人助けなんて性に合わない 作:ナンセンス
「どこへ行く気だ?」
「自宅です」
放課後、ショートホームルームを爆睡して過ごし、ほとんど生徒のいなくなった教室から帰ろうとした三五月は、平塚先生に呼び止められる。
「たった今、比企谷を奉仕部に送っていった後なんだが、今度は君か......部活動に参加するようにと言っただろう。送迎が必要な幼稚園児かね?君たちは」
「入部を強制されはしましたが、参加を強制された覚えはありませんね」
「また屁理屈を......」
「まぁ、折角入部したので、気が向いたら参加しますよ」
「今すぐに向かえ、馬鹿者」
「今ネーター環の話がいいところまで進んでいるので、今日は無理ですね」
「内申点がどうなっても知らんぞ?」
「大学は一般受験の予定なので問題ありません。合否判定ギリギリなんて無様な受かり方をするつもりも毛頭ないので」
「どうやらお前も力づくで連れていくしかなさそうだな」
「すぐに実力行使という選択肢をとるとは。教師というのは野蛮人でなければ務まらない職業なんですか?」
「フンッ!」
ゴッと鈍い音が鳴った。胴体を狙った平塚先生の拳と、ガードに動いた三五月の腕がぶつかった音だ。
「いっったいなぁ......未来の商売道具である腕が使い物にならなくなったら責任とれるんですか?」
「防御しなければいいだろう」
「んな無茶苦茶な......」
三五月は腕をとられて連行される。
「ほら、さっさといくぞ」
「はいはい」
「“はい”は1回でいい」
「同意を表す返事には変わりないわけですから、2回言っても問題ないでしょう。英語でいうokie-dokieみたいなものですよ」
「お得意の屁理屈か?君たちは本当に似ているな」
「それは先生が人格の表層しか見ていないからそう思うんでしょうね。僕と彼は何かが根本的に違っている」
「ほう。“何か”か。君は理屈屋だと思っていたが?」
「数学には直感と論理の両方の力が必要です」
「ふむ。ではいくつか質問をしてみよう。マンガやアニメは好きか?」
「特に好きではないですね」
「それはなぜだ?」
「時間が無為に奪われる感覚がするので。あ、マンガアニメ一般が好きじゃないってだけで、好きな作品自体は存在しますよ」
「例えば?」
「某名探偵や忍者はマンガとアニメの両方で幼少期から親しんでいます。あとは電脳○イルとかですかね」
「またニッチなアニメを......」
「いやいやいや、N○K作品ですよあれ。ニッチ呼ばわりは良くないでしょう」
「まぁ、いいか。次の質問だ。一般文芸は好きか?」
「いいえ。面白いと思ったためしがないので。数学書読んでた方がマシです」
「ライトノベルは?」
「読んだことないですね。そもそもあんまり本が好きじゃないので」
「音楽はどうだ?」
「B○○Pと、米○玄○。それ以外はあまり聴きません」
「ちなみに、人気になったコンテンツについて“売れる前の方が好きだった”と思ったことは?」
「一度好きになったコンテンツの過去は調べ尽くすタイプですが、あんまり過去と今の優劣をつける気にはなれないですね。そもそも明らかに駄作になったと感じたらすぐに離れて記憶から消去するので、そう思ったことがあったとしても覚えていないと思います」
「......何と言うべきか、どれも反応に困る回答だな」
「聞いておいてそれはないでしょう」
「君はあれだな。捻くれている以前に、頑固な人間だ。流行を気にしないが、マイナーかどうかも気にしない。もっと言えば、他人が視界に入っていない」
「あぁ、僕肉食動物なので、草食動物と違って接敵に気付く必要がないんですよね」
「それはふざけて言っているのか?それとも何かの喩えか?」
「ご想像にお任せします。って危なっ!」
またもや鈍い音が響く。
「ふざけて言っていると解釈した。私の想像に任せたお前の負けだ」
「流石に痣までできたら訴えますからね......」
「着いたぞ。私は職員室に戻るが、今度からは自発的に部室に行き、ちゃんと参加しろ。さもなくば、3年で卒業出来ないと思え」
「高認って知ってますか?」
「じゃあなぜ君は高校に来た?」
「高1のときの授業の単位を使うと、試験がほぼ免除になるんですよ。それに、どうせ18歳になるまでは大学に行けないので、残りの2年は暇潰しですね」