MISFITS ―はみ出し者たちの物語―   作:Astley

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第06話:ヒーロー

――なんであげちゃったかって?

 

――ヒーローは肉があったら他人に分け与えるものなのよ。

 

――説明になってない?

 

――ライカちゃんもいつか分かる日が来るよ。

 

――ええ。きっと。ライカちゃんは私に似て強いから!

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 ベルツはマリンフォードの街を駆ける。

 

「ベルツ! お前もいたのか!」

 

「大佐殿! 状況は?」

 

 ベルツが前線の部隊と合流し、上官に状況を確認する。

 

「海岸の防衛網は破られた。懸賞金7000万は伊達ではないということか」

 

「なるほど、敵の現在地は?」

 

「街の入り口だ。今いる兵たちで足止めしている」

 

 現在街の入り口では海兵たちがアストンの足止めをしていた。実力的に所謂“雑兵”でしかない彼らではアストンの撃破は不可能だ。だからこそ大佐は彼らに足止めに徹するように指示を出していた。

 

「戦力は?」

 

「アストンを含めて8人だ」

 

 アストンは極度の自信家で、“破天荒”の二つ名の通り、少数でありながら大胆に行動することで知られている。実力もそれなりにあり、今まで幾つもの海軍支部を襲撃した実績もある。しかし――

 

「8人ですか。新入りとかは無いようですね。彼らの実力が前情報通りなら、私一人で十分です」

 

「そうだな。だが無茶はするな。じきに本部からも増援が送られてくる。危なくなったら時間稼ぎに徹しろ」

 

「了解です」

 

――ベルツは自信満々に言い切った。「一人で十分」と。ベルツはまだ少尉であるが、士官学校を首席で卒業している。その実力は本物であった。

 

「折角の家族水入らずに水を差しやがって、海賊どもめ。インペルダウン送りで済むと思うなよ」

 

 ベルツは殺気を振りまきながら駆け出した。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「うぉおらあ! 雑魚どもが!」

 

「ぐわぁ!」

 

 アストンが腕を振りぬき、海兵の一人が吹き飛ばされる。アストンは動物(ゾオン)系悪魔の実、サルサルの実:モデル“ゴリラ”の能力者であった。

 

「くそっ! 化け物め!」

 

 海兵たちが一斉に銃を放つが、それを察知していたアストンは足に力を込め、大きく跳躍した。

 

「雑兵どもが! てめえらには用はねえんだよ!」

 

 銃撃を避けながら暴れまわり、その隙に残りの7人が突撃していく。

 

「行け! 船長が囮になってる間に奴らを皆殺しにしろ!」

 

「まずいっ!」

 

 海兵たちが使う銃はフリントロック式だ。一発撃ってしまえば再装填には時間が掛かる。剣を抜いて反撃しようにも、判断の遅い彼らではそれすら間に合わない。

 

「うわぁ~!」

 

 海兵の一人が腰を抜かしてしまう。最早これまでと思われたその時だった。

 

「っ!?」

 

 最も海兵に肉薄していた海賊の腹に、突如としてワイヤーのような何か(・・・・・・・・・・)が刺さる。そして、その海賊が顔を上げる暇もなく、ワイヤーを辿ってきた何者かが彼の顔に蹴りを入れた。そこで彼の意識は途切れた。

 

「ちょうど戦える人が出払ってるときにここに来るとは運が良いよ君たち。今宝くじでも買ったら海賊辞められるんじゃない?」

 

 そこにいたのはベルツであった。両手に剣を握った状態で海賊と海兵たちの間に立つ。

 

「何だてめえは!」

 

「海軍少尉、ベルツだ。俺は今死ぬほど機嫌が悪い。殺されても文句は言うなよ」

 

 ベルツは海賊に態々名乗り上げてから海賊たちにそう告げた。

 

「たかが一人だ! 船長の手を煩わせるまでもない!」

 

 副船長格である男が突撃を命じる。アストンを除いた残りの6人はベルツに向かって一斉に突撃した。

 

「遅い!」

 

 ベルツはあえて自ら6人の中に飛び込んでいく。まさか自分から多人数の中に入ってくるとは思っていなかったのか、意表を突かれた2人は一瞬硬直してしまった。ベルツはその隙を見逃さず、そのまま2人を斬り伏せる。

 

「ぐわっ!」

 

「ぬおっ!?」

 

 2人を早々に処理されたことに怯んだ残りの4人は後ずさり、斬られないようにベルツと距離を取る。しかし、ベルツは即座に両手の剣を投げつけ、2人に命中させる。これで4人撃破。残るは2人だ。

 

「馬鹿め! 自ら丸腰になるとは――!?」

 

 剣を投げたことをチャンスと捉えた副船長格の男はベルツに突撃する。しかし、ベルツの右手には先程投げたはずの剣が握られていた。

 

「悪いが、手品は得意なんでね」

 

 ベルツは右手の剣を振り抜く。振り抜かれた剣はそのまま副船長格の男を斬り裂き、彼は地面に倒れ落ちた。

 

「ああ……あああ……!」

 

 最後に残った一人は戦意を喪失し、腰を抜かして震えていた。

 

「邪魔だ」

 

 最後の一人を雑に蹴り飛ばして気絶させる。一瞬の攻防で、アストンを除く全員が撃破された。

 

「てめえ! てめえも能力者か!?」

 

 叫ぶアストンを無視して、左手を開く。すると、掌から銀色の何か(・・・・・)が溢れ出した。それはベルツの手の中でグニャグニャと形を変え、最終的に剣の形に落ち着く。

 超人(パラミシア)系悪魔の実、テツテツの実。それが彼が口にした悪魔の実であった。その能力は手から鉄を生み出し、そしてそれを操れるというもの。単純ながら強力で、そして、それ故に扱いの難しいその能力を、ベルツは使いこなしていた。

 

「てめえ、てめえと本当に語彙が貧弱だな。インペルダウンで読書でもした方が良いんじゃないかな」

 

「ふざけんな! 俺様はあの“破天荒”のアストンだぞ! てめえみたいな雑魚に負けるかよ!」

 

 能力でゴリラと化したアストンが怒りに任せて突撃する。ベルツはその軌道を見切り、ギリギリで避けながらアストンを切りつけた。しかし、傷は浅い。単なる鉄剣では、ゴリラの頑丈な身体には効果が薄い。

 

「この野郎!」

 

 アストンはベルツの顔面目掛け拳を振るう。ベルツはそれを首を捻って避けると、そのままアストンの首筋に一撃を加えた。

 

「うごぉ!?」

 

 浅くしか切れなかったが、確実にアストンを怯ませた。ベルツはそのままアストンの背後に回る。そして左手の剣を捨てると、空いた左手から細く伸ばした鉄線を生み出し、それで素早くアストンの首を絞める。

 

「がっはぁ!?」

 

 アストンは腕を振り回して必死に抵抗するが、ベルツには当たらない。

 

「がぁっ……! ぐぅ……!」

 

 ベルツは至近距離から繰り出されるアストンの打撃を全て見切っていた。首の鉄線が外れず、酸欠でアストンの動きが鈍り始める。

 

「やったか!?」

 

 それを見ていた海兵の一人が思わず声を上げた。その時だった。

 

「っ! くそがっ!」

 

「! おっと危ない」

 

 アストンは能力を解除し、人型に戻った。瞬間、身体は小さくなり、首に掛かっている鉄線と、首との間に隙間ができる。その隙間をついてアストンは鉄線から逃れた。

 

「君意外と頭良いんだね。海賊辞めて海軍に入ったら? 上等兵くらいにはなれると思うよ」

 

「~~っ!! 馬鹿にしやがって!!」

 

 再びゴリラの姿になったアストンが、先ほどよりも速い速度で突進してくる。

 

「馬鹿の一つ覚えかな?」

 

 ベルツは呆れたように呟く。そしてさっきと同じくギリギリで躱して反撃しようとした。しかし――

 

「!」

 

 アストンはすれ違う直前で小回りの利く人型に変身し、瞬時に方向を急転換、そのまま再び獣型に変身して突撃した。意表を突かれたベルツは避けきれず、そのままアストンの腕に捕まってしまった。

 

「雑魚がっ!! 二度も同じ手を喰らう馬鹿がどこにいる!!」

 

「ああっ!」

 

「ベルツさん!」

 

 海兵たちがざわめく。そのままアストンはベルツを絞め殺そうとした。

 

「雑魚だな。二度も同じ手を使う馬鹿がどこにいる?」

 

 その瞬間、アストンの背中に3本の剣が突き刺さった。

 

「何っ!?」

 

 ベルツが先程から戦闘中に投げたり捨てたりしていた剣。それら全てに、ごく細い鉄線が結ばれていた。そしてその鉄線はベルツの手に繋がれている。つまり、ベルツはいつでも剣を呼び戻せるようにした上で剣を投げていたのだった。

 ベルツは端からアストンの狙いに気付いていた。気付いた上で、それをアストンの頑丈な皮膚を破るための策として利用しようとしていた。

 

「終わりだ」

 

 今、アストンは3本の剣とベルツ自身に挟み撃ちにされた形となっている。それが意味することはつまり――

 

「いくらゴリラとは言え、これは耐えれまい!」

 

「うぐぉおおお!!?」

 

 後ろから突き刺ささる3本の剣をさらに強く引き寄せ、同時にベルツ自身も持っている剣で前からアストンを突き刺す。前後から刃物でサンドイッチにされれば、さすがのゴリラの皮膚と雖も、ひとたまりもない。今まで浅い傷しか与えられなかったその身体に、前後から深々と剣が突き刺さった。あまりの激痛に、アストンはそのまま白目をむいて倒れた。

 

「ベルツ少尉が勝ったぞ!」

 

 ベルツの勝利に海兵たちは沸き立つ。

 

「やはり首席は伊達ではなかった!」

 

「入隊3か月でもう昇進の話が上がるだけのことはある!」

 

「流石は『銀蜘蛛のベルツ』だ!」

 

 ベルツは照れ臭そうに笑う。

 

「ケタガーリの奴め。もっとかっこいい二つ名を付けてくれよ」

 

 そんなことをぼやくベルツの下に、さっきの大佐がやってきた。

 

「流石だな、ベルツ君。やはり君は中尉に昇格すべきだ。あとで正式に掛け合っておくよ」

 

「ありがとうございます。ですが、私はまだまだ若輩の身。今後ともご指導のほどよろしくお願いします」

 

「よく言う、私よりも君の方が遥かに強いだろうに」

 

 大佐は指揮や作戦の立案が得意な文官タイプで、その方面で戦果を挙げて出世した海兵であった。それ故、階級はベルツよりも高いが、戦闘能力はベルツよりも低い。

 

「何をおっしゃいますか、大佐殿。私なんて、能力と手足が無ければ大佐に及びませんよ」

 

「それが無いお前に勝っても嬉しくはないな」

 

 二人は皮肉の応酬を交えながら笑い合う。今、ここにマリンフォード襲撃は終結した。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 避難所にて、他の民間人と共にライカはベルツの戦いを見ていた。

 

「新兵なのにあんなに強いなんて……!」

 

「すごい! 次代の英雄はきっと彼だな!」

 

「本当に助かったわ。これで私たちも安心して生活できる」

 

 周囲の人々が口々にベルツの強さを称える。ライカは自分のことのように嬉しくなった。

 

「ライカちゃんのお父さん、すっごく強かったね!」

 

 いつの間にか隣にいたミミに話しかけられる。

 

「うん! 私のお父さんは強いんだ!」

 

 ベルツが強いのは知っていた。しかし、まさかここまでとは思ってもみなかった。

 

「ヒーローみたいだった!」

 

 ミミが興奮しながら捲し立てる。確かに、ベルツはあの場に現れた誰よりもヒーローらしく見えた。

 

「ライカちゃんがお父さんみたいになりたいって言う気持ち、私も分かるよ!」

 

「……え?」

 

 ライカは一瞬ミミが何を言っているのか分からなかった。しかし、ライカは思い出した。3か月前の国語の授業で、確かにライカはお父さんみたいになりたいと言った。あの時は将来の夢が思いつかなくて咄嗟に言っただけだったのだが、ベルツの姿を見た今は、自然とその言葉が口をついて出た。

 

「うん! 私はお父さんみたいになりたい!!」

 

 今、ライカは将来の夢を見つけた。ベルツのように、弱きを助け強きをくじく存在に。海賊に脅かされる無力な人々を、その力で助ける存在に。肉があったらそれを他人に分け与えられる存在に。そんな存在になりたいと、ライカは思った。そうだった。そういう存在を一言で表す言葉があるじゃないか――!

 

「――私は、ヒーローになりたい!」




アストン
 雑兵には勝てるけどネームドには勝てない程度の戦闘力。哀れ。

ベルツ
 ついに能力判明。単純な能力は強い(確信)

ゴリラの頑丈な身体
 鉄の剣で斬られても無事なのは頑丈すぎるって? でもワンピ世界のキリンは手足と首を伸縮させられるし、トリケラトプスは襟が回転するから、ゴリラも鉄剣に耐えられます(暴論)

やったか!?
 やってない。

銀蜘蛛
 銀蜘蛛感の無い戦闘シーンになってしまいましたが、後に再び戦闘シーンを書くときに銀蜘蛛感増しましにするつもりなので問題はないです()

ケタガーリ
 ナヅ・ケタガーリ中将。SBSで生まれた、海兵の二つ名を考えているとされるお方。なおベルツは二つ名をあまり気に入っていない模様。

ライカ
 将来の夢を見付けました。叶うといいね()

 初めての戦闘描写。難しい……難しくない? というかこれでいいんすかね? 多分いつか書き直します。
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