半純血教師録スネイプ   作:三柱 努

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賢者の石 第1.2話

闇の帝王ヴォルデモート。

リリーポッターの愛「守りの魔法」により肉体を失い、アルバニアに潜伏。

そして10年後。この1991年の夏、ある青年と出会った。

 

クィリナス・クィレル。現・ホグワーツ魔法魔術学校、マグル学担任。

その体に憑依し、肉体の復活のため『賢者の石』を狙うことに。

 

 

『何なんだこいつは?』

ヴォルデモートは頭を悩ませていた。

クィレルの頭に憑依していることは何ら関係ない。

そうではなく、その行動に頭を抱えていた。

 

パブ「漏れ鍋」。

非魔法界のロンドンと魔法界『ダイアゴン横丁』を繋ぐ人気のパブ。

この日、クィレルはグリンゴッツ銀行に潜入し、賢者の石を盗み出す任務を命じられていた。

 

そのために漏れ鍋に寄るのはわかる。

『だが、よりにもよって・・・ハリーに接近するか!? こいつ・・・』

 

偶然の遭遇。

この日はホグワーツの番人ルビウス・ハグリッドによってハリー・ポッターが魔法界に初めて足を踏み入れていた。

そんな場面に遭遇したクィレルは、何を思ったか自らハリーに挨拶したのだ。

『なっ!?』

 

「ハリー。クィレル先生だ。闇の魔術に対する防衛術を教えとる」

「あ、あの。よろしく」

「何とも恐ろしい科目だよ。キミには必要ないかもしれんが」

 

二言三言、挨拶程度に交わしただけであるが、間接的に闇の帝王を天敵と接触させる大胆不敵。

「何をやっているのだクィリナス」

「ん? ああ、これは別に・・・

挨拶しただけですよ」

 

 

ざわ・・・ざわざわ・・・・

ヴォルデモートに走る一縷の悪寒。

何かが異常。いや、何かが平常すぎるクィレルの行動。

 

闇の帝王。その名に恥じぬ力を持っていたヴォルデモート。力と恐怖で全てを支配していた自負がある。

その力は味方すらも恐れさせていた。

側近であったルシウス・マルフォイですら、畏れ多くヴォルデモートに接した。

 

が・・・このクィレル。全くの平常心。

この調子近距離に闇の帝王を控えさせておきながら、なんという平常心! 鉄の心臓! ハードフルハート!

 

ヴォルデモートの予定としては今日。賢者の石を手に入れ、この憑依状態からおさらば。

 

だが予感があった。

 

もし万が一・・・この状態をキープする羽目になったとしても・・・

 

クィレルなら耐える!

下手したら1年くらいのスパンで・・・

 

自分でもパワハラの権化とも言えるヴォルデモートフュージョンライフを・・

 

この男なら、やりかねない。

 

 

 

 

「ところで我が君。お腹、空きませんか?」

よもやの食事のお誘い。このヴォルデモートに。このタイミングで。

大胆というか何と言うか。

「あ? そ、そうだな。こうして人里に出て食事するのも何年振りか。せっかくだ、何か高いものでも注文するか」

「へたっぴ」

 

『あ?』

ヴォルデモートはあまりの返しに言葉を失った。

へたっぴ? この闇の帝王に対して?

次の言葉次第では、その口ねじ切ってやろうか?と、ヴォルデモートは思った。

 

「せっかくだからと高いものを頼むのは典型的ミステイク。今、我が君は見失っておられる。町に出た興奮で本当に食べるべきものを」

 

そう言うとクィレルは、宿泊先の部屋に移動した。

部屋のテーブルの上には何か大きな器が乗せられていた。

クィレルはこれ見よがしに後ろを向いて、ヴォルデモートにその“何か”と対面させた。

 

「これは・・・何だ?」

ヴォルデモートは心のどこかで安心していた。

このクィレルからは何か得体の知れないモノが飛び出してくる気配すらあった。

 

が、目の前に現れたのは何の変哲もない料理。

焼き目の香ばしい、パン? いや、薄く伸ばした生地で何かを包んだような料理のように見える。

パン生地は何か魚を形どり、その周りにオリーブらしき実が数個。

 

 

「コーンウォール州の名物。ニシンのパイです。宅急便で取り寄せました」

 

サプライズ。平和なサプライズ。

だがさっきの無礼な返しを、ヴォルデモートは許していない。

 

「我が君のお口に合えばいいのですが」

そう言ってクィレルはヴォルデモートの口にパイを届けた。

 

「・・・うむ。美味い」

意外。想像していたよりも引いていくヴォルデモートの怒り。

 

ヴォルデモートが潜伏していた森では当然、食べられるものは基本、優しさや愛情ゼロのエサのような物ばかり。栄養価も最低限。

そんな無感動の食生活に、舞い降りるこの家庭料理。体に補充される海のミネラル。

 

 

そんなの、沁みぬはずがないのだ。

 

 

「ホッとする味だな」

「そうでしょう?

このパイ。製法に一切の魔法も使用されていない手作り100%

しかも焼き方も火の魔法ではなく、昔ながらの窯でじっくり。遠赤外線で中までしっとり。

薪も割りたての新鮮なものを使っているから、炭の匂いも鼻につかない。

美味いに決まっている。不味いわけがないのです」

 

 

このクィレルの想定外の心配りに、溶ける。ヴォルデモートの氷の心!

 

「なるほど。クィリナス、素晴らしいではないか」

「お褒めの御言葉。光栄至極に存じます」

 

ヴォルデモート。ニシンのパイをじっくりと堪能し、無事完食!

大満足で満たされた腹。

 

今の気分。闇の陣営ナンバー2にクィレルを推薦確定!

 

 

 

 

 

 

 

そして同時刻・・・ハグリッド

 

グリンゴッツから賢者の石、回収完了!

 

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