ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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地龍ボイド⑦

 ドワーフたちにとっては、またとない好機だった。『地龍』を押すことに専念している人間たちは無防備、ここで攻撃を集中できれば形勢は逆転する。

 

 だが、好機は彼らの手をすり抜けていった。

 

「妖精たちに攻撃の隙を与えるな!」

 

 カーティスの檄で、『ヴァレス』の面々は最後の力を注ぎ込んだ。フェリックスの『コールドアロー』が、ジルの『アースブレイク』が、ディミトリの『ダークメテオ』が、これが仕舞とばかりに妖精たちへ襲い掛かった。

 

 ドワーフたちは身を守るのに精いっぱい、ゴブリンは統率を失い右往左往。その短い間、ジャックたちは『押す』ことに全力を注ぎ込めた。

 

「―‼」

 

 巨山が揺らいだ。

 

『地龍』は踏みとどまろうと努力したが、奈落の『へり』が体重を支え切れず砕けると、その巨体は大きく傾き、ついには暗黒の底へと落下していった。

 

たっぷり、5呼吸を置いて、大地を揺れが襲った。その場に立ち続けるのも困難なほどのそれは、やがて収まり後に静寂が残った。

 

「地の底に、『地龍』が落下したようだ」

 

 ジーニアスが呟く。大多数は興奮による思考の麻痺で、少数の者は『地龍』が這いあがって来るのを警戒して、呼吸も忘れていた。

 

 妖精たちも同様だった。

 

 やがて、立ち上がったジャックは、鎧を解いて、『魔剣グラム』と『アービトレイター』へと武器を構え直すと、凍り付いていたドワーフらへ向かった。

 

 全身血まみれ、あざだらけの姿は、さながら戦鬼であった。

 

「『地龍』は倒したぞ」

 

 ややあって、ゴンドノビッチが呆けたように口を開いた。

 

「ボイド様……」

 

「違うよ……龍じゃない……何かだ」

 

「……ジャック、ジャックよ、お前さんらはなんなんじゃ? 娘っ子……リドリーと一緒にお前さんが来て……ボイド様に変わって……」

 

「俺もわかんねえ、でも……俺は俺だ。……また、ドワーフたちと仲良くできるなら……それでいい」

 

「ゴンドノビッチ殿、『地龍』は斃れました、どうかお引きください。そして後日、改めて外交を開こうじゃないですか」

 

「私からも、改めてお願いいたします」

 

 ジャックか、ジーニアスか、ガンツか、いずれかの言葉か、あるいは『地龍』の打倒がきっかけとなってか、ゴンドノビッチは残ったドワーフ、ゴブリンらとともに、退却を始めた。

 

「レナード団長! 今こそ追撃の時です!」

 

「こちらには騎士や戦士ギルドの面々が無傷で残っています! 殲滅の―」

 

「ふざけんじゃねえ‼」

 

 ジャックのすさまじい怒声は、王国全土へ響き渡るようだった。

追撃を具申した騎士たちはもちろん、集っていた面々も沈黙し、ヨハンやアデルに至っては迫力に若干目を潤ませた。

 

「ジャックさん、安心してください」

 

 ガンツだけが、変わらずにいた。

 

「レナードさんも、ラークス様も、そんなことするものですか」

 

「……すんません」

 

 ようやく、ジャックは剣を降ろした。

 

「いえいえ」

 

「……もう、戦いは終わりですね?」

 

「はい、ジャックさんのおかげで、無傷とはいきませんが、ラジアータも皆さんもご無事です」

 

「そうっすか……それじゃあ、ちょっと休むっす」

 

 それきり、ジャックは動かなくなった。

 

 サイネリアが慌てて駆け寄り、立ったまま彼が気絶していると認めると、アキレスらが抱きかかえ、そのまま『モーフ医院』へ全速力で運んでいった。

 

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