それはきっと章わけが追いついていないからかもしれませんね!
一日目:現状把握
目が覚めるとそこは知らない天井だった。
「…マスター、冗談を言うタイミングではないぞ。」
「ごめん、言いたくなって。」
そう苦笑する少女。
見た目は学園サイドにいるNPCアバターをそのまま使っている。
多分天の声の主が用意したものなのだろう。
流石にサーヴァントを少女化したからといってそのままマスターに転換できるわけではない。
多分、削除を逃れたが本戦へこまを進めなかったマスター候補者の外装だけを利用したのだろう。
正直英雄王がそのままの状態でこの状態になれば、漏れなくあの声の主は八つ裂きになっていただろう。
「まぁ冗談が言えるくらいには回復しているのなら、
私としても問題はない、本戦には間に合ったのだからな。」
「本戦?」
サーヴァントの言葉にきょとんと首をかしげるマスター。
どうやら英雄王――いや、王女?――の薬が強く、基礎知識まで欠落しているらしい。
この分では聖杯戦争など分かっていないだろう。
サーヴァントはため息をつくと説明をするために口を開いた。
「聖杯戦争の本戦の事だ。
さて、君は聖杯というものをご存知だろうか?
尊き者の血を受けたとされ、あらゆる願いを叶えると言われている杯の事だが…」
「聖杯…もしかして西欧の伝承とかアーサー王のお話なんかで登場するシンボル的な!」
「聖遺物だな。あぁ、君の推論は正しい、そのとおりだとも。
まぁ、真作の所在は定かではないんだがな…
世に出てくるものは贋作ばかり。そもそも真作が存在するのかさえ
眉唾物だ。」
「で、それと聖杯戦争とどういうつながりがあるの?」
目を輝かせて問いかけてくる目の前の少女。
これが本当に英雄王の少女時代だというのだろうか…
なんというか性格が違いすぎないか?
「落ち着きたまえ、マスター。
関連も何もそのままだとも。聖杯をめぐる戦争、実にそのままだ。」
「でも、さっき真作の行方は定かじゃないっていってなかったっけ?」
「あぁ、確かに言ったとも。だが、それは瑣末ごとなのだ。
それが願いを叶える願望機としての能力を持っていれば贋物であろうとも、聖杯足りうるんだよ。
この戦争はその聖杯を奪い合う殺し合いとでも覚えてもらった方が速い。
昔は地上でも魔術はあった、そしてそれを扱うものを魔術師《メイガス》と呼んでいた。
…だが、現在地上からは魔術が絶え、実質現存さえしていない時代で尚、
魔術師と呼ばれる最新の存在…それが君達魔術師《ウィザード》だ。
ここまでで質問は?」
「質問です!聖杯戦争は納得しましたが、殺し合いってなんで物騒な…」
「マスター、にやけながらする質問ではないぞ。」
どうやら少女は物騒といいながら笑っていたらしい
なんて怖い子なんだろう。
「さて、質問だったな。
答えは簡単だよ。お互いに譲れぬモノのために力を使う以上、
勝者と敗者がいるのは当然であり必然の事。
結果として死は避けられない運命でもある。」
「つまり…?」
「要約か?成る程、確かにそのほうが分かりやすいということか。
そうだな、この聖杯戦争の仕組みを簡単に説明すると、
選ばれた魔術師《ウィザード》はマスターとしてサーヴァント共に戦場へと向かって
敵対者と一騎打ちを行う。
敗者は所有する全ての令呪を失い、結果として命を落とす事となる。」
サーヴァントの言葉にふと少女は自身の左手の甲に視線をむけた。
そこには紋章にも似た模様が三つ、刻まれている。
「そしてその戦いを繰り返し、最後まで生き残ったモノが聖杯へと至る。
これがこの戦いの筋書きというものだ。
細かいルールも色々あるらしいが、更に簡潔に表すならば
勝利し続ければいい。それだけだとも。」
「(…それほど簡単な話じゃないんじゃ…)」
言い切った感がある自身のサーヴァントに若干苦笑しつつ
とりあえず理解したという返事を返しておく。
「…了解。理解が早くて助かるよ。
では、次だ。君はサーヴァントとは何か知っているかな?」
当然知らないとばかりにきょとんとする自身のマスターに
当然知らないだろうと理解しながら説明を始めるサーヴァント。
「元々はサーヴァントはこの聖杯戦争でマスターを勝利に導く為に呼び出された
過去の英雄だ。生前に名を馳せた英雄は後の世まで信仰され、神仏的な存在――
英霊となる。その姿を聖杯の力によって世界に再現した姿がサーヴァントなのだ。」
「つまりマスターにとってサーヴァントは剣であり盾ってこと?」
「概ねその通りだ。付け加えるのならば先導者でもある。
この聖杯戦争ではサーヴァントにも基礎とも言えるルールが存在し、
呼び出されたサーヴァントは7つの役割《クラス》に分けられる。
さて、マスター。ここで問題だ。
思いつくクラスは何かあるかな?」
「うーん、剣士とか魔術師とかゲームみたいな役職ってところかな?」
何故英雄王がゲームを知っているのか…
多分召喚時に聖杯から現代の知識を受けた後のマスター化だから
知っているのかもしれないが…それでもなんとなく不思議な感じである。
「簡単にいえば正解だ。
剣士の英霊――セイバー。
槍兵の英霊――ランサー。
弓兵の英霊――アーチャー。
騎兵の英霊――ライダー。
魔術師の英霊――キャスター。
狂戦士の英霊――バーサーカー。
暗殺者の英霊――アサシン。
――以上7つのクラスだ。
元より英霊など規格外の存在を形にする以上その処理は途方も無いものだ。
故にクラスに応じた形状で英霊を形にする。
簡単にいえばクラス名そのものこそ、相手の特性と考えても問題は無い。」
そこまでいった所で突然マスターの少女から質問が飛んできた。
「なら、貴女はなんのサーヴァントなの?」
と。
それに苦笑しながらサーヴァントは返答した。
「では君は私が何のサーヴァントだと思う?」
さてはこのサーヴァント、性格が悪いなっ!
とか思ったマスターは悪くない。
自分のことを完全に棚にあげているけども悪くないはず…
とか思いつつも自身の推論を述べあげる。
「うーん、そうだなぁ…装備が軽装だから一騎打ちのような騎士道みたいな方向性ではなさそうだから
セイバーではないね。ついでに狂っているようにも見えないからバーサーカーも論外。
…現状ではこの程度かな。
予測だとアーチャーかアサシンかなって思うんだけど。」
「中々の推論だが…大はずれだよマスター」
といい笑顔で返答してきた。やはり性格は悪い。
ちょっと怒り顔でマスターの少女は自身のサーヴァントへ返答する。
「だったらキャスター?ライダー?ランサー?
正直貴女については性別が私と一緒である事以外は見た目以上の情報はないんだから
仕方ないじゃない。」
その瞬間、サーヴァントが崩れ落ちた。
・・・なんぞ?
「悪い、確かにその通りだマスター。
笑った事を謝罪しよう。」
「え、え、そこまでしなくても…「その代わり、覚えてほしい事がある」…?」
突然の謝罪にテンパるマスターだが、サーヴァントからの言葉に首をかしげた。
「容姿はある程度あきらめているが私は男性だ。
クラスはバーサーカーだ。よろしく頼む、マスター。」
「えぇ!?男の人ッ!?」
「驚くところはそっちなのかッ!?」
まさかの言葉に驚愕の表情になるマスター。
しかしサーヴァント的にはクラスのほうに驚いてほしかったのだろう。
予想がはずれ、ツッコミを入れてしまうほどには…彼もまた驚いたのだろう。
楽しんでもらえれば何よりです。
次話もお楽しみにッ!