異界戦線   作:D.D.D_Official

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プロローグ

『司令部よりブラッドハント部隊へ伝令。貴官の進行方向に複数の魔装反応あり。直ちに貴官らの部隊で遅滞戦闘を開始せよ』

 

あぁ、糞。なんだって俺がこんな事をしなくちゃいけないんだ。

 

「こちらブラッドハント01。承服できない!彼我の戦力差は段違いだ!即時撤退を要求する!」

 

隊長殿の荒れ振りから、今日も今日とて司令部の糞どもは俺達をこき使うつもりらしい。ふざけるな。俺達は三個中隊だ。敵は連隊規模。三分でも保てば充分だろう。だが、たった三分の為だけに命を捨てろと?冗談じゃない。

 

『残念だが、承認出来ない。六◯◯後に増援が到着する。何とか耐えて欲しい。幸運を祈る』

 

「〜っ!了解ッ!精々足掻いて見せよう!総員、遅滞戦闘用意!生きて祖国へ帰るぞ!」

 

「「「了解っ!」」」

 

どうやら、俺達は家に帰れそうにも無いらしい。

俺は魔装に刻まれた遠距離狙撃術式を起動し、敵方を見やる。直後、見なければ良かったと後悔した。何が連隊規模だ。あれは三連隊はいるぞ。

 

「ブラッドハント06、敵を目視!敵機凡そ三連隊規模!彼我の戦力差では六◯も持ちません!」

 

慌てて報告するも、しなければ良かったと思う。今の報告で仲間達の士気は駄々下がりだ。

 

「了解だ、こうなれば…簡易焼却術式起動を起動し、敵から酸素を奪ってやれ!」

 

「「「了解」」」

 

一斉に簡易焼却術式を放つ。戦時陸戦規定ギリギリの所業だが、生き残る為だ。仕方ない。

 

目視で40程は落としただろうか。被害に気づいた敵方が散開する。マズイな、散開されたら対応に手間取る。

 

「ブラッドハント部隊、総員散開しつつ単騎で敵中隊を落とせ!無茶だとはわかっているが、やるしかないのだ!祖国の為に忠義を成せ!行くぞ!」

 

隊長殿はそういうとさっさと行ってしまった。ぼちぼち俺も行くとしよう。はぁ、帰りたい。

 

そう思い俺は突貫した。

 

 

トースオリア帝国北方第三魔装部隊

 

「敵機散開!いや、単騎でこちらに突っ込んできます!」

「何ィ!?馬鹿か敵は!?彼我の戦力差すら分からないのか!」

「この魔導反応…これは〈名付き〉部隊です!」

「何だと!?帝政共和国の〈名付き〉といえば…ブラッドハント部隊か!総員、全力で迎撃せよ!」

「「「了解」」」

 

複数の魔装中隊による迎撃が始まる。吶喊してくる帝政共和国人では珍しい黒髪の兵士を撃ち落とさんと魔弾の雨が襲う。

だが、その兵士は巧みに飛行術式を操り、難なく弾を避ける。

 

「くそっ!当らん!流石は〈名付き〉と言った所か!」

「埒が開かない!オレが前に出るッ!死ね、野蛮人っ!ぐあっ!」

 

突撃した魔装士が敵のサーベルで斬り落とされる。

 

「何なんだアイツは!銃を殆ど用いず戦う…まさか!【首刈修羅】か!まずいっ!」

 

黒髪の兵士の正体に気づいた兵士だったが、時既に遅く。次の瞬間には首と胴とが別れていた。

 

「ベルニッツ!おのれえええ!!!」

「よせ、ハインツ!行くな!」

「死ねえええ!!!」

 

仲間が殺され憤った年若い兵士が突撃していく。だが、瞬きした後にはその兵士の首は無かった。

 

「近接戦はダメだ!距離を取れ!」

「ダメです、早過ぎ…ぐあっ!」

「くそっ!何なんだ一体!喰らえ、爆炎術式…ぎゃっ!」

 

次々と殲滅されていく様を見た隊長は慌てて撤退を始める。だが、首刈修羅はその隙を見逃さない。

 

「見つけた…ハァ…俺は、祖国に帰るんだ…死ね…」

「首刈修羅ぁぁぁぁ!!!!」

 

隊長が叫びながら魔剣を起動し立ち向かう。一合、二合と剣を打ち合い首刈修羅は目を見開く。

 

「ここまで対応できた奴は…お前が初めてだ!」

「はっ!首刈修羅に褒められたとなれば、私もまだ捨てたものでは無いなッ!」

 

鍔迫り合い、至近距離で敵を認めあう。そう、それはまるで騎士の決闘のようで---

だが、これは近代戦争だ。戦士の誇りなど何処にも在りはしない。当然、決闘には邪魔が入る。

 

「ロンメル隊長ッ!援護します!死ね、修羅ぁ!魔装完全解放、喰らえ、『十三の牙』!」

「ッ!」

 

完全解放した魔装術をモロに喰らった首刈修羅は咄嗟に防殻術式と回復術式を起動する。

 

「好機!その命、貰っていくぞ!修羅ぁぁぁぁ!!!」

「俺はっ…死なない!」

 

互いに魔装を完全解放する。

 

「魔装完全解放、堕ちろ!『幾多もの極光』!」

「魔装完全解放…死せ、『無明なる刃』!」

 

光と闇がぶつかり合う。衝撃が辺りを包み込む。

爆風が巻き起こり周囲の兵士達を軒並み吹き飛ばす。煙が晴れ、状況が明らかになる。勝ったのは、光だった。墜落していく首刈修羅。ロンメル隊長の元には勝者の栄光が差していた。

 

「ロンメル隊長!よくぞご無事で!…そうだ、墜落した首刈修羅に止めを刺されますか?」

「良い。『幾多もの極光』を喰らって生きていられる人間など、そうそうおらんからな」

「左様ですか。ロンメル隊長、ここは一旦我等だけでも退きましょう。あの悪名高い首刈修羅を落としたのです。帰っても文句は言われないでしょう」

「そうだな、それに…我々の部隊は全滅だ。帰投する!生きている者は即刻国へ帰るぞ!」

「「「了解!」」」

 

 

 

あぁ、痛え。あんなモン、人に向けて撃つモンじゃねえな…なんで、俺、こんな所で戦争なんかしてるんだ…

 

帰りてえ、帰りてえよお…

 

なんで、こうなったんだっ…け…

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