その知能故に、制御が利かないという重大な欠陥を持っていた、アーシェラ作の新世代ゴーレム『JACK』シリーズ(モデルには無許可で製造)。
暗雲に乗りかけた彼女の計画と借金返済だが、思わぬところから解決策は現れた。
「ジャック! しっかりしなさい!」
「ヒエー」
「ワカッタヨネエチャン」
「オッカネエー」
姉には逆らえない。
アーシェラは早速エアデールに言葉巧みに接近して、声のパターンを録音して、『JACK』シリーズへいつでも命令できる音声装置を発明した。
効果はてきめん、『JACK』たちは姉の声が聞こえるや、出来る限りその命令に従おうとするのだった。
この時点で、アーシェラは当初の予定通りにラークスへと売り込みをかけた。国がスポンサーとなれば、借金問題は解決しより強力なゴーレムを作製できる。
強かなラークスは、彼女の技術を認めつつ、最終的な判断を行うための条件を出した。
実地試験である。
エキドナ門の新開発区の護衛を、『JACK』シリーズへ当たらせた。今も尚モンスターたちの襲撃で被害が出ており、騎士団と『テアトル』だけでは手が足りていなかったからだ。
結果は申し分なかった。毎日大工たちを悩ませていたモンスターたちは、その姿をすっかり消してしまった。
スカルヘッド、スミロドン、ツインホーン、騎士や『テアトル』の戦士たちでも手こずる相手を、『JACK』シリーズはこともなげに殲滅した。
片手剣、両手剣、斧、槍、『モデル』と同じくどんな武器も使いこなし、4人1隊体制で、無慈悲なほどの戦闘力を振るった。
それは一方的な虐殺と言っていい。ゴーレム故に疲労もなく、完ぺきなコンビネーションで表情を変えずにモンスターたちを屠る『JACK』シリーズは、見る者に恐怖を植え付けた。
アーシェラが、ジャックの6割といった実力は誇張ではない。腕試しに勝負を挑んだアルバやデイヴィッド、騎士たちはことごとく一蹴されてしまった。
恐らく、ジェラルドやシーザークラスの実力で、ようやく拮抗できるだろう。さらに、充電によって半永久的に稼働する彼らは敵対者にとっての悪夢、無限に復活する兵士に他ならない。
セバスチャン、メリッサ、マーク・Ⅱ、改良を重ねたゴーレムたちの一つの到達点であった。
ラークスは『JACK』シリーズの採用を決定し、アーシェラを、新設した王国直属のゴーレム部隊総責任者に任命した。
かくして、債権者は救われ、ラジアータに強力な戦力が加わった。その意味する本当のところを、まだ誰も知りえない。