MISFITS ―はみ出し者たちの物語―   作:Astley

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第04話:友達

――大丈夫? この辺は海賊が多いから。一人でいたら危ないよ。

 

――どこから来たの? ご両親のところに送ろうか?

 

――っ!? そうだったのね。ごめんなさい。辛いことを思い出させたてしまって……。

 

――じゃあ、私のところに来ない? 一人で生きるのは大変でしょう?

 

――決まりだね! あなたの名前はなんていうの?

 

――『ライカ』ちゃんっていうんだ! いい名前だね! 私の名前は――

 

 

「んぅ?」

 

 そこでライカの意識は目覚めた。

 

(夢……)

 

 何か大事な夢を見ていた気がする。しかし内容を思い出せない。思い出そうとすると、頭の中に霧がかかったような感覚になり、強制的に思考を中断させられる。結局ライカは夢について考えることをやめて、朝の身支度を始めた。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 ライカがここで生活し始めてから一か月が経った。ベルツとの修行の成果は確実に表れていて、ライカの能力が暴走することは殆ど無くなっていた。また、家族たちが愛を持って接していたことが功を奏したのか、ライカの精神はかなり安定し、無理に笑うことも、多少の失敗で絶望することも殆どしなくなった。

 そこでメルクは、これをいい機会だと捉え、ライカを家の外に連れて行ってみることにした。今までライカは、能力の暴走や、不安定な精神が原因で、庭より外には出せなかった。しかし、今のライカなら、外に出しても問題ないだろう。その判断は正しかったと、メルクは目の前の光景を見て思った。

 

「ねえねえ! さっきのビリビリってやつ、もっかいやって!」

 

「えっと……こう?」

 

ビリリッ! バチッ!

 

「すごぉーい!」

 

「かっこいい! もっとやって!」

 

 ライカは同じくらいの歳の子供たちに囲まれていた。ことの発端は数時間前に遡る――

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「お母さん、これからどこに行くの?」

 

「ふふっ、家なんかよりもずっと広くて楽しいところよ」

 

 メルクは、ライカを連れて公園へ向かっていた。その理由の一つは、同年代の子供と接することはライカにとって良い刺激になるだろうと思ったからである。

 そしてもう一つの理由は、彼女の身体能力にある。一か月間ライカと一緒に暮らしていて分かったことなのだが、ライカは普通の5歳児よりも遥かに身体能力が高い。そのため、ライカにとって家は非常に窮屈であった。走れば壁にぶつかるし、跳べば天井に突き刺さる。庭に出ても、庭が十分に広くないせいでまともに運動することができない。

 親として、何とかライカに羽を伸ばしてもらいたいと思っていたメルクは、ライカに何の心積もりもなく遊びまわってもらいたかった。しかし、家ではそれができない。だからこそ、彼女はライカを屋外の広い場所に連れていきたかったのだった。

 ライカたちが公園へ行く道中、ライカは初めて見る家の外の景色に目を輝かせていた。今まで庭から僅かにしか見えなかった「外」というものを間近で感じられて、心底嬉しそうな笑顔を浮かべている。

 

(こういうところは年相応なのね。少し安心したわ)

 

 ライカは以前よりは気楽に暮らせるようになったが、まだまだ硬さが抜けきっていなかった。何かあればすぐにメルクやベルツを手伝おうとするし、それを断ると不安そうな表情を浮かべる。そして、自分が役立たずだと勘違いしてすぐに落ち込んでしまうのだ。

 そんな有様を何度も見せられていたので、メルクは今のライカの様子に内心ほっとしていた。

 しばらく歩いている内に、漸く公園に着いた。そこではライカと同年代くらいの子供たちが遊んでいた。その保護者と思しき人たちが公園の端で談笑している。

 

「あら、メルクじゃない。久しぶりね」

 

「最近見かけないけどどうしていたんだい?心配してたんだよ」

 

 その保護者らしき人たちの一人がメルクに声をかけた。彼女はメルクの近所に住むおばさんであり、日常的にメルクと交流している人だった。

 

「お久しぶりです。最近はちょっと忙しくて……」

 

「ああ、その子のことかしら?」

 

 そう言っておばさんがライカの方を見る。ライカは一瞬びくりとして、怯えたような表情をした。それを見たメルクは慌ててライカの前に出て庇うように立つ。

 

「ごめんなさい。まだ人に慣れていないんです」

 

「あら……そうなの……。ごめんなさい。無神経だったわね」

 

 大海賊時代という物騒な時代に、マリンフォードという海軍のお膝元に住んでいる以上、彼女はこういった子供には理解があった。メルクにとってそれはありがたかったが、同時に申し訳なくもあった。

 

「いえ、こちらこそすみません。それで、今日はこの子を外で遊ばせようと思って連れてきたんです」

 

「まぁ、そうなの! よかったわねぇ。みんな、新しいお友達が来たわよ! 一緒に遊びましょう!」

 

「「「「「「は~い!」」」」」」

 

 おばさんが公園にいる子供たちに呼び掛けると、一斉に集まってきた。それを見てライカは呆然としている。その様子に気付いたおばさんが声をかける。

 

「大丈夫よ。みんな優しくしてくれるから」

 

「うん……」

 

 あっという間にライカは子供たちに囲まれていた。それを見て、メルクはライカが取り乱さないか心配になってしまう。

 しかし、同年代の子供というのは、大人と比べて幾分か接しやすかったようだ。緊張こそしているものの、怯えてはいない。

 

「ねえねえ、名前はなんていうの?」

 

「……ライカ」

 

「ライカちゃんっていうの? かわいい名前だね!」

 

「私はミミっていうの! よろしくね!」

 

 最初はぎこちなかったが、徐々に打ち解けていく。子供たちも、初めて会う子に対して興味津々のようで、あれやこれやと質問攻めにしている。ライカも最初程警戒していないのか、ややリラックスしながらそれに答えている。

 

(良かった……)

 

 メルクはライカの様子を見て安心していた。やはり同年代との交流は良い刺激になっているらしい。これで少しずつでも明るくなってくれるといいのだが。

 

「ねえ、ライカちゃん! 鬼ごっこしようよ!」

 

「え……?」

 

 突然の提案に困惑するライカ。しかし子供達は既にやる気満々だ。今更断れない空気ができ上がってしまった。

 

「……わかった」

 

 ライカは渋々とだが、了承した。

 

「じゃあ、最初はライカちゃんが鬼! 10数えたら追いかけてね!」

 

 こうして子供たちは各々別々の方向へと走り出した。それを見たライカは、戸惑いながらも子供たちに言われたとおりに、鬼の役目を全うする。

 

「1、2、3……」

 

 ライカはゆっくりと数を数え始めた。その間も逃げる子供たちを見つめている。

 

「4、5、6、7、……」

 

 ライカは尚も子供たちを凝視する。

 

「8、9……」

 

 心なしかライカは薄っすらと笑みを浮かべているように見える。そして――

 

「10!」

 

 ライカは凄まじい速度で駆け出した。数えるのに10秒。全員捕まえるのに4秒。その僅か14秒で鬼ごっこは終了した。

 

「え……?」

 

「嘘……でしょ?」

 

 これにはさすがのメルクや周りの大人たちも驚いた。まさかこんな短時間で捕まえられるとは思わなかったからだ。しかもライカはまだ5歳である。余りにも異常な身体能力であった。

 

「すごいよライカちゃん!」

 

「全然見えなかったー!」

 

「速すぎー!」

 

 子供たちは無邪気に喜んでいる。一方、ライカは自分の何を褒められているのか分からないといった顔をしていたが、次第に状況を理解したらしく、嬉しそうに笑った。

 すっかり子供たちと打ち解けられたライカは、それから暫くの間子供たちと楽しそうに遊んでいた。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 全方位からライカに向けて複数のボールが飛んでくる。普通の子供は勿論のこと、大人でも回避は難しいような状況だが、ライカは難なく全てを回避している。

 

「嘘ぉ!? 今ので当たらないの!?」

 

 ライカは子供たちに囲まれて、逃げ場がない状況でボールを投げられていた。

 囲まれて集中的にボールを投げられているさまは一見いじめのように見えるが、別に子供たちは悪気があってやっているわけではない。

 元々ライカと一緒にドッジボールをしようとしていた子供たちであったが、ライカと他の子供たちでは身体能力に雲泥の差があった。そのため、チーム戦をした場合、ライカがいるチームが絶対に勝つという状況になってしまっていた。結局、早々にチーム戦は諦められた。

 そして次に、ライカ一人対子供たち全員というチーム分けでドッジボールが行われた。このチーム分けなら実力が釣り合って、良い勝負ができるのではないかという考えだったのだが、これも同じ結果に終わった。ライカが驚異的な身体能力を遺憾無く発揮し、一人で何人もの子供たちを圧倒して見せたのである。

 結局、どうあがいてもドッジボールでは楽しめないことに気付いた子供たちは、最終的に子供たち全員でライカを囲んで、子供たちがライカにボールを投げ続け、それをライカはひたすら避けるだけという遊びを開発した。絵面は酷いが、ライカも子供たちも皆楽しんでいるので問題は無いだろう。

 しかし、ここで事件が起きた。

 

「当たれー!」

 

 子供たちの一人が投げたボールがライカ目掛けて飛んでいく。しかし、この程度の速度のボールを避けることなど、ライカには造作もないはずだった。

 

「……!」

 

 しかし、いくら隔絶した身体能力を持っていたとしても、ライカはまだ5歳である。故に詰めが甘い。ボールに気を取られて足元が疎かになり、小石に躓いてしまったのだ。

 ライカの顔にボールが迫る。ライカは本能的に恐怖を感じ――

 

バチバチッ!

 

「……あっ」

 

 飛んできたボールを電撃で焼いてしまった。黒焦げのボールが地面に落ち、辺りは静寂に包まれる。

 

「ちっ違うの!! これはっ、その……!!」

 

 ライカは慌てて弁解しようとするが、言葉が出てこない。自分がしてしまったことに頭が真っ白になっていたからだ。

 

(また……また、捨てられる(・・・・・)!)

 

 ライカは折角仲良くなれた子供たちに拒絶されるのではないかと恐怖した。ライカの瞳に涙が浮かぶ。それを見たメルクがライカに駆け寄ろうとした。しかし――

 

「すっごーい!!」

 

「ライカちゃん能力者だったの!?」

 

「初めて見たー!」

 

「ねえねえ、もういっかいやってよ!」

 

 しかし、その必要は無かった。震えるライカに返ってきたのは、ライカが想像していたのとは正反対の言葉だった。ライカは驚いて呆然としている。

 

「すごかったね! 今の何?」

 

「バチバチってかっこよかった!」

 

「もう一回見せて!」

 

 先程までの沈黙は何だったのかと思う程、子供たちは興奮気味にライカに質問する。

 

「……えっと、その……」

 

 ライカは戸惑っていたが、やがて笑顔になって答え始めた。

 

「……あれは、ビリビリの実の能力。私は、電気人間なんだ」

 

「へぇ! そうなんだ!」

 

 その後、ライカはその能力を子供たちに見せ、子供たちはその度に歓声を上げていた。

 

「ライカちゃんってすごいね!」

 

 ライカは手のひらに火花を発生させている。ライカの能力をもっと間近で見ようと子供の一人が顔を近づけた。

 

「……近づくと、危ない。もう少し、離れて」

 

「わかった!」

 

 もう彼女の顔に自身の能力に対する忌避感は無かった。こうして、初めての友達との時間は過ぎていった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「それじゃあみんな、そろそろ帰るわよ」

 

 日も暮れてきた頃、おばさんが子供たちに声をかける。子供たちも残念そうにしている。

 

「ねえ、ライカちゃん、明日も来てくれる?」

 

「私もまた遊びたい!」

 

「僕も!」

 

「っ! ……うん!」

 

 ライカは満面の笑みで首を縦に振った。彼女は間違いなく、初めてできた同年代の友達に心の底から喜んでいた。

 帰り道、ライカは行きと同じく、メルクと手を繋いで歩いていた。

 

「お母さん、今日はありがとう。とっても楽しかった」

 

「ふふっ、それは良かったわね」

 

 二人笑顔で家に帰る。ライカの心の傷が完全に癒える日も、もうそんなに遠くはないのかもしれない。




近所のおばさん
 この人も海兵の家族なので、基本優しい。

ミミ
 ネームド友達ロリ。また出て来るかも。

ライカの身体能力
 5歳児は5歳児でもクレヨンな方の5歳児だったか……。

ライカの能力に興奮する子供たち
 子供特有の無邪気さです。

 「はじめてのおともだち」回。ライカの情緒も順調に成長してます。このまま平和に育って欲しいね! でもこれワンピの二次創作なんだよなあ……()
尊厳破壊くん「じれったい! ちょっと愉しい雰囲気にしてきます!」
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