龍の鎧が宙へ飛び、槍を構えて台地へ突き刺した。
「百渦嶺嵐!」
大地から、武器が芽吹く。槍のボルティブレイクだ。一気に多数の敵を倒したい時、ジャックはこの技を好んで使う。
「ぐあああ!」
「ギャー」
矛先に、妖精たちの亡骸が飾られる。覚悟しているとはいえ、ジャックはその光景に苦いものを抑えられなかった。
が、この一撃でゴーレム、そして妖精たちは多大な被害を受け、それまでの攻勢が一時途絶えた。
この隙を逃さない手はなかった。『ヴァレス』は魔砲による攻撃を妖精たちに集中させ、一挙に戦局を変えんとした。
「ぬおっ!」
「はああ!」
カーティスの『エクスプローション』、セシルの『アースクエイク』はその中でも抜きんでた威力だった。爆炎と地震により、妖精たちは秩序を失いつつあった。
「下がるんじゃねえ」
「アチー」
「ヒョエー」
ゴブリンの『ゴブリンビーム』も、3匹が連携せねば使えないという弱点をさらけ出していた。威力は脅威だが、使わせなければ無害である。
ただでさえ、団体行動に難のあるグリーンゴブリンたちは、統制を失って逃げ惑い、個々に討ち取られていった。
ゴブリンたちを抑えることで、ドワーフたちへ対応する余力が出て来た。
「ヨッシャ」
「マダマダオレノテキジャナイネ」
『JACK』シリーズは流石の働きで、このままいけば彼らだけで決着も付けられると思われた。
がー
「―‼」
「ウワアアアアア」
優勢だったのは一瞬、ドワーフを護らんとした『地龍』の尾の一撃で、新世代ゴーレムは哀れ残骸と化してしまったのだった。
「いやあああああああ!」
戦場にアーシェラの悲痛な叫びが木霊した。後方で魔砲による援護に回っていた彼女だが、その光景は身を裂かれるよりも激しい痛みを与えていた。
「そんな……私のゴーレムが……」
「先生、しっかりしてよ」
「戦争中だゼ!」
生徒のコーネリア、アーネストの励ましも耳に入らず、アーシェラはうなだれて天を仰いだ。
今回、改良を施した『JACK』シリーズが活躍することで、さらなる予算獲得が見込める筈だったが……。
「王国からの先行投資に、闇金のお金までつぎ込んだのに……」
「ちゃーんと返さないとだめだよ~」
ひょっこりとヘルツが顔を出して、手をひらひらさせながら戻っていった。仲介役は彼女のようだ。
アーシェラの借金完済は、どうやらまだまだ先になりそうだった。
「『地龍』が壁になって、妖精たちに攻撃が届きません!」
「だったら先に『地龍』をやるぞ! 龍さえ倒せばなんとかなる!」
戦況は刻一刻変化している。劣勢となった妖精たちを護るように、『地龍』が前に出て来ていた。