彼らのほとんどは、ジャックと面識があった。仲間としてともに冒険に出たこともある、程度は存在するが、彼に好意らしきものを抱いてもいた。
その彼が、目をそむけたくなるような苦難に、自らを置いているのだ。比較的平静でいられるのは、カインらのように強固な精神を有しているか、アナスタシアのように自己中心的な思考を有しているかだろう。
「は……!」
『ギガントアクセル』の反動で着地したジャックは、態勢を崩した。すでに、体力気力が限界にあるのだ。無理もない、すでに10数回もボルティブレイクを放っている。
その間に受けた大小さまざまな攻撃により、鎧の隙間からは鮮血があふれ出ている。激しい動きに呼応してそれは吹き出し、大地に赤黒い模様を描いては、戦闘の余波によって書き消えていった。
「か、回復してくれ!」
ミランダらの感じる疲労は、『奇跡』の連発に限らない。ジャックの苦境を、自らも味わっているためだった。
「待て!」
「離せよ! ちょっくら『龍』の鼻面殴ってやるからよ!」
アキレスは、ミランダに続いてビシャスも制止せねばならなかった。回復術を持たない彼女の焦れは、他の信徒よりも強いものだった。
「ジャックは後方に下がっていろといった、困らせたいのか?」
本心では、アキレスもビシャスに先んじて戦線に参加したかった。だが、ジャックの意図、そしてカインですら歯の絶たない『地龍』を前に、己が拳の脆弱さを呪わずにはいられなかった。
「かいふ―」
『地龍』の尾による一撃が、ジャックを吹き飛ばした。奈落にかかる橋の縁に激突した彼は、どうにか立ち上がると、斧を構えて前進する。
「回復……回復して!」
一番近くにいたエドガーが、震えながらそれに応じた。フェルナンド教絶対信者の彼だが、流石に顔見知りの惨状には思う所あるらしい。
「ね、ねえ君、少し休んだ方がいいんじゃないか? フェルナンド様に任せて……」
「サンキュ!」
ジャック、龍の鎧をまとった戦士は、再び『地龍』へと向かって行った。
この戦いは最早、ジャックに任せるしかなかった。
「『ギガントアクセル』!」
一撃。ついに、ついに『地龍』の巨体が大きく揺らめき、奈落のすぐそばまで追いやられた。
「うおおおおおおお!」
ジャックは次なる一撃を待たなかった。そのまま突進すると、あらん限りの力で『地龍』を押した。
「みんな! 手伝ってくれ!」
文字通り血を吐く叫びに最初に反応したのは、ガンツだった。
決して早いと言えない足運びながらジャックの隣りに位置し、『地龍』を渾身の力で押し付ける。
「ぬおおおおお!」
続いてクライヴが隣りと立った。
「だべええええ!」
「行きますよ!」
「今がその時です!」
「ふむ、助力しましょうか」
せきを切ったように、各ギルドの長がそれに連なり、構成員らも後に続いた。