です」
「せめて制御はなされたほうが良いかと」
「ふざけんな!」
ジャックの憤慨が空しく響いた。
「それで、どうするんですか?」
「そこなのよ、制御ができなければどれだけ強くても無意味なんです。どうにか制御が―」
「ジャック!」
「げげっ! 姉ちゃん⁉」
何度目かの、そして一連の騒動への最後の乱入者はエアデール・ラッセルだった。
「あなた、あちこちでいたずらして回ったらしいわね?」
「「ヒーッ、ユ、ユルシテクレネエチャン」」
「しかもこんなに増えて……一体何をしてるの?」
「「コ、コレニハワケガアルンダヨ」」
「まあ、ジャック様たちが無垢な羊のようです」
「あの人誰ですか?」
「ジャックさんのお姉さんですよ」
「ち、違うんだよ姉ちゃん、アーシェラが勝手に……」
「朝帰りはする、女の子にちょっかいを出す、迷惑をかける、増える、いい加減になさい!」
「だから、俺のせいじゃない! ってか、増えてる時点でおかしいだろ!」
「いいから坐りなさい! 大体あなたは……」
「「ゴ、ゴメンナサーイ」」
大勢のジャック『たち』がエアデールに平伏している異様な光景に、カインの説法を聞きにやって来た信徒たち、そしてカイン本人すら慄いて、礼拝堂に入ることができなかった。
そして、それが済んでから勝手に礼拝堂を占拠したとして、アーシェラと『ジャック』たち、それから何故かジャックもお叱りを受けたのだった。
この時、アーシェラの顔に不敵な笑みが浮かんでいるのを、誰も知らなかった。