RETURN TO NIGHTMARE   作:デーニッツ

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だから君、血を受け入れたまえよ






~ある狩人の記憶より~


はじまり
ある娘の原点 


 荒い息遣いが聞こえる。血の飛び散った装束は重く、息苦しい。しかし、狩らねば。夢から覚めるにはそれしかない。獣へ鉈を振り下ろす。飛び散った血が頬を温めた。

 

 

 

 

 

 村娘は目を覚ます。酷い夢だった。あんな夢は早く忘れるに限る。ベッドから降り、水瓶から水を汲み口をすすいで顔を洗う。両親は既に起き出しており、朝の準備を終えてしまっていた。

 

「おはよう。良く眠れた?」

 

「うん。」

 

母の言葉に頷く。悪夢を見た等と言えば心配する。ただでさえ、この辺りは貧乏だ。それは土地が痩せているだとか、不作の年だからではなく開墾村の宿命として何もかもが足りていないからだった。

 

「今日はお祭りの準備だ。朝ご飯を食べて力をつけなきゃな?」

 

「うん。」

 

「明日はご馳走よ?」

 

明日は豊穣祭だ。地母神へ感謝を捧げ、そして次の豊穣の祈りを捧げる日。貧乏な開墾村でも、ご馳走が食べられ酒が振る舞われる。そして、夜を通して踊りを踊るのだ。

 

「今年は晴れると良いな…。」

 

小さく呟き、席に着く。昨年の豊穣祭は雨だった。その為、簡易祭壇で祈るだけで終わってしまった。娯楽が少ない村では数少ないハレの日は村娘にとっても少ない楽しみだった。

 

 

 

 昼、村の男達が祭壇を組み上げ、夜を照らす為の焚き火を灯す焚火台の設営が一段落した頃。男達は女達が用意した昼食を囲んで談笑していた。村娘はそこから少し離れた所にいた。

先程まで母親や他の女達に混じって、男達へ食事を配る手伝いをしていたのだ。そちらも一段落したので、大人達の話し声を聞きながら幼馴染みとパンに齧りつく。

 

「明日は晴れそうだな。」

 

隣で、パンを食みながらスープを飲む彼。幼馴染みが呟いた。彼もまた、大人達に混じって祭りの準備を手伝っていた。最近男らしく声が低くなり始め、狩人である父親の仕事も手伝い始めた彼が誰ともなくそんな事を呟いた。

 

「なに?いきなり。」

 

「いやさ。去年は雨が降っただろ?でも、今年は晴れそうだなって。」

 

少し照れたように頭をかきながら、要領の得ない答えを寄越してきた。

 

「なにそれ?」

 

「山のさ、機嫌がすごく良かったんだよ。昨日は獲物も獲れたし、茸や山菜も採れた。だから明日はきっと晴れるさ。」

 

村娘にとって彼とは生まれた時からの付き合いだ。喧嘩もしたが仲良くやってる方だというのが彼女の認識であった。だからこそ、昨年の村娘の落ち込み様を知っていた彼はそんな事を言ったのだろう。二人はただの幼馴染みではなく男女の関係でもあった。親達に言った事はないが恐らく気付かれているだろう。二人きりでいる時に声を掛けられる事はあまりない。

つまりは、幼馴染みなりに村娘へ気づかったと言うものか。

 

「そ、そんなことより。お前はどうなんだ?今年の舞はお前だったろ?」

 

舞、と言っても神殿の巫女や神官が踊るような本格的なものではない。あくまで神殿のある隣村から呼び寄せた神官の祝詞に合わせて踊るというものだ。つまり、祭りの余興としてのものであり、神への祈祷の意味合いは薄いものであった。

 

「ほちぼち、かなぁ。」

 

「何だよソレ?」

 

「ぼちぼちはぼちぼちだよ。」

 

村娘からすれば自分は見せ物になるのだ。それが悪いとも思わないが積極的にそうなりたいものでもない。村娘はそこまで目立ちたがりではなかった。ただ、そういう持ち回りだったと言うだけ。形骸化した踊りに深い意味はあまり見出だせないだけなのだ。

もちろんその様な意味だけでなく、立派な意味合いもあって、ある種いい加減とも言える信仰のための舞ではなかった。しかし、対して代を重ねた訳ではなくとも苦難を乗り越えるためには固い信仰や団結だけでなく、生きる楽しみが必要だった故に。

 

「ま、楽しみにしててよ。貴方が言うならきっと明日は晴れるから。」

 

「ん。そうする。」

 

明日は晴れる。少年と少女は変わらぬ特別を信じて今日を生きる。例え足元が定かではなくとも、大地が裂ける心配をして歩く者がないように。

 

 

 やがて夜が来る。それは村娘にとって馴染みあるもの。そして全てを思い出す暗闇の世界。何時だって彼女にとって始まりは夜からなのだ。

始まりの夜は足音も立てず、村娘の背後まで近寄ってきていた。

 

 

 

 




何か書いてる?ウマ娘?書かなきゃね…

次の話でゴブリンが出てきます。
やったね!
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