そして私は夢を見る   作:ぱちぱち

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連載予定の半分くらいに達したので閑話をはさみました(クロスなし)

特に内容の無いお話なので読み飛ばしても大丈夫です。そもそもこの連載に内容なんて(ry

誤字修正、Ruin様、Hanna様ありがとうございました!


閑話

 拝啓、お母様。

 

 トレセン学園での生活も早1年が過ぎ、この度私も無事進級する運びとなりました。

 

 卒業していった先輩たちに恥じない後輩でいれるかどうか。入学してきた後輩たちに頼られるような立派な先輩になれるかどうか。不安を感じる時もありますが、精一杯頑張って――

 

「立派なウマ娘を目指します。まるっと」

「お、今月の猫かぶり日報書いてんのか!」

「猫をかぶる……? 学園長でも見かけたのか」

 

 背後からかけられた声にそう返事を返して、アルは手に持っていたペンを机の上に置く。振り返った彼女の視線の先には、ししゃもを両手に持った幼なじみ――ゴールドシップの姿があった。

 

 なぜししゃもを持っているのか尋ねようとしてまぁいっかと思考を放棄したアルは、ゴールドシップの右手にあるししゃもに顔を近づけパクリとししゃもの頭をかじり取る。

 

「美味い」

「焼き具合に拘ってるからな」

 

 腕を上げたな、というアルの視線に当然とばかりに鼻を鳴らし、ゴールドシップはもう一方のししゃもの頭をかじり取った。頭だけをかじるのに特に理由はない。

 

「もぐもというかよぐ」

「食べるか喋るかどちらかにしろ」

「もぐもぐ」

「静かに食べられてえらい」

「だろ?」

 

 素直に従ってししゃもの頭を咀嚼するゴールドシップをアルが真顔で褒め称えると、ゴールドシップはさも当然とばかりにニヤリと笑みを浮かべて右手のししゃもを立てた。親指の代わりだろう。

 

「というかよ、アル」

「テイク2かな」

「毎度毎度ウソは言ってないけどオブラートでミイラ巻にした手紙送ってっけどよ。これお前の母ちゃんに送るんだろ? 普段のお前のこと書いた方が喜ぶんじゃねーか?」

「いや……その、だな」

 

 オブラートはミイラ巻きにするものではない筈だが特にその言葉に疑問を抱かず、アルはゴールドシップの言葉に少しの戸惑いを見せた後。

 

「お母さんに、お転婆な娘って思われるのは恥ずかしいし……」

「大分手遅れだと思うぞ???」

「手遅れじゃないから」

 

 少し恥ずかしげな声音でそう告げるアルにゴールドシップはそう率直な感想を述べた。

 

 西から登ったお日様が東に沈むくらいにありえないことを聞いた、とばかりの表情を浮かべる幼なじみに断固とした口調でそう告げると、アルは書き終わった手紙を折りたたみ、ピンク色の可愛らしい封筒に入れる。可愛いものが好き、とよく口にしている後輩を拝み倒して教えてもらった逸品だ。

 

 初期の頃はコンビニで数百円で販売している真っ白な封筒に詰めて手紙を送っていた事を考えれば相当な進歩だろう。

 

 この前もらった返事にも「アルちゃんが女の子らしくなって嬉しい」と火の玉ストレート(直球)な褒め言葉が書かれており、その手紙を読んで3日ほどアルはゴールドシップに女子力とは何かを自慢気に語っていた。

 

 アルの普段着がトレセン学園のジャージである事をよく理解しているゴールドシップはアルのしょうがっこうていがくねんじょしのような主張を優しく東から西へ受け流(馬耳東風)していたがこれは本筋とは関係がないので割愛しておく。

 

「だいたい、お前のかーちゃんに今更なに隠すってんだよ」

「それはほら。私はトレセン学園に入学してからは真面目に勉学とトレーニングに励んで、諸先輩方を尊び、後輩を能く可愛がって――」

「トレセンの生徒にちょっかいかけようとしてた近隣のやんちゃ坊主共ボコしてトレセンの制服を見かけるだけで震えて道を譲るように教育したり轢かれそうになった女の子を助けるために居眠り運転をしてたトラックを真正面から受け止めてぶん投げたり修学旅行だって東京に来てオラついてたばんえい学園の番長と河川敷でやりあってばんえいに来いってスカウト受けた話はお前のかーちゃんも知ってるし、隠すことなんてもうないんじゃねーのか?」

「なんて??????」

 

 一息に言い切ったゴールドシップの言葉に理解が及ばなかったのか。最近は仕事をしないことでトレセン学園内でも有名になってきた表情筋を働かせて口元に笑顔を浮かべ、アルは己の幼なじみに視線を向ける。

 

 そんなアルの笑顔に気を良くしたのか、ゴールドシップはにへへ、と満面の笑みを浮かべてアルの背後から離れゴソゴソと自身の机を弄ると新聞のような紙束を取り出し、ししゃもの油で汚れた手を軽く拭った後、それをアルの机の上に広げた。

 

 八王子新報と題打たれたそれに最初は怪訝そうに眉を潜めたアルも、チラと一面にデカデカと自身の写真が載っている事に気づいて「は?」と思考を停止し、その後に続く文字の内容に顎が外れたかのように口を大きく開いていく。

 

「……なぁにこれぇ」

「な、面白ぇだろこの新聞! アルの記事が載ってるときは売上が3倍になるらしいぜ! もう地元じゃ下手なアイドルより知名度あるんじゃねーか?」

 

 アル専用紙面とか赤く塗ってんのかな、3倍だし? と無邪気に語る幼なじみの言葉にアルが絞り出すように声を発すると、幼なじみは次々とクリアファイルを取り出しスクラップして保存していたのだろうバックナンバーをアルに見せる。

 

 その数およそクリアファイル3つ分。トレセン学園に入学して1年ほどと考えればなかなかの情報量である。それだけやらかしていたとも言えるが。

 

 固まった表情のままアルはそれらを読み進め、ほぼ全ての記事内容は正確で、アルにとって覚えの在ることばかりであることを確認し。

 

 ギギギ、と錆びついた機械を無理やり動かすかのような音を立てながら、視線を幼なじみへと向ける。

 

「これ……このきじ、だれがかいたか……しってりゅ?」

 

 明らかに詳しすぎるその内容。下手をすれば当事者であるアル本人よりも客観的な視点で描かれた詳細な記事の内容にフルフルと震えながらアルはある種の予感を感じながら幼なじみにそう訪ね――

 

「そりゃあもちろん、あたしだよ」

 

 親指を立ててそう答える幼なじみの姿に、アルは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 このときの、そしてこの後に起きた騒動についてアルはこう供述している。

 

 “このバ鹿だけはここで除かねばならぬ”――と。

 

 

 

 

「だからといって戦車でトレセン学園を走り回るなこのバ鹿ども!!!」

「へへっ、楽しかったなぁ!」

「チッウルセーナ反省してまーす」

「き、貴様ら……」

 

 二人を指差し、叱責するエアグルーヴの声がふるふると震え始める。あ、ガチで切れそうだ、と判断したのか、アルは苦笑を浮かべてエアグルーヴの隣に座る生徒会長――シンボリルドルフへと視線を向けた。

 

「しかし聞いてください会長。私はあくまで粗相をしでかしたゴールドシップめを追いかけ回していただけであり、戦車云々というのは本意ではありませんでした。恐らくアレは伝え聞く領域(ゾーン)という代物だと」

「ああ。騒動後、君が取り押さえられた際に戦車の姿が消えたことからもそれは理解しているよ」

「つまり私に責任がないという事は理解していただけていると」

領域(ゾーン)が現実世界に影響を及ぼすどころか物質的に存在した、というのは正直意味が分からないが、流石に廊下に無限軌道の後を刻んだり道中の柱を根こそぎ折っているのは流石に無責任とはいえんだろう」

「ですよね」

 

 【全部制御できない領域(ゾーン)が悪いんです】作戦が失敗したアルは押し黙った。ゴールドシップを追いかけ回す途中で「わー戦車だー!」とはしゃぐ後輩たちをその車体の上に乗せてバッチリ制御して走り回っていたので、領域(ゾーン)のせいにするのは無理筋ではあったのだが。

 

 こいつ悪いこと考えてんなぁ、という表情でアルを見つめるゴールドシップとこいつ悪いこと考えてるな、と呆れた様子でアルを見るエアグルーヴ、そしてどうすれば実家に連絡をいかせずにこの事態を乗り切れるかに頭脳をフル回転させるアル。

 

 3者3様の後輩たちの姿に苦笑を浮かべながら、シンボリルドルフは黙り込むアルに向かって口を開いた。

 

「状況が状況だし起きたことも古今東西聞いたことのない出来事だ。君にだけ全ての責任を押し付ける、というつもりは学園側にはないよサンデー」

 

 その言葉に3名の視線がシンボリルドルフに集中する。

 

 まぁ毎週月曜日になると鎧やパワードスーツを着けたアルがこれまでもゴールドシップを追いかけ回していたのだが、流石に今回のように物理的に戦車が走り回る事態が起きるなどとは誰も――アルも含めて予想していなかった。

 

 予想できないということは対策も出来ないという事。それに非常に特異とはいえ領域(ゾーン)を発現させたウマ娘に汚点を残すのも学園としては望ましくない。

 

 そこで、少しだけ間を開けた後。

 

 シンボリルドルフは自身の持つ権限を最大限“活用”する事を決め、自身を見つめる後輩たちに答えるように笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

「というわけでアルがうちのチーム所属になったから! よろしくな、トレーナー!」

「サンデー篠原です。プロレスを嗜んでます。体で負債を返すことになりましたがセクハラをしたら地獄を見せます。よろしく、沖野トレーナー」

「は?」

 

 急遽、という話で生徒会長室に呼び出された沖野トレーナーは、その場に居た自身の担当するウマ娘と彼女の幼なじみの言葉に目を点にしながらそう言葉を漏らした。

 

 

 

 

神は考えた

 

必ずやかの邪智暴虐なる悪魔をぎゃふんと言わせる世界をつくりあげると

 

神は考えた

 

であるならば神々の間で流行っているという他作品転生であれば鉄板であると

 

そして神はそれを行い、そして考えた

 

「やべぇ、転生させる作品間違えた」と

 




アルちゃん
先輩を敬ってる(事実)し後輩を可愛がってもいる(事実)
事実以外の部分をオブラートに包んで両親に報告していたが筒抜けだった事に今まで気づけなかった。激おこぷんぷん丸で幼なじみを追っかけたが結局轢けなかった

ゴールドシップ
幼なじみの行動を纏めるだけで面白かった。新聞に投稿したのは悪ノリだったが地元でアルちゃんが人気者になったのでまあいっか!と思っている
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