RE:MEMBERS   作:クソザコぎつね

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誇り 胸に抱いて

俺だ、遊仁だ。

今何処かって?夏凛の家さ。ああ待って!殴らないで!待て、話せば分かる!

いやそれがね、色々あって今度の日曜日に夏凛も入れて子供会のレクリエーションをするらしくてな。

内容としてはドッヂボールだったり、お絵かきだったり色々あるんだけど。一つ問題があって。

夏凛は折り紙が出来ないんだ。なんでも小さい頃にやらなかったらしいから、今こうして家にお邪魔して教えてるって訳さ。

まぁ学校帰りだから、今は外が夜なんすよね。泊まらせてくれねぇかな。試しに台所で皿洗いしてる夏凛に聞いてみよう。

 

「泊まっていい?」

 

「駄目」

 

泣けるぜ。それはそうと早速一つ出来たぞ。我ながら素晴らしい完成度だ。夏凛にも見せるとしよう。

 

「見て見て夏凛。青眼の白龍」

 

「邪魔しないで頂戴」

 

世間はさ、つめてぇわ。大人しく皿洗いが終わるまで待つとしますかね。

 

 

 

10分後

 

若干目をしょぼしょぼさせながら、テーブルの向こうで一生懸命に鶴を折っている夏凛に聞いてみた。

 

「今日の大赦への経過報告。何て書いた?」

 

「見たほうが早いわよ」

 

そう言って彼女は大赦へのメールを表示させたスマホを渡して来た。ふむふむ。あまりの頼りなさに今日まで無事だった事が奇跡に思える、ねぇ。

 

「真面目だねぇ」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ。そう言うアンタはどうなの?」

 

「見たい?」

 

「やっぱ良いわ」

 

俺のスマホを夏凛にシュゥゥゥーーーッ!超エキサイティン!。やっぱ一流だよなぁ三好さんは。スマホをいきなり投げつけてもキャッチしてくれる。

 

「危ないじゃない!」

 

「悪い悪い、次からはやらないよ」

 

「昨日もそれ言ったわよね。内容は・・・何これ?」

 

「俺が真面目に書くとでも?」

 

俺が大赦に送りつけたのは、勿論今日のストーキングの成果と写真だ。経過報告としては素晴らしいだろう。大赦の嬉しい悲鳴が聞こえてくるぜ。

 

「だとしてもアウトよアウト。アンタがストーカーなのは重々承知だけど、流石にこれは無いわ」

 

「今更だな、俺はこれを一ヶ月続けた。そして引かれた」

 

「誇れないわよ」

 

だが俺のストーカーとしての性が、これを送らなくてはいけないと叫んでいるのだ。仕方がないだろう。

それよりもだ。

 

「君自身は、どう思ってるんだ?」

 

その言葉に一瞬折り紙を折る手が止まる。

 

「・・・報告の通りよ」

 

それに俺は返事を返さなかった。俺が何か言ったりしなくても何とかなるだろう。

これはそう言うものだ、俺は傍観者の方が性に合っているんだ。ただこれは興味で聞いただけ、他意は無い。

俺は彼女が鶴を折るのに苦戦している間、次のストーキング案を考える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺だ、遊仁だ。彼女はレクリエーションに来なかった。

彼女の事だから、原因は限られる。俺の考えだと、集合場所を間違えてそのまま帰ってしまったんだろう。彼女は時間厳守だし、行く気もあったからな。

勇者部の様子を見ながら俺も待ってたんだけどな。気まずかったんだろうか、電話しても繋がらなかったから多分電源を切っておいたんだと思う。

んで今荷物片手に彼女を探してる所だ。なに、ちょっと渡したい物があってな。

彼女がいつもトレーニングしてる砂浜に行くと、人影がぽつんと揺らめいてるのが分かる。

くねくねじゃなく、あれは夏凛だろうな。双眼鏡で覗くと、二刀流で演舞じみた動きをしてるのが見えた。

見つけたなら話は早い。後はこの荷物渡して戻るだけだ。

 

「こんな所で何やってるんだ?」

 

「見て分からない?訓練よ」

 

「それは分かるが・・・まぁいい。これを渡しに来た」

 

俺はずいっと腕を伸ばして紙の箱を渡した。夏凛は不思議そうに受け取る。

 

「何よこれ、秘蔵の写真か何か?」

 

「見てからのお楽しみだ。じゃあな」

 

あえて言わないでおこう、勇者部の人達が後は上手く纏めてくれる筈だ。彼女にとって今日は二重で大切な日になりそうだな。

如月遊仁はクールに去るぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

日もすっかり沈み一日のスケジュールが滞りなく終了した頃三好夏凛は部屋で一人マシーンでランニングをしていた。

そこへインターホンが鳴らされた。しかも一回ではなく連続だ。イタズラだろうか、念の為木刀を持って出迎える事にする。

 

「誰よ!」

 

勢いよくドアを開けながら言うと、対面の相手は驚いてしまっていた。だが我が家に来たのは勇者部の面々だった。予想外の事だ。

 

「あれ?アンタ達・・・」

 

「アンタねぇ、何度も電話したのに何で電源オフにしてるのよ」

 

「そ、そんな事より何!」

 

思わず声を張り上げてしまった。少し気まずい。

 

「何じゃないわよ、心配になって見に来たの」

 

私は目を逸らしてしまった。彼女達が心配して来たと言うのが少し信じられなかった。

 

「よかった。寝込んだりしてたんじゃないんだね」

 

返す言葉が見当たらない。

 

「んじゃ、上がらしてもらうわねー」

 

「ちょっと⁉︎何勝手に上がってんのよ。意味わかんない!」

 

「殺風景な部屋ね・・・」

 

勝手に入って来てそんな感想は無いだろう。

 

「どうだって良いでしょ⁉︎」

 

「ま良いわー。ほら座って座って?」

 

仮にも人の部屋だぞ。お菓子やジュースをテーブルに広げながら言わないでもらいたい。ここは私の家なのだから。

 

「いきなり来て何なのよ!」

 

「あのね、ハッピーバースデー!夏凛ちゃん」

 

そう言って友奈が取り出した箱の中に入っていたのは、イチゴのショートケーキだった。

 

「夏凛ちゃんお誕生日おめでとう!」

 

「おめでとう」

 

おかしい、彼女達には伝えてなかった筈だぞ。しかも今日が誕生日だなんて。

 

「どうして?」

 

「アンタ今日が誕生日でしょ?ちゃんと、ここに書いてあるじゃ無い」

 

風が私の前に突き出したのはこの前書いた入部届だった。そこにはしっかりと直筆で私の誕生日が書かれている。

 

「えへへ、誕生日会しないとなって思っちゃった」

 

「歓迎会も一緒に出来るねって」

 

「本当は児童館で子供達と一緒にやろうと思ってたんですけど」

 

「でも当のあんたが来ないんだもの。焦るじゃない」

 

誕生日、か。少し驚いて私は瞼をぱちくりさせた。兄が居なくなってから、誕生日なんて物は忘れてしまっていた。しかも彼女達がそんな大掛かりな事をしようとしていただなんて。

なんて呑気なんだろう。

いつ敵が来るかも分からないのに、こんな事を出来ると言うのは彼女達だからこそなのだろう。遊仁が言っていた驚く事と言うのはこの事なのだろうか?

だとしたら、彼は嘘をつかなかった。現に今驚いている。私には無かった、そんな呑気でいられる気持ちは。

これが良いんだろうか、私には少し分からなくなってしまった。でも、今だけは、この時間に、優しさに甘えるとしよう。

一日ぐらいなら、いいでしょ?

 

顔を少し赤らめながら、三好夏凛は暖かい空間へと腰を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば遊仁が何か渡していたな。皆んなが帰った後気になった私は早速小さな紙の箱を開ける事にした。

 

「コイン?」

 

中に入っていたのは、見たこともないコインだった。日本製のものではないのは確かだ。

表であろう面には一角獣が掘られている。裏を目をやると、人だろうか?輪郭は分かるが、顔は擦れていて見えなくなっている。

後は、誕生日おめでとうと書かれた紙が一枚だ。

ふむ、訳が分からない。素直に嬉しいが、何故これを渡したのかが気になってしまう。

不思議だ。

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