「回復してくれ!」
『オラシオン教団』信徒、ルルが祈りに合わせた手は震えていた。恐怖によってではない、目の前で戦う少年の姿に平静ではいられなかったのである。
『龍』を思わせるその鎧に身を包んだ姿からは、慣れ親しんだお調子者でちょっと間の抜けた彼の姿はうかがえない。
だが、その戦いぶりと、時折聞こえる悲鳴にも似た叫びが否が応でもジャックとその鎧を重ねるのだった。
「か、回復……回復!」
『地龍』の土砂の混じったブレスの直撃を受け、ジャックは『エンシェントエイジ』を地面に突き刺し、それに捕まってどうにか下がらずにいた。
並の戦士であれば、土砂崩れにあったかのようにずたずたに四散していただろう。改めて、鎧と彼自身の強さが証明されていた。
だが、無傷ではいかない。先刻から彼の発するのは、回復の要求に終始していた。
「らあああああ!」
幾度目かの『ギガントアクセル』。余波が、信徒たちにまで届いてきた。
「大隊長! 俺たちも行きましょう!」
「少しでも助力にはなります!」
「却下します」
グレゴリー、デイビッドらの要請をエルウェンは容れなかった。冷酷に見殺したのではない、近づくことが出来ないのだ。
『地龍』を奈落へ落とす作戦の欠点、それは、そのための要因がジャックのみに限定されることにある。龍へ打撃を与えうるが、彼しかいないのだ。
エルウェン、カイン、カーティス、そしてこの場にいないニュクスでも、『地龍』を傷つけることはかなわない。衝撃を以てその巨体を動かすこともまた、同様であった。
あるいは、人海戦術で子供の遊びよろしく『地龍』を押せば可能かもしれない。ただし、それは『地龍』も、妖精たちもその間一切の抵抗をしないという夢のような条件があればだ。
それらを瞬時に思案し、ジャックは一人で攻めることを決めたのだ。
「おりゃあああああ!」
また、『ギガントアクセル』の連発は周囲への被害も甚大であり、仲間との連携に差し支える。協力を求めたくとも、出来ないのだった。
せめてもは、遠方から攻撃できる『ヴァレス』の面々や飛び道具持ちが援護を続けていることだ。『地龍』へ損害を与えられずとも、妖精たちの攻勢を弱めることはできる。今現在、ジャックはそちらからの攻撃にも晒されているからだ。
「―‼」
「はああ!」
『地龍』の巨体は、確実に奈落へ向かっていきつつあった。ジャックも、『奇跡』のおかげでまだ動ける。
ジーニアスは、このままいけば作戦は成功するだろうと予測した。まだまだ味方には余力がある。
しかし、それとは別の問題もあった。
「……‼」
飛び出さんとしたミランダを、アキレスが抱きとめる。
「待つんだミランダ!」
「で、でも、ジャックさんが!」
作戦のかなめ、『奇跡』でジャックの治癒を援護する『オラシオン』の面々である。