この生徒が俺TUEEEくせに慎重すぎる   作:えんびフライ

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1.救世難度Sようこそ実力至上主義の教室へ
あり得ないくらい慎重


◇◆◇◆

  

 ピリリリリ、ピリリリリリ!

 

 男は目覚ましの音で目を覚め、音を止めた。

 

 彼の名は竜宮院聖哉(りゅうぐういんせいや)。身長は180㎝を超える長身で、爽やかな黒髪に凛々しい顔。さらに頭脳明晰で体から発せられるオーラも男神のソレという色々ハイスペックな男である。性格は慎重。

 

 今日から東京都高度育成高等学校の新入生になる男である。彼が通うことになる東京都高度育成高等学校とは東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。

 

 希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校である。3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になるが、60万平米を超える敷地内は小さな街になっており、何1つ不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校である。

 

 だが、聖哉は慎重な性格なので進学率、就職率が100%だということを当然信じておらず、さらには3年間外部からの接触が禁じられることから考えもつかない恐ろしいことが学校で行われていると想像し、あまり行く気がなかった。

 

 しかし、両親からの強烈な薦めには流石の聖哉も反論の余地も与えられず特に行きたい高校がなかったため仕方なく選んだのである。

 

「5:30か、学校の門が開くのが6:00だからまだ余裕はあるな」

 

 目覚ましの時計を確認した後、聖哉は近くにある体温計を脇に挟み、体温を測った。

 

「体温は36.8℃か。いつも通りだな」

 

 体調が万全であることを確認した聖哉は食事をし、制服に着替えた後、チェックインしたときに貰ったロッカーのカギをフロントの人に返して、学校の近く(・・・・・)にあるカプセルホテルをチェックアウトした。

 

レディパーフェクトリー(準備は完全に整った)

 

 ......訂正しよう。どうやら彼はあり得ないくらい慎重のようである。

 

◇◆◇◆

 

 学校に登校した聖哉は掲示されているクラス表を見る。聖哉は出席順でも後ろの方であるため下から自分の名前を探す。探しているとあるクラスで自分の名前を見つけた。確認するとBクラスのようだ。

 

 Bクラスの教室を見つけ中に入ると教室の中は静寂であった。......流石にこの時間帯には誰もいないようである。教室に入った瞬間に誰かからの視線を感じたため聖哉は辺りを見渡した。

 

「廊下にも監視カメラをいくつか見かけたが、教室の中にも監視カメラか。気味が悪いな」

 

 視線の正体は監視カメラであった。聖哉が教室に入るまでに見つけた監視カメラの数は50個。そのあまりの多さに聖哉は怪しく思ったがまずは自分の席を見つけることを優先した。

 

 聖哉は自分の名前が書かれているネー厶プレートを探す。自分のネー厶プレートを見つけた聖哉は何度も自分の席が間違っていないか確認するとその席に座る。

 

 座った聖哉はまずは机に手を伸ばし中に何も入っていないことを確認する。次に机を持ち上げ落とし持ち上げて落とし......その作業を100回まで繰り返す。耐久性は問題ないようである。机が丈夫なものだと確認した聖哉は椅子を引いて立ち上がり、机と同じように椅子を持ち上げ落とす動作を100回繰り返す。

 

 机、椅子と共に耐久性が優れていることに安堵した聖哉は椅子に座り顔を伏せる。入学式に備えるためHRの時間が始まるまで寝て過ごすようである。

 

 聖哉が再び目を覚めると教室中にはたくさんの生徒がいた。ほとんどの生徒は互いに自己紹介して親交を深めていた。

 

「はーい!皆、席に着いてー!!」

 

 女性はスーツ姿で髪型はセミロングでウェーブがかかっていて今時の大人の雰囲気を漂わせていた。教室を一通り見渡し、全員着席していることを確認した女性は自己紹介を始める。

 

「はじめまして、私がBクラス担任の星之宮知恵(ほしのみやちえ)です。担当教科は保険だよ。初めに言っておくけど、この学校には学年ごとのクラス替えは存在しないからこれから三年間一緒に過ごすことになると思うよ!みんなよろしくね!」

 

 星之宮は生徒達に満面の笑みを浮かべる。その表情を見たほとんど男子は顔を赤らめ目がハートマークになった。だがしかし一部の男子には通じない。特に聖哉は(なんだこのビッチ臭い女は......)と心の中で思い警戒心を上げていた。

 

「これから一時間後に入学式が行われるんだけど、その前にこの学校についての特殊なルールについて説明するからまずは資料を配るから前の人は後ろに回してね」

 

 配られた資料には以下の通りに書かれていた。

 

・寮での学校生活を義務化

 

・外部との連絡を一切禁止(肉親であっても学校側に許可なくは禁止)

 

・学校の寮から出るのを禁止

 

 この資料は合格発表を受けて貰った物と同じものだ。聖哉は前に貰った物と変更点がないか隅々まで目を通した。

 

「じゃあ最後に、今から配る学生証カードについて説明するよ。これを使えば、施設内にある全ての施設の利用、売店での商品購入が出来るよ。ただ、使うたびに所持ポイントを使うから使い過ぎに注意してね。基本的に学校内ではこのポイントを使って買えないものはなくて、学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だよ」

 

「施設では機械にこの学生証を通すか提示するかで使用できるよ。それからポイントは毎月初めに自動的に振り込まれることになっているから計画的に使うように! このクラス全員、平等に10万ポイントが支給されているはずからね。ちなみに1ポイントにつき1円の価値があるよ」

 

 一瞬、周囲に動揺が走る。つまりクラス全員には学校側から10万という大金を貰ったということになる。

 

「ポイントの支給額の多さに驚いたかな? この学校は実力で生徒を測るからね。それはこの学校に入学できた皆に、それだけの可能性と価値があるってことなんだよ。そのことに対する評価だからポイントは遠慮なく使ってね! あと、このポイントは卒業後に学校側が全て回収することになっているから、ポイントを現金化することはできないよ。卒業間近に沢山持っていても得はないから、その時は誰かに譲渡しても大丈夫だよ。あ、でも無理矢理カツアゲとかはしちゃ駄目だからね。学校はいじめ問題とかにも結構敏感なんだから!」

 

 なるほど、いじめ対策として教室に監視カメラが設置されているのかと聖哉は納得する。

 

「じゃあ、最後になにか質問がある人は居るかな?」

 

  戸惑いが広がる中、星之宮は教室中をぐるりと生徒達を見回す。

 

「(質問は山程あるが入学早々質問し過ぎると悪目立ちする可能性がある。ここは質問しないでおこう)」

 

「質問はないみたいだね。じゃあみんな、入学式には遅れないように気をつけてね~!!」

 

 そう言うと星之宮はそのまま教室から退室した。

 

 星之宮が教室から出ると周囲から話し声が聞こえ始める。

 

「ねえねえ、10万だって!」

 

「凄いよね、後で一緒に買い物にいこうよ!」

 

「毎月大金が貰えるなるなんて使いきれね~よ」

 

「10万、これがあればビビキュアのフィギュアがいっぱい買えるぞ......デュフフww」

 

 生徒達が仲良くなった友達と喋りあったり、一人で10万という大金をどう使うか妄想を膨らませて考えている中、聖哉は支給されたポイントについて考えていた。

 

 入学当初は10万もらえたがそれは入学ボーナスで必ず貰えるもので、来月以降は貰えるポイントが少なくなるかも知れない。最悪の場合ポイントが1ポイントも支給されないかもしれない。所持しているポイントが0ポイントになった生徒は食品を買えなくて餓死してしまうかもしれない。あらゆる可能性を考えに考えた末、聖哉は来月の支給額が判明するまで極力ポイントを使わないことを決めた。

 

「はーい、ちゅうもーく!」

 

 とある生徒の一声により教室内に沈黙が訪れクラスの視線は一人の生徒に向けられる。その生徒はストロベリーブロンドヘアーで胸が大きいスタイル抜群の美少女であった。

 

「これから三年間一緒に過ごすことになるんだしまずはみんなのことを知ることが必要だと思うの。だから今から自己紹介しようと思うんだけどどうかな?」

 

「うん! 賛成!!」

 

「私たちもみんなのことが知り〜たい!」

 

 一人が賛成すると他の生徒たちも続々と賛成の表明を示した。

 

「うん、みんなありがとう!それじゃ、まずは私から。私の名前は一之瀬帆波(いちのせほなみ)っていいます。目標はみんなと仲良くすること!これから3年間よろしくね!」

 

 パチパチ、周囲から大きな拍手が起きる。男子のほとんどはその一之瀬の大きな胸に釘付けになっているようだ。どうやらこれからは彼女を中心としてBクラスは機能し始めるようである。

 

「じゃあ次は俺だな!俺の名前は柴田一一」

 

 一之瀬を筆頭に前の列の方から自己紹介が始まる。途中で恥ずかしがりやな女子生徒もいたが一之瀬のフォローにより自己紹介は円滑に進んでいった。そしてついに聖哉の番がやってきた。

 

「じゃあ次の人はそこの君、自己紹介をお願いできるかな?」 

 

「あぁ」

 

 聖哉が席を立つと多くの視線が聖哉へと向けられる。

 

「ねぇ、ちょっとカッコよくない?」

 

「分かる、まさに理想のタイプッて感じ?」

 

 ある女子が聖哉を見るとあまりの美形に頬を赤らめていたり、ある男子はその美形に嫉妬の籠もった視線を向けていた。

 

「俺は竜宮院聖哉だ」

 

 聖哉が一言発すると、辺りが静まり返った。

 

......

 

「え、それだけ?」

 

「あぁ」

 

「にゃはは、何だか変わった子だね。まぁ、これから一緒に頑張ろう!」

 

 一之瀬から拍手が起こると、周りからポチポチと拍手が起きる。聖哉の第一印象はあまり良くなかった。

 

◇◆◇◆

 

 入学式が無事に終わった。施設の簡単な説明を受け放課後になった後、様々な生徒が寮へと入っていたり、友達と買い物へでかけたり、はたまた女子をナンパしにいったりとしていた。各々が自由に過ごす中、聖哉はある方向へと向かっていた。

 

 それは職員室である。冒頭に触れたとおり、聖哉はあり得ない慎重である。入学当初にいきなり10万を渡されて簡単に納得するはずがない。必ず何か裏があると踏んでいた。聖哉は真意を確かめるために職員室へ訪れた。

 

「失礼します。星之宮先生はいますか?」

 

 聖哉に呼び出された星之宮が職員室から出てくる。

 

「あれ、竜宮院君じゃない、どうしたの?......もしかして先生に会いに来てくれたのかな。イケメンだからって意外に面食いなんだね〜!このこの!」

 

 星之宮が聖哉の頬を人差し指でツンツンする。聖哉は心底鬱陶しいと感じていた。

 

「やめろ、鬱陶しい」

 

「あはは、ごめんね~。それで竜宮院君は一体何の用があって私の元に訪れてきたのかな」

 

「今朝のことについての質問をしに来た」

 

 その瞬間、星之宮の笑顔はそのままで目付きが鋭くなった。

 

「へぇ〜、どうして質問しようと思ったのかな?」

 

「この学校は不可解な点があまりにも多すぎる。だから俺はそれを解決するために質問しにきた」

 

「うんうん、疑問を疑問のままにしないのはいいことだねー。それじゃあ、立ち話もなんだし、生徒指導室に行こうか」

 

「いいだろう」

 

 星之宮について行き、生徒指導室へ入った聖哉は周囲を見回し、観葉植物や家具を確認する。

 

「あの、何をしているのかな?」

 

 聖哉の行動に不思議に思った星之宮は問いかけた。

 

「部屋の何処かに盗聴器か監視カメラがないか調べている。登校したとき、廊下や教室のあちこち監視カメラが設置されていて非常に不愉快だったからな」

 

「そんなに疑わなくても何もないよ」

 

「本当か?嘘ではないだろうな」

 

「本当だって、私の目を見て信じて」

 

 星之宮のキラキラした視線を見て聖哉は不快な思いをしながらも渋々納得した。

 

「(廊下や教室に設置された監視カメラをすぐに見つけるなんて、なかなかの洞察力ね。まぁ朝に学校の門が開いた数秒後に登校してきたのは驚いたけど)」

 

「じゃあここに座ってね」

 

「分かった」

 

 聖哉が座るのを見ると星之宮が口を開ける。

 

「それで最初の質問はなにかな?」

 

「来月以降のポイントは変動するのか?」

 

「......どうしてそんな質問するのかな?私は今月のポイントは10万ポイントを支給したって言ったはずなんだけど、もしかして人の話を聞いていなかったのかな〜?」

 

 星之宮は意地悪な笑顔を浮かべながら再び聖哉の頬を人差し指でツンツンする。

 

「やめろといっているだろ。それに質問を質問で返すな」

 

 聖哉が星之宮の人差し指を振りほどいた後、質問に答える。

 

「お前は今朝、毎月ポイントの支給日(・・・)について触れたが毎月のポイントの支給額(・・・)について一切触れてはいない。それにお前は今、今月のポイントにしか触れなかった。それで、来月はいくら貰えるんだ」

 

 星之宮はしばらく長考した後、質問に答えた。

 

「ごめんね、それは答えられないかな...」

 

「(答えられない、だと?)」

 

 聖哉は星之宮の予想外の返答に一瞬戸惑った。しかしすぐに気を取り直し、別の質問をした。

 

「なら来月からポイントは振り込まれなかったりするのか?」

 

「それは毎月きちんとポイントが振り込まれるから安心して」

 

「では、支給されるポイントが0ポイントになる可能性はあるのか」

 

「ごめんね、それも答えられないかな」

 

「それは困る。もし来月に振り込まれるポイントが0ポイントだともし今月で10万を全て使い切ってしまった生徒はどうなる?食料を買うポイントが無く餓死してしまう生徒が出たらどうする?」

 

「それに関してはスーパーやコンビニで無料の食品や生活必需品は買えるから最低限度の生活はできるはずだよ」

 

「その無料で買える物は本当に安全なんだろうな。食品が実は消費期限切れであったり生活必需品は壊れている不良品だったりしないよな?」

 

「無料で手に入る物は全部安全だから大丈夫だって!!」

 

「......そうか。ポイントの詳細を知ることができないのは非常に残念だが一応は納得した」

 

 聖哉の怒涛の質問を受けた星之宮は疲労困憊になっていた。

 

「(はぁはぁはぁ、まさかこんなに質問してくるなんて、竜宮院君のデータベースを見たから性格が慎重なのは知っていたけど朝の出来事と言い流石に慎重すぎない!?これはもはや病気だわ......)」

 

「もう一つ質問がある」

 

「な、なにかな?」

 

 星之宮は疲れながらも聖哉を見る。

 

「支給されたポイントは本当にどんな物でも買えるのか?」

 

「......なんでそんな質問するのかな?」

 

「だから質問を質問で返すな。お前は学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だと言っていた。それを言葉通りに受け取れば生徒の出席を欠席(・・)にする権利が買えたり退学(・・)させる権利が買えたりできるはずだ。それで、どうなんだ?」

 

「う〜ん、どうだろう。それについても答えられないかな。でも生徒を欠席にさせたり退学にさせようとするなんて、そんな事を考えちゃいけないんだぞ!」

 

 星之宮が子供を躾けるような口調で答える。質問に答えない上に馬鹿にするような態度に多少の苛つきが聖哉に芽生えた。

 

「さっきから質問をすれば分からないだの、どうだろうの一点張り。まるでこちらの質問に答える気がないようだな」

 

「あはは、ごめんね~。この学校はいろいろ秘密にしなきゃいけないことが多いから教師としての立場上、無闇に答えるわけには行かないの」

 

 ごめ~ん、と星之宮が悪戯っ子のような態度で謝る。しかし、その態度に苛つきが頂点に達した聖哉はある言葉を口にした。

 

「......チッ。まったく、使えないババアだな」

 

「バ、ババア......」

 

 聖哉は『ババア』という単語を口にした瞬間、星之宮から黒いオーラが溢れ出てくる。

 

「竜宮院君?私はババアじゃなくて綺麗なお姉さんでしょぉ?」

 

 笑顔だが目は笑っていない星之宮。だがしかし聖哉は全く動じずお構いなしに喋り続ける。

 

「ほざけ。さっきから思っていたがお前が厚化粧で老け顔を誤魔化しているのはバレバレだ」

 

「老け顔......」

 

 星之宮が殺気を高めるがそれでも聖哉は屈しない。

 

「まぁいい。また何か疑問が湧いたら質問しに来る。それでは、失礼する」

 

 聖哉は一礼して、生徒指導室を出る。

 

「竜宮院聖哉アァァァ!!!」

 

 その後、職員室に戻ってきた星之宮がこの世とは思えない恐ろしい雰囲気を漂っていて教師陣はその恐ろしさに震えたそうな。

 

 

氏名:竜宮院聖哉 (4/1時点)

クラス:1年B組

学籍番号:S01T004677

部活動:無所属

誕生日:3月8日

 

評価

学力:A−

知性:B

判断力:A

身体能力:A−

協調性:D+

 

面接官からのコメント

学力、運動神経とともに学年上位で非常に冷静な判断と慎重な性格なためこの点で言えばAクラス相当である。しかしあまりにも慎重すぎるため常に他人に対して警戒心が高い傾向にあるため協調性が低い。よってBクラスに配属とする。

 

 




一応単発です。これの続きが出るのは僕のやる気次第です。

聖哉の誕生日が調べても分からなかったので声優さんと同じ誕生日にさせてもらいました。

傍点「特定の文章の強調や注意をうながす目的で文字の上に打つ点 」はいりますか?

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