MISFITS ―はみ出し者たちの物語―   作:Astley

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第03話:能力

 ライカの誕生日会から数日が経ち、ライカは徐々にエルンスト家に慣れ始めていた。心を開き始めているライカは、表情も幾分か柔らかくなり、自然な笑顔を見せることも以前より増えた。

 しかし、それでも尚ライカは捨てられることを恐れているようだ。未だに無理して笑おうとして、結局ぎこちない表情を浮かべることがあるし、何より――

 

バチィッ!

 

 何かが破裂するような音が聞こえて、メルクは急いで音のした方へと駆けつける。そこには焦げたカーテンと、その傍で大泣きするライカがいた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……!! 許して……!! 捨てないで!!」

 

 ライカはメルクを見るなり、そう叫びながら縋りつく。

 

「ライカ、大丈夫? 怪我はない?」

 

「私は……私は……!!」

 

「良かった。あなたに怪我は無いみたいね。カーテンは大丈夫よ。また買い直せばいいから」

 

「うぅっ…………!」

 

 メルクはライカを抱きしめ、その背中をさすった。

 

「大丈夫、大丈夫」

 

「…………」

 

 泣いていたライカが落ち着きを取り戻し始める。

 誕生日会の翌日、ライカの持つ能力が判明した。それは自然(ロギア)系悪魔の実、「ビリビリの実」。全身が電気となる能力で、他の自然(ロギア)系の例に漏れず、覇気を伴わない物理攻撃は完全無効。自身の身体から電気を飛ばすようなこともできるのだが、その出力は高くなく、射程距離もせいぜい1,2メートル程度。便利ではあるが、偉大なる航路(グランドライン)全体で見ればむしろ弱いくらいの能力でしかない。しかし、それでも日常生活を壊すには十分すぎる能力であった。

 ライカはまだ未熟なため、この実の能力を制御できていない。そのため、彼女は時折自分の意思に反して電気化したり、電撃を飛ばしてしまったりして、家の物を焦がしてしまうことがあった。

 そしてその度に彼女はこのように、全てに絶望したかのような表情を浮かべて許しを請う。

 

「ねぇ、ライカちゃん」

 

「ひっ!?」

 

 メルクの声に反応したのか、ビクリと体を震わせるライカ。そんな彼女にメルクは優しく声をかける。

 

「私達家族はあなたを絶対捨てたりしないわ。だから安心して?」

 

 メルクはライカの頭を撫でる。今はまだ深い少女の傷が、いつか完全に癒えるその日を願って――

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 ライカが来てから数週間が経った。今日はベルツの訓練が休みであり、彼が家にいる。能力の暴走で家を傷付けることに罪悪感を感じていたライカは、こういう日には家の庭でベルツと一緒に能力の制御の訓練をするようになった。今日も()()()()()()が、庭で訓練に励む。

 

「ん……!」

 

「いいぞ、ライカ! その調子だ!」

 

 やっていることは単純だ。ライカが身体を電気化し、その状態で周囲に電撃が飛ばないように抑える。しかし、これがなかなか上手くいかない。

 

「……! ダメッ!」

 

 バチッという破裂音と共に周囲に電撃が飛び散る。しかし、ベルツは()()()()()()()使()()()それらを全て避けていた。

 

「お父さん! 大丈夫!?」

 

 ライカは心配してベルツに駆け寄る。

 

「ああ、見ての通り一発も当たってない。俺はこう見えて強いからな」

 

 訓練中の新兵が言っていい言葉ではないが、しかし、実際にベルツには傷一つ無かった。

 

「ごめ――」

 

「謝る必要は無い。まだ始めて少ししか経っていないんだ。できなくて当たり前さ。ゆっくりやっていこう」

 

「……うん」

 

 ライカは申し訳なさそうな表情を浮かべるが、ベルツの言葉に素直にうなずく。

 

「俺も同じ自然系(ロギア)だったなら多少はまともなアドバイスができたんだがな……ごめんな、超人系(パラミシア)で」

 

 今度はベルツが申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「そんなことない! お父さんのアドバイスは役に立ってる! だってほら! 前よりもずっと暴走しづらくなってるから!」

 

 実際彼女の能力の暴走の頻度は以前よりもだいぶ下がっている。このままいけば、あと2,3年で能力を完全に制御できるようになるのではないかと思えるほどに。

 

「そうか。そう言ってくれると助かるよ」

 

 しかしベルツの顔は晴れない。それもそうだろう。何せベルツは自然系(ロギア)超人系(パラミシア)動物系(ゾオン)も、どんな能力者であろうと絶対に一人前に鍛え上げられる最高の教官を知っている。それと比べてしまえば、どうして自分の指導に自信など持てようか。

 

(ゼファー教官に預けるのが一番早いんだろうけど……あの人には子供一人に構っていられる暇はない)

 

 大海賊時代で海軍の戦力拡大が急務となっている今、海軍の教官たちは激務に追われている。特に、ゼファーほどの教官ともなれば、その仕事量は尋常ではない。そのため、ゼファーに預けるのは現実的ではなかった。

 ならば、責任を持って、自分がやるしかない。自信はないが、我が子のためなら何だってできる。そうベルツは自分を奮い立たせる。

 

「ハァ……ハァ……ふぅ」

 

 ライカは肩で息をしながらへたり込む。朝からずっと訓練をしていたので、だいぶ疲れているようだ。ベルツはここで訓練を引き上げることにした。

 

「よし! 今日の訓練はここまでだ! ライカ、良く頑張ったな」

 

「うん!」

 

 訓練が終わり、二人して息をつく。家に戻ろうとするベルツの手に、自然とライカの手が重ねられた。夕日が照らす庭の中、二人は手を繋いで家へと歩いていった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「ライカの方はどうなっている?」

 

 準備運動中のベルツに、唐突にゼファーが声を掛けた。ベルツは急にゼファーに話しかけられてバランスを崩しかける。しかし、何とか持ち直してみせて、そのまま慌てて答える。

 

「能力の方は概ね順調です。制御は日に日に上達していて、暴走することも減りました」

 

 ゼファーは満足そうに頷く。

 

「そうか。それは良かった。それで、肝心の情緒の方は?」

 

「はい。やはり未だに捨てられることに恐怖心を抱いているようですね。以前よりは遥かにマシになりましたが、それでも何かある度に捨てられるんじゃないかと怯え始めます。何度捨てないと言っても信じてもらえず……」

 

 ライカの精神は以前よりは安定していたが、やはりまだ捨てられることへの恐怖からは解放されていない。

 

「まぁ、当然と言えば当然の反応だな。あの子は実際一度親に捨てられている。言葉だけじゃ信じられないだろうさ」

 

「ええ。分かってます。やはり時間をかけて行動で示すしかないですね……」

 

「そうだな……。お前に任せて正解だった。引き続き頼むぞ」

 

「はい!」

 

 ゼファーに改めてライカのことを頼まれてベルツの表情が引き締まる。

 

(誰が何と言おうとライカは俺たち家族の子なんだ。絶対に幸せにしてみせる!)

 

 心の中で、今一度ベルツは決意した。




ビリビリの実
 ゴロゴロの実の下位種。ゴロゴロよりも精密な電気の操作が出来るが、出力では大きく劣る。 

ベルツの能力
 1話で能力者であることは示唆していたが、超人系(パラミシア)であることが判明。いつか実態を明かします。

自然系(ロギア)超人系(パラミシア)動物系(ゾオン)も、どんな能力者であろうと絶対に一人前に鍛え上げられる最高の教官
 一体何ファー先生のことなんだ……?

 能力判明回。ちなみに、あらすじで言ってた“特異体質”はビリビリの実のことではありません。特異体質くんの出番は多分10話くらい後です。
 ついでに言えば、魚人海兵くんの出番はもう20話くらい後ですし、ミンク族海兵くんの出番はもう30話くらい後です。あらすじ詐欺ってレベルじゃねえぞ!(やけくそ)
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