スリザリンの後継者、トム・リドル。若かりし日のヴォルデモートの残影による『秘密の部屋』連続襲撃事件はハリーの活躍によって幕を閉じた。
しかしその活躍には喜ばしい弊害もあった。
闇の魔術に対する防衛術担任、ギルデロイ・ロックハート。記憶喪失。
忘却術を自分にかけてしまうおっちょこちょいのため。
『となれば・・・おのずと・・・』
スネイプはほくそ笑んでいた。今年も穴が開いた闇の魔術に対する防衛術担任。
今度こそスネイプが就任し、ハリーに堂々と防衛術を教えたい。スネイプ流の防衛術がハリーの命を救うという展開を作りたい。
そして開催。ホグワーツ職員会議。
「皆の者、分かっておると思うが・・・」
ダンブルドア校長の一声にピリリと引き締まる会議室の空気。
スネイプも分かっていた。
補充要員の話であると。人員の抜けた科目の穴埋めの話であると。
「シルバヌス・ケトルバーンが魔法生物飼育学の職を降りることとなった」
「手足がまだあるうちに余生を楽しみたい」
片腕と片足の無いおじいちゃん魔法使いが立ち上がると、スネイプは心の中でずっこけた。
たしかに聞いていた。ケトルバーンから。引退宣言。
「ここからが重要な話じゃ」
ダンブルドアの言葉にスネイプは再び姿勢を正した。
「ケトルバーンには退職祝いに、木製の義足をプレゼントしたい。ドラゴンの聖地訪問のために使ってくれ」
「おお、ありがたい」
義足の贈呈にスネイプは心の中でずっこけた。
粋な計らい。それ自体は素晴らしいことだ。
拍手を送る教師陣にスネイプも混ざった。
そんな中、ひときわ大きな拍手を送る巨大な男が口を開いた。
「ところでダンブルドア先生。ケトルバーン先生の後任の魔法生物飼育学の担任は誰になるんですかい? もしよければ俺がやってみたいんですが」
瞬間。ダンブルドアの「あ・・・?」にスネイプは戦慄。
『ば・・・馬鹿! こんなタイミングで』
退任祝いのムードの中にぶっこんできた。ハグリッドマイペース。
嵐しか予感できないバッドタイミング。
が・・・
「そうじゃな。ハグリッドよ、やってみんか?」
「本当ですかダンブルドア先生!」
あっさり承認。任命、新・魔法生物学担任ハグリッド先生!
『なっ!!!』
教師陣の祝福の拍手が今度はハグリッドに向けられる中、スネイプは驚愕するしかない。
『この男は・・・何故だ。何故こうも』
ルビウス・ハグリッド。ホグワーツの鍵と森の番人。
ダンブルドアに忠誠を誓い、その付き合いもホグワーツ職員の中で最古参。ダンブルドアからの信頼も厚い。
が、謎。ダンブルドアからの信頼の厚さが謎。
魔法生物。特に危険な魔法生物への傾倒が強い。強すぎる。そしてルールを軽視する。
つい2年前にもドラゴンの卵目当てに、クィレルに最重要気密を漏らしてしまうという大失態をやらかしたばかり。
口が滑る。
今回のように他の教師が言いにくいことをさらっと言ってのける。
だがダンブルドアに気に入られる。
『こいつは12年前。ヴォルデモート襲撃から生き残ったハリーを連れ帰る大役まで私から奪ったくせに・・・
こともあろうに裏切り者のシリウス・ブラックからバイクを拝借して、それに乗って帰ってきたというではないか。
追跡し放題。爆破し放題。ハリーを危険に曝す危険行為。
ピーター・ペティグリューの活躍が無ければ・・・今頃ハリーがどうなっていたことか。
なのに・・・何故、突っ走れる。踏まない。
校長の地雷原を
平気な顔で』
スネイプがどれだけ頑張ろうと得られない校長からの厚遇を、ハグリッドはあっさりと手に入れてしまう。
その事実。スネイプは歯噛みした。
悔しい・・・
悔しい・・・
悔しい・・・
だが、そこに容赦ない追い打ち。
来年の闇の魔術に対する防衛術担任
ジェームズ・ポッターの親友、リーマス・ルーピンに決定!
『な・・・何故だ・・・吾輩は地雷を踏んですらいないのに』