翌日、面会謝絶が解かれたジャックは、『見舞客』への対応に追われ、終日ベッドから離れられなかった。
最初に、ナツメらを伴ったラークスが訪れた。
宰相はごく短く、『地龍』討伐の成功報告、及びその功績を称え、更なる活躍を期待していると残して去った。ジャックの体調を慮ったのだろう。傍らのエアデールにも、簡単に挨拶をしただけだった。
次に、ガンツ、クライヴ、ジーニアスらが現れた。ここでようやく、ジャックの顔に柔らかさが戻った。
「ジャックさん、ゆっくり休んでくださいね」
「次は恐らく『水龍』だろう、さらに強大さを増して、銀龍、金龍も控えている」
「オラも『龍殺し』になれたかな? 押すの手伝ったべ」
三者三葉、感謝から苦笑まで、だが、これこそジャックが欲した光景であったかもしれない。
ガンツは退室時、エアデールを認めると、居住まいを正して別室で話が出来ないかと申し出て、彼女もそれに応じた。
恐らく、彼の父ガウェインについて話すのだろう。ジャックはガウェインとの戦いの果て、たどり着いた思いを姉に伝えている。後は、ガンツと姉の事だ。
それからしばらくは、王国の重臣やら大貴族やらの訪問が続いた。口々にジャックを褒め称え、『国家繁栄のため』と今後の綿密な関係を望んだが、化粧の下で見え隠れする欲や媚に彼は閉口するばかりだった。
それと比べれば、アナスタシアらは潔かった。ずかずか入って来て、医院の部屋の狭さに不平を漏らし、見舞いにかかった労力と時間は後日埋め合わせてもらうと文句を言った。
「まったく、アータシに迷惑ばっかりかけるんじゃないわよ」
「危なっかしくて見てられません、ナルシェが影響されたらどうするんですか? もっと、身を労わってください」
「次は楽に勝たせてね」
まあ、それぞれなりにジャックを労ってはいたが。
エルウェンら各ギルドの長、構成員たちも顔を出した。少し面食らったのは、ミランダがジャックの顔を見た瞬間、腰を抜かしてしまった時だった。
「良かった……」
戦場での激闘と血まみれの姿、面会謝絶が続いたことから、万が一を想像していたらしい。
「こいつが死ぬようなタマかよ」
一緒に来たビシャスが笑って立たせたが、彼女も何か感じるところがあったらしく、ぶっきらぼうに、しっかり休めと言った。
モルガンは、ジャックよりも鎧の方に興味があるようで、アーシェラと共に、データを取るために詳細に調査を行っていった。
「龍の攻撃を受けても健在ね」
「ゴーレムに応用できれば、借金も……」
ナギサ、ヴァージニア、ホリィの異国三人娘も顔を出した。ナギサは活躍できなかったことを悔やみ、『白狼』はにこやかに勝利を祝い、狂信者は勝利を神の加護あってのものと祈るのだった。