美少女九尾に喰われたと思ったら生きてて結婚することになった話   作:佐藤サイトウ

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絶対にほのぼのさせる系男子


十話 十把一絡げ

入ってみると、沢山の本が並んでいた。図書館のようなものなのだろうか。

広い空間だというのに関わらず、中には誰もおらず、僕と狐の足音のみが木霊する。

「すっご。こんな大きな図書館初めてきたぜ」

「何やら楽しそうじゃの。本が好きなのか?」

興奮気味にあたりを見渡す。

「大好きだぜ。己の無知を痛感させてくれるからな」

「変わった理由じゃのう。まあ好きならよい。しばしここで待っておれ。店主に話があるのでの」

「了解だ」

「おっと、忘れておった」

振り返り僕に一言

「ここから離れるなよ」

そう言い残し図書館の奥に消えていく。

とりあえず近場の椅子に座る。座って本を読む空間があるということはここが図書館であるという事で間違いが無いだろう。

「つまり、ここらにある本は読んでいいって事だ」

一応仕事中ではあるらしいが、少し本を手に取るぐらいは構わないだろう。

「さーって何読もうかなぁ」

と、近場の本を手に取ろうとした時、ふとあることに気がつく。

「よ、よめねぇ・・・・」

表紙に書いてある言葉が読めない。もしや、と思いいくつか本を開いて確認するが謎の記号のようなものが書かれてあるだけで全く内容を理解できない。

「マジか。宝の山を前にして何もできないのか僕は」

妖怪には独自の言語があるのか。だとすると、わざわざ人間が読むことを想定して日本語で書く必要もないだろう。

せっかくの宝を前にして、何もできない自分の無力さに涙している最中、

「お困りかい?」

といつの間にか隣りに座っていた女性から声を掛けられる。先程確認した限りでは誰もいなかったはずだが、いつの間に現れたのだろうか。

「あ、えと。自分あまり字に詳しくなくて、本が読めないんですよね」

「それは大変だ!良ければ私が字を教えようかい?」

黒髪ショートの女の子が、笑いながら言う。歳は僕と同じぐらいで、現代風のホットパンツ

の服装からしても女子高校生っぽい。しかし纏う雰囲気が、人間のそれではない。恐らく彼女も妖怪の類だろう。

「いや、初対面の方にそこまでしてもらえませんよ。後で知り合いに教えてもらってまたここにきます」

「知り合いとは、君が首につけているそれの所有者かい?」

首のマフラー、もとい九尾からもらった尻尾を指差す。

「ええ。よくわかりますね」

「あはは。私は勘が良いのさ。字の件だが、遠慮するな。この言葉を理解するのは意外と簡単なんだ」

そう言って僕の手を引っ張る。

「こっちに理解の数珠がある。それを借りれば読めるようになるさ」

「いえ、でも・・」

動くなと狐から言われている。この場を離れるわけにはいかない。

「大丈夫、すぐそこだから。ほら、早く早く」

僕の腕を引っ張る。

まあ、すぐ済むならいいか。

「分かりました。人を待っているのでなるべく早くお願いしますね」

「まっかせっなさーい!」

僕の手を掴んでいるのと逆の方で親指を立てる。

良かった良い人、もとい良い妖怪そうだ。

「じゃあこっちきてねー」

彼女に後をついていく。席を離れた途端、体に一瞬静電気が流れたような衝撃が走った気がしたが、彼女の後についていくのに必死でたいして気にならなかった。

「ところでまだ名前を伺ってませんでしたが、教えて頂いてもよろしいですか?」

「そんなにかしこまらないでよ〜。紗桜(しゃお)、しゃーちゃんって呼んで。君は、なんて言うの、名前」

結果、と反射で本来の名前を言いそうになったが、人間としての結果は死んだ。今の僕は白だ。

「白です。よろしくおねがいします、しゃーちゃん」

「うんうん、よろしく!白」

笑顔で振り返る。

「ところで、理解の数珠ってなんですか?」

先程それがあれば本が読めるようになる、みたいに話していたが、そんな代物があるのだろうか。

「えっとねー。持ってさえいればどんな物でも、誰かが意思を持って書いたものであれば読めるってやつなんだ〜」

「もしかして、コンニャクだったりしますか?」

「いやいや。数珠って言ってるでしょ!話はちゃーんと聞いてよね!まったく」

某青い機械生命体のとあるマル秘な道具が真っ先に思いついたのだが、笑顔で否定された。

やはり存在し得ないというのか、マル秘道具。

「結構歩きますね。この建物のどこにあるんですか?」

「もうすぐだよ〜」

前を向いたまま、陽気に述べる。

「ほら、着いた」

手を離される。着いたと言うが、ただ図書館の端に来ただけで周りには先程と変わらず本しか無い。

「どこにあるんですか?」

「あそこだよ〜」

彼女が指を指す方を見る。その瞬間、

「いただきまーっす!」

変わらず陽気な声でそう言った彼女は、僕に近づくと僕の腕に向かって犬歯を立てる。

見に覚えのある経験。

「やっぱりそうか〜。薄々そんな気はしてたよ」

僕の腕を噛むと同時に、そんなセリフを吐く僕の目を、驚いたように見つめる。

「やっぱり痛覚は無いよね。僕の体どうなってるの?」

僕の右腕に深々と噛みつく彼女。先程と違って、目が真っ黒になってる。

僕の反応が予想外だったのか、慌てて腕から口を離す、というか噛みちぎる。

「・・・・んぐ。なに君!?反応無いって怖いよ!?あ、やっぱり美味しい」

僕の腕、手首からその先を飲み込む。

「食べた私が言うのもあれなんだけどさ。痛くないの、それ?」

「うん」

「そっか」

すると、喰われた箇所が、瞬時に回復する。元通りになる。先程まで僕の体に付着した血液がまるで最初から無かったかのように消え去る。

その様子を見ていた彼女、人食いの化け物だろう彼女が

「どゆことなのさ」

「僕にもワカンネ」

と、気の抜けた声を出す。口の周りに血を滴らせながら、素っ頓狂な声を上げる彼女の様子が面白く、思わず笑ってしまう。そんな僕につられるようにして、彼女も笑う。

「にゃはははは!!面白いねぇ君。流石は九尾の旦那だよ」

「はははっ。お褒めに預かって光栄の極みさ」

 




逆肉食系男子!!またの名を妖怪たらし。
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