俺だ、遊仁だ。
彼女達とバーテックスとの戦いが始まってからもう一ヶ月半。早いものだ。と言っても前回から一ヶ月位戦ってなかったけどね。
今何してるかっていうと、例の通りバーテックス退治だ。だが今回は少し待機してるぞ。
バーテックスの数は全部で12体程らしい。12・・・アニメワンクールぐらいの数だ。
んでその一ヶ月何をしていたのかっていうとストーキングと盗撮は勿論、ユニコーンの操縦訓練をしていた。
大赦のVRは凄いぞ、マトリックスみたいな気分になる。呼吸から汗、匂いまで。全てが現実に感じる。このレベルでゲーム出されたら大ヒット間違いなしだな。
その甲斐あってか操縦はもうぎこちなさは無くなって来た。最初はコケたりとかもあったけど、一ヶ月もすれば慣れるものだ。今じゃ体の一部みたいなもんに感じてくる。
Vガンだったかな、あっただろう。マシンの装甲を通して感じるとか何とかって言うセリフ。あれは良く言い表していたな。
それともう一つ、新たな出会いがあった。
「相変わらずしけた顔してるわね、早くしないと置いてくわよ!」
行ったら直ぐ終わるって分かってるだろ。
俺は適当に返事を返す事にした。
「先に行っといてくれ。何かあったらこっちで何とかする」
すると彼女はプイッとそっぽ向いてあっと言う間にバーテックスの方へ向かっていった。
そう、彼女が俺が新しく会った相手、三好夏凛だ。
アイツはプライドが高い癖に優しい性格してるからな、いわゆるツンデレ。俺の趣味ではないが良い性格してるよ。
別に俺に言わなくても先に行ってれば良いのに誘って来たって事はそういう事だ。
何でも彼女は勇者部と違って小さい頃から訓練を受けて来たらしくてな、前回の戦いから少しして大赦繋がりで一緒に訓練してたから分かる。
お、ちょうど良いな。見えるか?
ユニコーンのカメラ倍率を調節し、バーテックスの方へ目を凝らすと、夏凛が手際良く処理していた。
上からの急襲、隙を生じさせぬ二段構え。流れるような封印からの一閃。やっぱ煮干し食ってる奴は違うな。
こりゃ俺の出番は当分無さそうで何よりだ。
・・・どっかで見たことある展開だな。夏凛がこっちの中学に転校して来た事に俺は頭を抱えていた。
ほら見ろ、あれは何か隠してる態度だぞ。俺は詳しいんだ。何かこういうのって気まずいよなぁ、どう接したら良いかわからんし。まぁ無視しようそうしよう。
考えを放棄した俺は、窓の外の平和な空を見る事にした。
ふむ、夏凛がこっちに来たって事は勇者部に入るんだろうか?その方が都合は良いと思うが。まぁ多分部室で説明とかしてるだろうし、いつも通りに覗くとするか。
そーっとだぞ、そーっとドアを開けるんだ。音を立てたら死ぬ。
片手に全神経を集中し、ドアがガタつかない事を祈って慎重に開ける。
中の様子はと言うと、ずいぶん楽しそうだぞ。牛鬼が夏凛の精霊に噛み付いたり、タロット占いで夏凛に死のカードが出たり。最初はプライドが邪魔するだろうけど慣れれば仲良くやってけるだろ。
あ、うどん屋に誘われてる。いいなぁ、誘われてみてぇけどなぁ俺もなぁ。
え、断っちゃうの⁉︎うどんはいいぞ、女子力が上がる。
マズイ、夏凛が不機嫌そうな顔でこっち来たぞ。何か隠れるもの隠れるもの・・・。
ドアを閉め、部室を後にしようとする夏凛。だが廊下に不自然なダンボールが落ちているのをみて察した。
「いつから?」
「・・・牛鬼が噛み付いた所から」
ダンボールの中に誰が居るかは分かってる。あのストーカーだ。
「呆れた。学校でもいつもこうなの?」
「勿論です。プロですから」
大赦でも彼はそうだった。隙あらばすぐに写真を撮るし、背後について来ていたりする。大赦のフォローが無ければ御用だ。その癖してユニコーンを扱えるんだから少し嫉妬してしまう。
「うどんを断るのは勝手だが、多分君は驚く事になるぞ」
目の前の犯罪者の言ってる意味が分からない。私は首を傾げた。私にとって学校も彼女達も大した事は無い。危機能力もないそんな奴らの何に驚くと言うのか。
「まぁ、そこら辺は君の問題だ。それよりコイツをやろう」
そう言うと彼は被ったダンボールを少し持ち上げ何かが入ったレジ袋を差し出して来た。
恐る恐る中を見てみると、プリンと煮干しだった。
「それじゃまた明日な」
彼はダンボールを被ったままそそくさと行ってしまった。アイツはイマイチよく分からない奴だ。同じく両親がいない身だから気にかけてくれているのだろうか。
今は行方不明の兄の事を思い出す。何処か面影はあるがやはり違う。あの完璧超人とは似ても似つかないだろう。
まぁ帰ったら食べるとしよう。人からの贈り物はちゃんと受け取らねば。人としてのお役目だ。
今日の食事はプリンもカロリー計算に加えようと考えながら、三好夏凛は部室を後にした。