この生徒が俺TUEEEくせに慎重すぎる   作:えんびフライ

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明かされる真実

◇◆◇◆

 

 今日の三時間目の授業は我らがBクラスの担任、星之宮(ほしのみや)先生による授業だ。いつも通り授業開始のチャイムが鳴ってから少し遅れて教室に星之宮がやってきた。

 

「ちょっと静かにしてね。突然だけど小テストを受けてもらうよ」

 

 最前列の列から順にプリントが配られる。プリントには主要5科目の問題が纏めて数問ずつ載せられていた。

 

「先生、聞いてないですよ!」

 

 一人の男子生徒が突然の小テストに悲鳴を上げた。

 

「あはは、ごめんね。今回の小テストはあくまで今後の参考用で成績表には反映されることはないから安心してね。でも勿論カンニングは駄目だよ!」

 

 小テストが始まり、聖哉(せいや)は問題に目を通した。1教科目4問、全20問。各5点配当の100点満点の小テストだった。数問見た限り、問題内容は高校入試より二段階低い教科書レベルの問題だった。聖哉は特に苦戦することなく問題を解き進める。だが、残り3問となったところで聖哉の動かす手は止まった。

 

「(なんだ、この問題は?)」

 

 残りの3問は複雑の数式や細かく勉強しないと知らないような言葉が書かれていて明らかに高校一年生が習うような問題ではなかった。これは高校三年生で習う単元だろうか。

 

 しかし、聖哉は特に何事もなかったのかのように問題を解いた。そう、この男はあり得ないくらい慎重な性格である。もしかしたら突然自宅学習ができているだろうか突然習っていない単元で測ってくるかもしれない。テスト終盤の応用問題で教科書にはない問題がでるかも知れない。そう予想した聖哉は高校合格から入学まで必死に高校で習う範囲を一通り学習しておいてあったのである。

 

「(問題は全て解き終わった。だがケアレスミスや記入漏れの可能性がある。しっかり見直しをする必要があるな)」

 

 見直しをするために書いた解答を消してもう一度解いては再び消して再度回答を記入する。ひたすら同じような作業が続いた。小テストが終わった頃には消しゴムが1個、チリひとつ残さず無くなっていた。

 

 星之宮は生徒がカンニングしないように見回りをしていたが聖哉の机の近くに来ると大量の消しカスが机の上に置いてあってドン引きしていた。

 

◇◆◇◆

 

 5月1日。今日はポイントの支給日のため、聖哉は朝起きた後すぐに学生証端末を起動して現在のポイント額を確認した。

 

ーーーーーーーー

 

竜宮院聖也(りゅうぐういんせいや)

 

学籍番号:S01T004677

誕生日 : 3/8

高校名 :高度育成高等学校

 

156316ppt

 

ーーーーーーーー

 

 現在のポイント残高を確認すると昨日までに残っていた94316ポイントに62000ポイントが足されていて、156316ポイントとなっていた。

 

「(ふむ、やはり俺の予想通りポイントは変動するか。流石に0ポイントにはならなかったが幾らかポイントが下がるようだな)」

 

 早速朝早くから学校に行き保健室を尋ねたが星之宮の居る様子は見られなかった。

 

「ちっ。やつめ、流石に学習したか」

 

 続けて職員室にも訪れたが職員会議で入室できる状況ではなかったので、仕方なく教室で自分の席に座り手持ち無沙汰にしていると教室のドアが開く音がした。

 

「竜宮院? 今日は朝早いんだな」

 

 ドアを開けたのは神崎(かんざき)であった。聖哉の姿を見た神崎は意外な顔をしながら聖哉の席に近づく。

 

「何を勘違いしているかは知らないが俺はいつも朝早くから学校にいるぞ」

 

「......いつもHR開始ギリギリで教室に来てないか?」

 

「あぁ。その時間帯は保健室で星之宮にこの学校についていろいろ質問していたからな」

 

「なるほど......だからいつも星之宮先生が来るときあんなに疲れてるということか......」

 

 神崎は毎朝聖哉に質問攻めという名の暴力を受けて目を回す星之宮を想像して気の毒に思った。

 

「それより、竜宮院君。今月のポイント支給額、何ポイントだった?」

 

「62000ポイントだ」

 

「やはり、俺と同じポイントだったか」

 

「? 同じポイントとはどういう意味だ」

 

「あぁ、どうやら支給されたポイントにも差があるらしい。ある生徒は94000ポイント、もう一人の生徒は49000ポイントが支給されたと聞いた」

 

「それだけか?」

 

「そういえばポイントが支給されなかった生徒もいるらしい、おかげでジュース一本買えなかったと言っていたな」

 

 神崎は登校中に自販機で騒いでいた生徒を思い浮かべた。

 

「何か法則性はないか?」

 

 その言葉を聞くと神崎は何かを思い出したかのように喋り始めた。

 

「そういえば......上から順にAクラス、Cクラス、Dクラス全員がそれぞれ決まった額を支給されたらしい。勿論Bクラスも含めてだ」

 

 神崎の言葉に聖哉はある一つの可能性にたどり着いた。

 

「その話が本当だとすると、何らかの優劣でAクラスから順にクラス分けがされている可能性があるな」

 

「Aクラスから順に? 竜宮院、それはどういうことだ?」

 

 神崎が問うと、聖哉は自分の推論を話し始めた。

 

「気づかないか? Aクラスから順にポイントの支給額を整理してみると94000、62000、49000、0−−」

 

「......!?綺麗に並んでいる......」

 

「気づいたか。この事実から何らかの要因でAクラスから順にクラス分けされていると言えるだろう」

 

「驚いたな......何の優劣で分けられているか分かるか?」

 

「知らん。一つ分かることといえば単純な学力で判断するほどこの学校は甘くはないだろう。運動能力で分けられてるかも知れない。社交性で分けられているかも知れない。授業態度で分けられているかも知れない。早起きした回数で分けられているかも知れない。嘘をついた回数で分け−−」

 

「ま、待て! 竜宮院! もう喋らなくていい!!」

 

 突如として溢れ出てくる『かも知れない』構文の羅列を聞き疲労困憊(ひろうこんぱい)になった神崎が聖哉の口を咄嗟(とっさ)に抑えこんだ。

 

「お前、俺を窒息死させるつもりか? 被害届を出して警察に訴えるぞ」

 

「......」

 

 神崎は聖哉の発言を無視することにして、教室から出ていった。

 

◇◆◇◆

 

「みんな~遅れちゃってごめ~ん。今日は大事な話があるから良く聞いておいてね!」

 

 それから他の生徒がぞろぞろと教室に入ってきてHRまで待ち、チャイムが鳴ってから少しすると星之宮が息切れしながら教室にやってきた。クラス全員が席についているのを確認すると、手に持っていたポスターを黒板に張り付けた。

 

 Aクラス 940cp

 Bクラス 620cp

 Cクラス 490cp

 Dクラス 0cp

 

 ポスターの内容を上から順に見ると、各クラスとその横に数字が書かれていた。

 

「先生。それは......?」

 

 最前列にいる白髪の女子生徒が恐る恐る質問する。

 

「この数値はcp『クラスポイント』って言ってね。簡潔に言えば、クラスに属する生徒達を総合的に評価したポイントだよ。みんなが毎月支給されるポイントはppt『プライベートポイント』と言って、『クラスポイント』×100倍の計算の結果でクラスのみんなに支給されるの! つまりBクラスの生徒たちには今月62000プライベートポイントが支給されたことになるね!」

 

 つまり4月には1000クラスポイントがあり、それが×100倍されて生徒達一人につき100000プライベートポイントが支給されたことになる。それが5月になるとクラスポイントが減少し、それに伴いプライベートポイントも減少したということになる。

 

「先生、クラスポイントが減った要因について詳しく教えていただけませんか」

 

 質問したのは浜口哲也(はまぐちてつや)。男性とも女性とも意識させない顔立ちが特徴である。浜口が質問すると星之宮は申し訳無さそうに謝った。

 

「ごめんね。ポイントの増減の詳細については答えられないかな。この学校の決まりで教えられないことになってるの。でも一つだけアドバイスするとしたら日々の遅刻や欠席、私語が多かったり授業態度の良し悪しによって来月のポイントに反映されるから注意してね!」

 

 普通の高校では個人の授業態度が悪かったらその生徒の内申点が下げられるだけだが、この高校では一味違う。個人の態度によってそのクラスのポイントに関わってくる。まさに連帯責任である。

 

「......もしかして、誰かが言わなかったら答えませんでしたか?」

 

「うん。そうだよ。だって特に教える決まりなんてないもん。質問されて答えられることがあれば答えるって感じかな?」

 

 星之宮は全く意に介さない様子で答えた。星之宮の平然とした態度に生徒達は啞然(あぜん)とした様子だった。

 

「この学校では総合的に判断されてAクラスから順に配属されています。優秀な生徒はAクラスへ、逆に落ちこぼれの生徒はDクラスへと配属されています。つまりBクラスはAクラスには一歩劣るけど優秀なクラスということになるね」

 

 星之宮の発言に生徒たちが困惑する。自分が優秀な生徒だと言われて安堵(あんど)する生徒や最も優秀なAクラスより劣っていると言われて不満を持つ生徒が見受けられた。

 

「さて、ここからが一番重要なことだよ! この学校は確かに入学できれば進学率、就職率が100%保証されます。でもそれはAクラスに所属しているクラスにしか適応されません!」

 

その発言と共に、生徒達はざわつきだした。

 

「おい、ふざけんな!」

 

「そんなの聞いてないぞ!」

 

「先生の嘘つき!」

 

 学校の制度に不満を持った多くの生徒は星之宮に抗議した。

 

「まぁまぁ、みんな安心して! 現時点のAクラスで進学や就職が保証されるわけではないの。今発表したクラスポイントですが、このクラスポイント次第でクラスが変動することがあります。例えばこのクラスが941クラスポイント以上を保持できていればAクラスになれました」

 

 その言葉に多くの生徒達は安堵した表情を浮かべた。

 

「先生、質問です」

 

「はいはーい。何かな、一之瀬(いちのせ)さん?」

 

 ざわつきが収まった後、一之瀬は挙手して星之宮に質問した。

 

「この学校では実力順にクラスが振り分けられていることがわかりました。そこで私がお聞きしたいのは今後クラスポイントが増減するイベントが行われるかどうかです。私の考えだともし学力の優劣だけでクラス分けがされているとしたら、下のクラスほど逆転は不可能だと思います。でもそれだとあまりにも不平等だと思います。なので私の考えでは主に学校行事、例えば体育祭のクラスの順位でクラスポイントが大きく変動すると思うのですが」

 

 一之瀬の推論に星之宮は微笑みを浮かびながら答えた。

 

「ふふ、やっぱり一之瀬さんは非の打ち所が無いね。確かに今後行われる学校行事などでクラスポイントが大きく変わってくるよ。例えば一週間後に行われる中間テストとかね」

 

「なるほど、ありがとうございます!」

 

 星之宮の答えを聞き、周りでは中間テストを頑張ろうとやる気に満ち(あふ)れていた。

 

「さて、この学校の仕組みについて説明したから、次は先日行われた小テストの結果を返していきたいと思います」

 

 そういうともう一つのポスターを黒板に張り出す。それにはクラス全員の名前が書かれて、各教科上から順番に100、95、90と点数の良い方から点数が開示されていた。

 

「流石Bクラス! みんな高得点で先生とっても嬉しい! でも、中間テストと期末テストでもし一教科でも赤点を取ったら即退学になるから気を付けてね!」

 

「「「ええぇぇぇ!!」」」

 

 退学という言葉にクラスの一同は今まで以上に悲鳴を上げた。特に点数が低かった生徒ほど顔が青ざめているようだった。

 

◇◆◇◆

 

「邪魔するぞ」

 

「はいは〜い!じゃあこっちに座ってね!」

 

 昼休み、聖哉は星之宮に質問するために保健室に訪れた。保健室にはいつもより不気味な笑みを浮かべる星之宮がいて聖哉を指定の席に座らせようとしていた。

 

「......座ろうとした瞬間に椅子を引こうとして大怪我を負わせようとしたり、座ると何処かにある爆弾が作動して学校全体が吹き飛んだりしないだろうな?」

 

「やだな〜! そんなことないから早く座って! さぁさぁ!!」

 

「(なんだ、こいつ……いつもより数百倍気持ち悪いぞ……)」

 

 聖哉は星之宮の笑みに困惑しながらも気持ちを切り替えるために咳払いをした。

 

「おい、クソビッチ」

 

「......何かな、竜宮院君?」

 

 星之宮は初手から飛んでくる暴言に怒りを押え込みなんとか作り笑いの表情を崩さずに聞く。

 

「お前は入学式のときにポイントは何でも購入できるといったな」

 

「うん。そうだね」

 

 星之宮は入学式の放課後に質問してきた聖哉の姿を思い出しながら頷く。

 

「だったらお前が担任してきた中で生徒に質問されて答えた質問を全て教えろ、いくらだ」

 

 刹那、周りの空気が凍りついた。

 

「ふ~ん。どうしてそんなことにポイントを使うとしているかな?」

 

「無論、学校の仕組みを理解するためだ。この学校のことだ、今日でこの学校の仕組みについては粗方(あらかた)判明したがまだ何か大きいことを隠しているだろう。だがお前はほとんどの質問には答えない。だから俺はお前がこれまでに答えてきた質問を全て答えてもらうことにした。それなら効率的に重要なことが分かると思ったからな」

 

 聖哉の推論の聞いていた星之宮は突如として吹き出した。

 

「あはははは! 竜宮院君、流石だね! ポイントをそんなことに使うなんて! でもそれは四月中にでもできたんじゃんないの?」

 

 星之宮は聖哉を見定めるような視線を向ける。

 

「戯言を抜かすな。4月にいきなり10万円という大金を支給されたら怪しむに決まっているだろ。来月以降のポイントが確定していない以上無暗にポイントを使用するのは危険だ」

 

「うんうん。相変わらず慎重だね!」

 

 星之宮は聖哉の答えに満足していつもより上機嫌な笑顔で頷く。

 

「いいよ、売ってあげる。今回だけ特別にここで1万プライベートポイントで買ってくれるならね☆」

 

「おい、ふざけるな。高すぎだ」

 

 質問するだけで1万プライベートポイントを要求されることに聖哉は異議を唱えた。

 

「うふふ、ごめんね~。学校側としても無暗に教える訳には行かないの」

 

「......はぁ、仕方ない。いいだろう。一万ポイントを支払おう」

 

「はい、毎度あり~!」

 

 1万プライベートポイントを支払われたことを確認すると、星之宮から主に以下の点が答えられた。

 

・2000万プライベートポイントがあれば好きなクラスに移動出来たり、退学処置取り消しができる

 

・資格や検定を合格または部活動などの大会で好成績を収めればその功績度に応じたプライベートポイントが付与される

 

・過去に卒業間近でBクラスの生徒が1200万プライベートポイントを稼いだが、新入生を騙してプライベートポイントを稼いでいたことが発覚し退学処分になった。

 

「ふむ、まぁこれくらいで十分だ」

 

 聖哉は対価の割には思ったより少なかったことに複雑な表情を浮かびながら保健室を退出していった。聖哉が退室するのを見届けた星之宮はカーテンが吊るされている方を向いた。

 

「ふふふ、いつも保健室に来ているからって油断したな〜!それで、どうだった? 竜宮院君の推論は?」

 

 吊らされているカーテンに向かって問いかけると数秒後に突如としてカーテンから一人の女子生徒が姿を表した。

 

「......まさか竜宮院君がプライベートポイントの有用性をここまで理解していたなんて思いませんでした......」 

 

 女子生徒とは一之瀬のことであった。今までの一連の流れを聞いていた一之瀬は自分の率直な感想を述べた。

 

「うんうん! しかも彼、入学式の後に私のことをナンパしに来たのよ! キャー!!」

 

「え、えぇ!? ナンパ!?」

 

「ふふ、ただの冗談よ」

 

 星之宮の冗談に一之瀬はあからさまにズッコケた。

 

「さて、冗談はここまでにして......一之瀬さんに1つ課題だよ! この一年間を通して竜宮院聖哉という生徒を分析して見定めること!」

 

「えっと......それってつまり、竜宮院君と話す機会を増して仲良くすることですか?」

 

 一之瀬は星之宮の言葉の真意を自分なりに解釈する。

 

「流石、一之瀬さんね! 竜宮院君はちょっと疑心暗鬼なところがあるけど彼がクラスに協力してくれればきっとBクラスは強力になるわ!」

 

「はぁ......? そうなんですか?」

 

「うん、そうよ! 担任の私に間違いなんてないわ!!」

 

 星之宮の気迫に圧されて一之瀬はとりあえず納得することにした。

 

「わ、分かりました! 私、竜宮院君と仲良くするために頑張って見たいと思います!」

 

「うんうん! じゃあ頑張ってね〜!」

 

 そして、一之瀬は保健室を退室した。

 

「(これで一之瀬さんが竜宮院君に接触する機会が増えれば必然的に私に質問する時間が無くなる。そして一之瀬さんをきっかけに竜宮院君がBクラスのみんなと協力してくれれば必ずAクラスに上がれるはず。まさに一石二鳥ね! 私ってなんでこんなに冴えるのかしら✩)」

 

 星之宮は事が上手く運べたことに満足してひとりほくそ笑んだ。

 

 




 なお、聖哉は一之瀬の髪型がカーテンから僅かにはみ出していていたので普通に気づいていた模様。
 クラスポイントが少し減っていますがこれは前回聖哉が店員と揉め事を起こしたからです。

ーーー
ヨホホイ、皆様誤字報告ありがとうございます。自分の間違いが多すぎて申し訳ないです。
......ところで2年生編6巻の試し読みを見た感想なんですけど挿絵の天沢が完璧にメスガキの表情だったのでビビリました。

傍点「特定の文章の強調や注意をうながす目的で文字の上に打つ点 」はいりますか?

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