この生徒が俺TUEEEくせに慎重すぎる   作:えんびフライ

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Bクラスの日常

◇◆◇◆

 

「はい、体調は特に問題はなし......ねぇ、なんでこんな朝早くから生徒の体調を見ないといけないの?」

 

「無論、俺の体調を調べてもらうためだ。病気にかかってしまっているかも知れないからな」

 

 入学式から翌日。聖哉(せいや)は昨日と同じ時間帯に学校に来て星之宮(ほしのみや)に自分の体調を検査してもらっていた。

 

「だからってこんなに早く来る必要はないでしょ!」

 

「駄目だ、病気という物は自分でも気づかないときにかかっているものだ。病気に気付いたときにはだいぶ重症化している可能性が高い。最低でも朝、昼、晩。3回は病院に行かないと駄目だ」

 

「そんなに行く必要はないでしょ! ご飯を食べる感覚で病院へ行くな! だいたい、こんな朝早く学校に検査を受けるためにくるな!」

 

「俺も本当は病院に行きたかったが、朝に病院はやっていない。だから嫌々保険医であるお前に病気にかかっていないか検査してもらっている訳だ」

 

「嫌々なのはこっちよ!」

 

「(この子、絶対病気よ、病気! まず精神科に行って頭を検査してもらうべきだわ!)」

 

「はぁ......まったくうるさいババアだ。これだから老害は困る」

 

「なんですってぇ〜!!」

 

 星之宮が般若のような顔で聖哉を睨みつける。しかしそれでも聖哉は平然としている。そんな顔を見て星之宮はため息をつき、もとの顔へと戻っていった。

 

「もういいわ。先生もう怒らないから、だからさっさとあなたは教室に行きなさい」 

 

「いや、まだだ。お前に質問がある」

 

「え」

 

 やっと苦痛から開放されると思っていた星之宮は聖哉の言葉を聞いて顔を青ざめた。

 

「? 何を青ざめている。言っただろう。また何か疑問が湧いたら質問しに来ると」

 

「い、いや〜でも答えられないことが多いと思うよ?」

 

 言い訳をして聖哉からの質問攻めから逃げようとする星之宮。

 

「確かにそうかも知れないが答えられる質問がないわけではないだろう。それでまず1つ目なんだがーー」

 

 しかし、聖哉の魔の手に星之宮は逃げることはできなかった。

 

「(も、もうやめてーー!! こ、こんなことなら教師になんてならなきゃよかった......)」

 

 その後HRのときに聖哉とのやり取りでぐったりしていた星之宮が現れクラスのみんなに介抱されていた。

 

◇◆◇◆

 

 入学式から翌日、今日から早速から授業が行われた。とは言っても授業初回ということもあり授業はほとんど授業進度についての説明であった。高度育成高等学校は進学校と言われており先生たちは厳格な雰囲気があると思われていたが実際には明るくフレンドリーな先生が多く授業の中盤になると生徒のほとんどは緊張感が解けていた。

 

 中には授業の最中に後ろに座っている生徒に話しかける生徒や居眠りをしていた勇者もいたが先生は特に注意することもなく授業を進めていた。

 

 そんな様子を見かねた一之瀬(いちのせ)は、

 

「みんな! 授業中は話したり寝たりしないで先生の話をしっかり聞こう!」

 

 そう言うとクラスの多くが賛成して次第にBクラス全体の授業態度がよくなっていった。

 

 授業が進んでいき昼休みとなった。生徒たちは席を立ち、仲良くなった友達と机をくっつけ昼食をとる生徒や学食に行く生徒がいた。聖哉は折角のことなので学食に行くことに決めた。

 

 学食に行くと大勢の生徒がいた。幸せな顔をしながら大盛りの定食を食べている生徒もいれば反対に絶望の顔を浮かべなから山菜定食を食べている生徒もいた。聖哉は早速定食を食べようと思いメニュー表を覗き込んだ。メニュー表をしばらく眺めていると一つ気になる定食があった。

 

「(山菜定食『無料』、あのクソビッチのことは全く信じてはいなかったがポイントで支払う物の中に無料で買えるものがあるというのは本当だったのだな。だがこの山菜定食が本当に無料なのかは怪しいな)」

 

「おい、この山菜定食は本当に無料なんだろうな」

 

 聖哉はメニュー表が無料と書かれている山菜定食を指さしながら店員に聞く。

 

「はい、無料ですよ」

 

「本当だろうな。食べ終わったあとに代金を請求したりしないだろうな」

 

「え......後で請求なんてしません」

 

 聖哉の質問に狼狽える店員。狼狽えて隙が出来たところに聖哉が攻める。

 

「無料だからって衛生管理がしっかりしていなかったり、毒が入っていたりなんて事はないだろうな」

 

「衛生管理はしっかりしていますし、毒なんか入っていません!」

 

 店員がなんとか信用してもらおうとするが聖哉はありえないくらい慎重なのでなかなか信用しない。

 

「おい、なんだなんだ?」

 

「なんの騒ぎだ」

 

「ククク、あいつ。相当ヤバいクレーマーだな」

 

「あらあら、どうやら彼は相当疑り深いようですね」

 

 聖哉と店員とのやり取りに騒ぎを聞きつけた人たちがたくさん集まりだしてきた。

 

「はい、ストップストップ!」

 

 その言葉とともに、一人の女子生徒がやってきた。その女子生徒はストロベリーブロンドヘアーで胸が大きいスタイル抜群の美少女。先日に自己紹介で最初に名乗り出た一之瀬帆波であった。

 

「って、竜宮院君!? こんなところでなにしてるの?」 

 

 騒ぎの原因がまさかの同じクラスだったことに驚く一之瀬。

 

「......お前は誰だ?」

 

「え、えぇ!? 昨日自己紹介したでしょ!? 一之瀬帆波だよ!?」

 

「あぁ、そういえばそんなやつがいたな」

 

「そんなやつ!?」

 

 自分がクラスメイトに認識されていなかったことを知り、ショックを受ける一之瀬。聖哉は自己紹介している間は星之宮に質問する内容を整理していたのでクラスメイトの名前は一人も頭に入っていなかったのである。ショックを受けていた一之瀬は顔を横に振り気を取り直す。

 

「それでどうしたの?」

 

「あぁ、こいつに山菜定食が本当に無料で安全な物かを聞いても嘘をつくんだ」

 

「え、そうなの!?」

 

「違います! 何度も無料で安全って言ってもこの人が信じてくれないんです!」

 

 涙になりながらも店員が訴えかけてくる。

 

「......とりあえずこの場所から離れようか」

 

 二人の証言により聖哉の方が悪いと判断した一之瀬は聖哉の右腕を引っ張り食堂の隅へと連れて行った。

 

「それで、どうしてあんな騒ぎをたてたの!」

 

 一之瀬が頬を膨らませ怒った表情で聖哉を見つめる。しかし聖哉は知らんぷりの表情で答える。

 

「ふん、俺は山菜定食が無料で安全な物かどうか確かめていただけだ」

 

「いくら不安だからってあんなに店員さんを責めることないでしょ!」

 

 二人の意見が飛び交うがなかなか解決しない。どうやったら聖哉に山菜定食は無料で安全な物か証明することができるか。少し考えた一之瀬は一つの妙案を思い浮かんだ。

 

「分かったよ。だったら山菜定食を私が買って一口食べる。それで山菜定食に毒が入っていないことを確認する。それでいいよね?」

 

「......いいだろう。ただし、後で代金を請求したりするなよ」

 

「しないよ!?」

 

 聖哉からの合意を得て買いに行った数分後、山菜定食を持った一之瀬が戻ってきた。

 

「それじゃあ、まずは私が食べるね。もぐもぐ......なるほど、無料だけど凄くおいしいね」

 

「どうやら即効性の毒は入っていないようだな」

 

「即効性の毒も遅延性の毒も入ってないよ!? とにかくこれで毒が入ってないことは分かったよね? じゃあはい、どーぞ!」

 

 山菜定食と箸を置かれた台を差し出す一之瀬。

 

「おい、俺にお前が食べた箸を使って食べさせるつもりか」

 

「......にゃ!? そ、それってつまり間接キスーー」

 

「俺にお前のばい菌を食べさせるつもりか」

 

「ひどいよ!?」

 

 聖哉の言葉に一之瀬は再びショックを受けた。

 

「と、とにかく! もう店員さんを困らせないこと! いいね!」

 

「あぁ、分かった」

 

「うん、えらいえらい! じゃあまたね!」

 

 そういって自分の箸を店員のところに戻した後、数人の女子生徒が座っている席に戻っていった。どうやら友達と一緒に食堂に来ていたようだ。一之瀬が去って一段落ついた聖哉はまだ使われていない箸を持っていき山菜定食を食べた。

 

「まずいな、あいつの味覚はおかしいのではないのか」

 

 どうやら聖哉の口には合わなかったようである。

 

◇◆◇◆

 

 放課後、聖哉は体育館へとやってきた。昼休みの放送で午後5時から第一体育館から部活動と生徒会の説明会が行なわれることを聞き、聖哉は胡散臭い学校の生徒会長を務めている生徒を拝みにきたようだ。

 

 体育館には一年生と思われる生徒でほとんど占めていて100人近くが説明会を待ち侘びていた。

 

「お、竜宮院! お前も部活動に興味があるのか!」

 

「お前は部活動など興味がないと思っていたが意外だな」

 

 そういって話かけてきたのは二人の生徒。一人が柴田颯(しばたそう)。爽やかイケメンでクラスのムードメーカー。もう一人は神崎隆二(かんざきりゅうじ)。普段から物静かで質実剛健な印象を受ける。ちなみにこちらもイケメンである。勿論聖哉は顔すらも覚えていない。

 

「誰だ、お前らは? 新手のオレオレ詐欺か?」

 

「ちげーよ! 俺は柴田颯! でこっちが......」

 

「神崎隆二だ、よろしく。俺は柴田の付き添いできている」

 

 自己紹介を終えて後、話題は部活動の話へと変わっていった。

 

「それで竜宮院はどの部活動に入るんだ? 俺はサッカー部に入るつもりなんだ!」

 

「そうだな......竜宮院は高身長だからバスケ部に入るのか?」

 

「おぉ、確かに! バスケやってる雰囲気だな!」

 

「俺は何処にも入る気がないぞ」

 

「え!? じゃあ生徒会にでも入るのか? それとも誰かの付き添いだったりするのか」

 

「俺は何処にも入る気はないし、誰かの付き添いできた訳でもない」

 

「おいおい、じゃあなんでここに来たんだよ」

 

「如何にも怪しげな高校で生徒会長をやっている変わり者を見にきた」

 

「変わり者はお前のほうだと思うが......」

 

 神崎と柴田は竜宮院の動機に呆れていた。

 

「一年生の皆様、お待たせしました。生徒会書紀の橘茜(たちばなあかね)です。それではこれより部活動と生徒会についての説明会を始めます」

 

 神崎の言葉を最後に橘の司会の元、説明会が始まり3人は真剣な表情でステージを見た。運動部や文化部の説明では部活時間やどんなところに魅力があるか、最後に未経験者歓迎というありきたりな説明が多かった。一年生たちは一つの部活が終わるためにどうしようかと友達で相談しあっていて中盤には体育館が賑やかな雰囲気に包まれていた。

 

 聖哉は部活動についての説明を半分適当に聞き流しているとある一人の男子生徒に目が止まった。その生徒は身長170cm、細身の体でさらりとした黒髪。シャープな眼鏡からは知的さを覗かせていた。  

 

「(あいつからは途轍もない雰囲気を感じる。やつは只者ではない。目線を合わせただけで襲いかかってきそうだ)」

 

 やがてその男子生徒がステージに上がるとマイクの前に立ち、一言も声も発せず一年生を見定めるような表情で見下ろす。

 

「がんばってくださ〜い」

 

「カンペ、持ってないんですか〜?」

 

「あははははは!」

 

 一年生からヤジが飛んでくる。しかし、男子生徒は何も言わず立ち尽くすだけ。一年の言葉にも反応しないで立ち尽くしているとやがて体育館がざわつきだした。

 

「何だよあの人!」

 

「やる気がないのか?」

 

「何だか気味が悪いわ」

 

 それでも男子生徒は動かない。ただ静かに一年生を見下ろすだけ。やがてざわつきが収まると今度は張り詰めた静かな空気に包まれた。その空気が30秒ほど続いた後でだろうか、ゆっくり全体を見回しながら男子生徒は演説を始めた。

 

「私はこの学校で生徒会長を務めている、堀北学(ほりきたまなぶ)と言います」

 

 堀北と言う生徒は続けて言葉を述べる。

 

「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から生徒会の立候補を募ることになっています。立候補者に特別資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている生徒がいましたら原則部活との掛け持ちをしないでください」

 

 口調は丁寧であったがどこか突き刺すような視線であった。たった一人の説明に一年生の誰も声を上げることができなかった。

 

「それからーー私たち生徒会は甘い考えによる生徒会への立候補は望まない。そのような生徒は当選するのはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命がある。そのことを理解できる者のみ、生徒会に歓迎しよう」

 

 堀北は演説を終えるとステージを下り体育館へと出てていく。堀北の演説には一年生の誰もが緊張感を帯びていて誰もが見送ることができなかった。

 

「それでは説明会を終了いたします。これより入部の受付を開始いたします。また、入部の受付は4月いっぱいまで行っていますので、後日入部を希望する生徒は入部届を希望する部活へと持参してください」

 

 司会者の言葉で説明会が終了すると体育館は張り詰めた空気から一気にもとの賑やかな空気に戻っていった。

 

「いや、疲れたな〜! あの生徒会長怖すぎたろ!」

 

「そうだな、流石生徒会長といったところか」

 

「ふん、メガネだから舐めていたが流石に一筋縄では行かないか」

 

「いや、メガネって......」

 

「それはどうかと思うぞ」

 

 聖哉の言葉に思わずドン引きする柴田と神崎。

 

「それじゃ俺はサッカー部の入部を受付しに行くから、じゃあな二人共!」

 

「あぁ」

 

 神崎が返事をすると少し考えた後、聖哉に話しかけてきた。

 

「竜宮院、さっき怪しげな高校と言ったな。あれはどういう意味だ?」

 

「......なんだと?」

 

 神崎の言葉を聞くと聖哉は鋭い目つきで神崎を見定める。だが神崎は怯えることもなく言葉を続けた。

 

「確かにこの学校はいろいろ不可解な点が多い。入学初日の10万円という大金の支給や監視カメラの数の多さ。他にも挙げられるかもしれないが、お前はこの不可解な点を皮肉って怪しげな高校と述べた。違うか?」

 

 その推論に納得したのか聖哉はいつも通り平坦の表情に戻った。

 

「ほう。陰湿なワカメだと侮っていたが、どうやら少しは使えるようだな」

 

「い、陰湿なワカメ......」

 

「確かにお前の言うとおりだ。俺は入学式が終わった後、すぐに星之宮にいくつか質問してみたがほとんど無回答だった。まったく使えん奴だ」

 

「お前の担任への態度にはどうかと思うが入学初日でそこまで気づくとは......クラスには言わないのか?」

 

「言わん。そもそも俺が言ったところで聞く耳を持たないやつが多いだろ。近々学校側から発表があるだろう」

 

「......それもそうだな」

 

◇◆◇◆

 

 四月中旬、学校の授業が本格的に始まってきた頃。聖哉がいつも通りに朝早くに保健室で星之宮に質問攻めをした後、教室に戻ってくると男子たちが固まって真剣な表情で話し合っていた。

 

「なぁなぁ、お前は誰にする?」

 

「勿論、一之瀬ちゃんに決まってんだろ! クラスのマドンナだぞ!」

 

「ふん、これだから馬鹿は困る。一番なのは網倉ちゃんだろ。あのポニーテールの髪型は最高だろ!」

 

「おいおい、それを言うなら小橋ちゃんの方がーー」

 

 どうやら男たちで誰の水着姿が一番可愛いか語り合っているようだ。

 

「おーい竜宮院!」

 

 聖哉が見ていると柴田が声をかけてきた。

 

「なんのようだ」

 

「今、誰の水着姿が一番可愛いか男子でポイントを賭けているんだ。お前もどう――」

 

「断る」

 

 聖哉が一蹴した後、自分の席に座った。賭けという言葉に一瞬揺らいだが、賭けに負けてポイントを失う可能性を考えてやめることにしたようである。

 

 聖哉がプールに入るため入念にストレッチしていると、不意に一之瀬から声をかけられた。

 

「うわ〜、竜宮院君ってすっごく鍛えられているんだね。なにか運動してたの?」

 

「あぁ。腕立て伏せ100回、上体起こし100回、 スクワット100回、そしてランニング10km。これを毎日やっていた」

 

「ま、毎日!? よくそんなになるまでできるね!?」

 

 聖哉のトレーニング量に驚く一之瀬。しかし聖哉はあり得ないくらい慎重な性格だ。自分の身を守るためなら聖哉はこれくらい苦ではない。

 

「常に何か起きるか分からないからな。もしかしたら歩いているときにナイフを持った殺人鬼が襲ってくるかもしれん。準備は当然だろう」

 

「さ、流石にそれはないと思うけど」

 

「だが、起こる可能性はあるだろ」

 

「そ、それはそうかもしれないけど」

 

「だからこそ俺は常に入念に準備している」

 

「にゃはは、竜宮院くんって前に話したときも思っていたけど凄く慎重なんだね......」

 

 一之瀬は聖哉のあまりの慎重な考え方に引いていた。

 

「よし、お前ら集合しろ!」

 

 如何にも体育系のようなマッチョ体型の男性から集合をかけられ授業が始まる。

 

「見学は0人か。流石Bクラスだ。みんなが無事に授業に参加できて先生は嬉しく思うぞ」

 

 Bクラスを一通り見回すと男性教師は本日の授業内容を述べた。

 

「早速だが、準備体操を終えたら全員泳いでもらうぞ」

 

「あの先生、俺あんまり泳げないんですけど......」

 

 一人の男子生徒が申し出た。

 

「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやるから安心しろ」

 

「別に無理して泳げるようにならなくてもいいですよ。俺泳ぐの好きじゃないし」

 

「そうはいかん。泳げるようになれば、必ず役に立つぞ? 必ずな」

 

 男性教師はそう締めくくると、早速準備体操に入るよう全員へ促した。

 

 準備体操を終えた後は、とりあえず50メートルほど流して泳いだ。

 

「殆どの者が泳げるようだな。では早速だがこれから競争をする。男女別50メートル自由形だ」

 

 男性教師の言葉にクラスはざわつき始めた。

 

「1位になった生徒には、俺から特別に5000ポイント支給しよう。ただし、一番遅かった生徒は逆に補習になるから覚悟しておけよ」

 

 その言葉で、泳ぎに自信がある生徒からは歓声が、苦手な生徒からは悲鳴が上がった。

 

「それでは男女共にタイムの早かった上位5人で決勝をやろう」

 

 男子教師がそう言い、初めに女子たちの競争が始まった。女子のタイムを記録しているか考えている中、聖哉は一人悩んでいた。

 

「(ふむ、5000ポイントか。正直こんなところで実力を見せる気はなかったが......仕方ない。今後の生活のためだ。今のうちに貰える物は貰っておこう)」

 

 どうやら聖哉は本気で水泳に取り組むことに決めたようである。

 

「(さて、やると決めたからには入念な準備が必要だな)」

 

 そして聖哉はその場で筋トレ( ・・・)を始めた。

 

「お、おい。竜宮院? 何をしているんだ?」

 

 聖哉の突然の奇怪な行動に先生が恐る恐る質問した。

 

「何を? と言われても、ただ準備運動をしているだけだが?」

 

「だからって今そんなことする必要ないだろ!」

 

「いや、水泳は危険なスポーツだ。もし溺れてしまえば最悪溺死してしまうかもしれない。だからいつもより念入りに準備をしているだけだ」

 

「「「えぇ......」」」」

 

 クラス全員と先生は聖哉のあまりにも慎重すぎる考えにドン引きしていた。

 

 女子のレースが終わり、続いて男子のレースへと移った。第一レースから順番に始まり、皆各々バタフライや平泳ぎなど得意な泳ぎ方で泳いでいった。

 

 まだ準備が不十分( ・・・)な聖哉は第三レースへと入っていた。聖哉が入った第三レース。聖哉は折り曲げたナイフのような姿勢で勢いよくプールの中へと飛び込んだ。

 

「うぉ、竜宮院のやつ! めちゃくちゃ早いぞ!」

 

「きゃ〜! かっこいい!」

 

 竜宮院は圧倒的なスピードで進んでいた。その姿に男子は驚きが女子からは歓声が聞こえてきた。

 

「24秒30......」

 

 ストップウォッチを止めた先生はその驚きのタイムに開いた口が塞がらなかった。 

 

「ふむ。まだ不調子のようだな。まだまだ準備体操が足りないようだ」

 

 そう言って聖哉は再び筋トレを始めた。

 

「凄いよ! 竜宮院くん! 運動神経が抜群なんだねっ!」

 

「やるな、竜宮院」

 

「くっそ〜! 俺だって負けねぇぞ!」

 

 一之瀬と神崎からは称賛の声が、柴田は竜宮院に負けじと対抗心を燃やし同じように筋トレを始めた。

 

レディパーフェクトリー(準備は完全に整った)

 

 その言葉と共に決勝戦が始まった。だが実際には竜宮院と柴田との一騎打ちであった。最初は辛うじて竜宮院の泳ぎに食いついていた柴田だが後半に疲れが出たのが柴田はだんだんと遅くなっていき、結果は2位の柴田を数メートル差をつけてのゴールとなった。

 

「おい、5000ポイントしかないのか。もっとありったけ寄越せ」

 

「だ、駄目だよ竜宮院くん! 先生相手にカツアゲなんて!」 

 

 その後、より多くのポイントを貰おうとカツアゲしている聖哉を止める一之瀬であった。

 

 




ども、続きを書くにあたって読者様にご協力して頂きたいことがあるので良かったら活動報告を見てください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=275530&uid=265350

傍点「特定の文章の強調や注意をうながす目的で文字の上に打つ点 」はいりますか?

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