イラストレーターの私は引退させられたVTuberの幼馴染を最強にすると誓った   作:バーチャルカボチャ

2 / 4
第2話 戦争みたいな幼馴染のお世話

「疲れたぁああー、しんどいぃいい」

 

 私は、3時間をかけて綺麗にした床に倒れ、溶けていた。もう駄目だ。私はこのまま床で寝る。何ならもう床と結婚する。

 

「ノノぉー、私お腹すいたよぉー」

 

「うるさいうるさい。私はもうここを動かない」

 

 私が掃除している間、熱心にゲームをしていた小娘に何を言われようと私はここを動く気はない。

大量のゴミを分別してまとめ、散らかった服やら物を仕分けして収納、服は洗濯機へ。床もモップと雑巾で綺麗にした。掃除じゃなくて戦争だったね。良くぞまあこれだけ荒れ果てていてゴキブリの一匹も出なかったものだ。高層マンションだからなのだろうか?何しろ、その恐怖に怯えながら掃除をした3時間は私の精神力と体力を容易に吸い尽くした。元気いっぱいにグズっている小娘のことなんて知らん。

 

「ノノぉー……」

 

「っ……はいはい分かりました、作ります、作りますとも!」

 

「やったぁあああ!じゃあ材料何もないから買いに行こう!」

 

「えっ゛」

 

 即墜ち2コマと笑われても仕方ないけど、あんな悲しそうな声で名前呼ばれたら無視できないでしょ!?それに私もお腹空いてたし。ペコペコだし。

ただ、この高層マンションから外へ出て買い物するのは今は勘弁してほしかった。なんで冷蔵庫に飲料水しか入ってないんだ……。

 

 

 

 ◆

 

 

 買い物かごにこっそりお菓子を放り込んでくる微笑ましい子供のエピソードがあったりするけど、なんと天羽はカニをぶち込んでいた。いや、入れる方も入れる方だけど、気がつけ私!どうして丸々一匹のカニを見逃すかな!

 

「どうすんのこれ?」

 

「食べる!」

 

 満面の笑顔である。こいつ、一切調理する気はないのになんて清々しく可愛い顔をするんだ。もしや、この全身綺麗にそのままのカニが魔法か何かでポンと食べられる状態になると思っているのだろうか。この疲労困憊の私に、今からこのカニを調理してくれなんてそんな鬼畜な幼馴染であったはずがないのだから。

 

「折角ノノと一緒に食べられるからね、美味しいものを食べたいのさ!」

 

 

 ――気がついたら私は、カニを捌いていた。ハサミで分解し、食べやすいように包丁で切り分けていた。これが魔法?いや、私がちょろ過ぎただけである。でも仕方ない。不意打ちであんな可愛いことを言われたら否とは言えないだろう。私は、正しいことをしたのだ。

 

「うわぁああ!ノノすごい!天才!」

 

 目を輝かせて齧り付いて私の調理を見学しているこのキッズの期待を裏切るなんて人のすることじゃない。

 

「見様見真似だからあってるか分からないよ?」

 

「美味しそうだからたぶん合ってるよ!」

 

 もうヨダレ垂れそうなくらいワクワク顔をしているけど、まさかカニだけを貪るわけにもいかないので他にも何か作らないと。

 

「何食べたい?」

 

「カニピラフ!」

 

 聞いてから、うわ無茶振りされたら私死ぬぞと思ったけど案外ちゃんとしたやつがきた。これならカニを分解する過程で出てしまった細かいやつを混ぜつつカニをかさ増ししてそれなりのものが出来る。

 後はサラダ代わりに、サーモンと新玉ねぎでカルパッチョを作って……天羽、普段野菜を食べてなさそうな気がするから野菜たっぷりのスープも作ろう。コンソメで、ソーセージも入れておけばたぶん、ほいほい食べるだろう。

 

「ノノ、見て見て!」

 

 メニューが決まって調理に取り掛かると、天羽がどこからか如何にも高級なシャンパンを取り出してきた。私は詳しくないから良く分からないけど、ノンアルコールで一本一万円くらいするものだそうだ。自分では絶対買わないだろうし、貰ったんだろうか。天羽が持っているのは危なっかしいので机に置かせる。

 

「ゲームでもやってていいよ」

 

「やっふー!」

 

 お手伝いという名の邪魔をされるよりはゲームでもして大人しくしていてくれた方がいい……ってやばい、思考が本当にお母さんみたいになっている。19歳にして同級生の子持ちなんて嫌だ。

 

 憂鬱な気持ちを包丁に込めて、野菜を次々と切っていく。

 

 良いマンションなだけあってキッチンは最新式で、天羽は使いもしないくせに調理器具も揃っている。まあ、天羽が料理しないからキッチン周りはまだマシな状態だったのでそれはいいか。キッチンからリビングが見えるので何やら真剣な顔でゲームをしているのが見える。あの、ゲームをしながら体が動く癖、昔からだなー。

 

「ノノぉー!まだぁー?」

 

「もうちょいかなー」

 

 ゲームをしながらもチラッチラッと忙しなくこちらを窺うようになってきたので、そろそろ大人しくしているのも限界っぽいけど、こちらも完成間近だ。カルパッチョは大皿で、スープとピラフはそれぞれよそって、食卓の真ん中には茹でたカニをドン!

 

「お皿並べる!」

 

 食器もそこそこ揃っていたので、それぞれに必要な取皿を天羽が並べてく。それだけのことなんだけど、褒めて褒めてと言わんばかりにこちらを見てきたので頭をポンポンしておいた。まあ、自主的に動いたというところを評価したのだ。

 

「食べよ、食べよ!」

 

 待ちきれなそうな天羽に急かされるまま、席について折角なのでシャンパンも開ける。香りからして濃い葡萄の高級な雰囲気があり、本当にどこでこんなもの貰ったんだと不思議に思う。

 

「えーっと、じゃあお部屋が綺麗になったことを祝して乾杯!」

 

 元気よく乾杯しているけども、この綺麗さを保って貰わないと私の苦労が水の泡なんだけどそこのところ考えているのだろうか。前と同じように使っていたら一瞬で元通りだけど。

 

 これはやっぱり私が定期的に来て部屋を掃除するしかないんだろうか。天羽がこの部屋を保てるとは思えなかった私は乾杯をしつつ、確信に近い不安を抱かずにはいられなかった。





感想・評価・ここすき、モチベーションになりますので、是非よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。