美少女九尾に喰われたと思ったら生きてて結婚することになった話   作:佐藤サイトウ

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十一話 この浮気者め

「驚かないんだねぇ。一時的にとはいえ、腕を喰われたんだよ」

「ははは。慣れてるんでね」

血に濡れた口を拭う。

「面白いねぇ君!流石、狐の旦那だ」

「なんで僕が旦那って分かるのさ」

首を傾げる。そんな事を教えた記憶はない。

「だってそれ。その尻尾。それをつける意味も教えてもらってないの?」

意味?離れれば死ぬらしいから、その保険として身に付けろとしか言われていない。何か特別な意味でもあるのだろうか。

「知らないみたいだね。まったく狐ってば、照れ屋なんだから。ちゃんと教えてあげればいいのにさ!」

「どういう意味があるのかな」

「んー狐がわざわざ言わなかった事を私が言うのもなー」

「じゃあいいや」

「まー、君の肉をもっとくれたら・・・っていいんかい!!」

何か意味があるとして狐がそれを僕に黙っているのなら、それは後で僕が直接狐に聞くべきだろう。

「ええ。ではそろそろ戻りますね」

「えーもう行っちゃうの〜?もっとお話しようよ〜」

「狐を待たせるわけには行けないのでね。それでは」

立ち去ろうとする僕を

「えい」

「・・・」

押し倒す。両腕両足を器用に押さえられる。身動きが取れない。

「・・・・すごく既視感があるな」

「なになに〜?もう狐が押し倒しちゃったりした〜?子供作ったの〜?」

「いえ、作ってませんよ」

「結婚してるのに作らないとか甲斐性が無いなぁ。まあラッキーなんだけど」

ラッキー?何がラッキーなのだろうか。なんだか果てしなく嫌な予感がするが、あえて口に出す。

「なにがラッキーなんですか?」

「いや〜。私君に興味出てきちゃったからさ〜。美味しく頂いて〜君をもらっちゃおうかなって☆」

「頂くとは食べるという意味です?」

「想像に任せるけどー。まあ痛くなくて気持ちいことって意味かなぁ〜」

「なるほど」

最近こんな展開ばっかだな。なんか慣れてきたよ。てか妖怪って痴女ばっかなのかな、もしかして。

「じゃあ、いっただっきまーっす☆」

僕の服を掴もうとする彼女。しかしその動きはすぐに止まることになる。

「ふむ。白よ。結婚してそうそう浮気とは感心せぬな」

気がつくと、狐が背後にいた。

「不可抗力だよ・・・。笑ってないで助けてー」

背後で本当に楽しそうに笑う狐。状況としては、僕が両手足を押さえつけられているという絶賛襲われ中な体制なので、僕の無実は明らかだ。

「久しぶりじゃのう、紗桜よ。妾の旦那に手をだすとはなかなか肝が据わっておるの。褒めてやろう」

「あははー・・・。どうもー・・・。褒めるついでに見逃してくれたりとかはしないかな〜?」

「ふむ。そうしたいのはやまやまなのじゃがの。どうやらは妾は旦那が奪われそうになっているという事実に怒りを覚えておるようでの。残念ながらその願いは叶えられそうにないのじゃ」

彼女の表情は、いつもと変わらず薄ら笑いを保っている。しかし、心なしかその表情が、いつもより冷たく見える。

「だが今は時間がない。特別に貴様の狼藉を許そう」

「ホント・・・?」

「本当じゃ」

見たことのないぐらいの笑顔を浮かべ

「さっさと失せろ」

地獄の底から響くような怒りに満ちた声が響くと同時、僕を押さえつけていた彼女は消えた。文字通り、目の前から瞬時にその姿を消した。

「ふむ。では白よ。次はうぬの番じゃ」

重しが消えたので、立ち上がろうとする僕に向けて狐が言う。

「え」

「妾確か、動くなと言っておらんかったかの?」

先程紗桜に向けたとびっきりの笑みを浮かべたまま、僕に詰め寄る。

「あーえーっと。そ、そうですね」

「わざわざ結界を張って、並大抵の妖怪なら近寄ることもできなくしてやったというのに。なぜわざわざ離れたのかの?」

結界。一瞬感じたあの静電気のような衝撃はそれだったのか。

「えっと。本を読もうとしてですね。でも書いてる文字読めなくて。そしたら読めるようにしてあげるから着いてきてって言われまして・・・」

「ふむふむぅ〜。妾の言葉を無視して〜見知らぬ女の口車に乗ったんじゃの〜。へ〜」

そう言われてしまえば、返す言葉がない。確かに僕が狐の忠告通り離れなければ、こんな事にならなかっただろう。

「すいませんでした・・・・・」

言い訳は無理だろうと理解した僕は、素直に詫びることにした。

「ダメじゃ。許さぬ。後で相応の罰を受けてもらうから覚悟しておけ」

あ、相当怒ってらっしゃいますね。

「ちなみにぃ、罰ってなにか伺っても?」

「聞かぬ方が身のためじゃろう」

顔を逸らして言う狐。え、その言い方余計気になるじゃん。

「まあ、痛いことではない。少し妾の趣味に付き合ってもらうだけじゃ。安心せい」

「怖いなぁ」

「ま、帰ってからの楽しみができたところで」

と、僕の体に付着した埃をはらいながら続ける。

「こちらも準備ができたのでの。着いてこい」

「了解っす」

 

 

 

 

「君が狐の旦那かい。本当に人間と結婚したのだな。驚きだ」

大きい水晶玉がある部屋に案内されると、中にいた女性が話しかけてくる。黒縁の丸メガネを掛けた、不健康そうな女性だ。

一見すると人間のようだが、彼女もまた、人では無いのだろう。

「はじめまして、白宗治って言います」

「やあ、はじめまして。私は八ヶ舞だ。よろしく」

そして、部屋の中央に位置する、直径十メートルはありそうな巨大な水晶玉に近づき続ける。

「狐、犀禍はここにいる。早く行ってやりな」

「助かるの、舞よ」

八ヶ舞と狐は水晶玉の近くで何かを確認しあっている。僕にはわからないが、何かがこの巨大なガラスの塊に写っているのだろうか。

「え、もう行くんですか?僕をここに連れてきたことに意味あったの」

「あるある、大ありじゃ。白よ、その水晶玉に触れよ」

「え?」

触れよって。どういう技術でかは知らないがその場に結構な高さで浮いているあれにどう触れろと言うのだ。

「僕のジャンプ力じゃ絶対に届かない位置にあるのですが」

「良いから、とりあえず近づいてみよ」

「はあ・・・」

渋々言われたとおりに近づく。

「・・・・・えっ・・?」

水晶玉の前に立つと同時に、大きな球体が目の前で分裂する。割れる、という意味ではなく、大きな水晶玉が小さな水晶玉に分割されていく。思わず、一歩後ずさる。

「ほー。中々やるのう白」

「何が!?なんで褒められてるの!!というか何が起こってるのさ!!」

意味がわからない。目の前で行われている集合体恐怖症を必ず殺す現象と、それを引き起こしたらしい僕が褒められる理由もわからない。

「まー。今は秘密じゃ。どうだ八ヶ舞。すごかろう」

「確かに・・。驚きましたね。どうですか、お代は結構ですので彼を一日貸していただく事はできませんか?」

「だめじゃ。白は妾の旦那なのでの」

「そうですか・・・。残念です」

未だに分裂を続ける球体に、完璧に腰抜かしている僕の手を掴み。

「では八ヶ舞、またの」

「ええ、さようなら。白さんも、どうか健やかに」

その時の八ヶ舞と名乗る女性は、どこか懐かしいものを見るような表情をしていた。嬉しそうで、悲しそうで。その意味を理解しないまま、僕はその場を後にする。

 

 

 

 

 

「・・・・・・狐。あなたは・・・・。いえ、私が口をだすべきことではありません」

分裂し続ける水晶体を横目に、少女は呟く。

「どうか、あの二人に、永遠の幸せが訪れますように」

 




人柄。性格。
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