美少女九尾に喰われたと思ったら生きてて結婚することになった話 作:佐藤サイトウ
「助けてえええええええ!!!」
「何をそんなに慌てておるか、白よ」
町に入った。ここから妖怪探しのスタートだ!!と息巻いていたのだが。
「ねね、あの子美味しそうじゃない?」
「そうだね!なんで人間がこんなところにいるんだろう!?どうでもいいか!!」
と、僕と狐の周囲を妖怪が取り囲む。狐を恐れているのか、一定の間隔を空けて取り囲んで近づこうとはしないが、たまに突っ込んでくる奴がいる。
「てい」
「ぎゃーーー!!!」
「ヒィィィ・・・」
その尽くを狐が吹き飛ばす。
「ねえっ!!狐さん!?人探しどころじゃないですよこれ!!って、きてるきてるうわああああ!!」
一匹僕の間近に迫るが、紫色の光がそれを押しのける。
「そうか?スリルがあってよいではないか。カッカッカ」
「なにわろてんねん!!いやああああ助けてえええ!!!」
「助けておるではないか」
「そうですけどね!!恐怖の対象が減ってねぇんですよさっきから!!!」
狐にしがみつきながら、周りを見るが、よだれを垂らしながら僕を付け狙う妖怪たちの数は減るどころか先程から着々と数を増している。
「てかなんで女の子しかいないのさ!!!」
それら全ての性別が女だった。そう言えば僕が今まで出会ってきた妖怪も全部女性だった。妖怪に男はいないのか。
「ああ、言っておらんかったかの。妖怪には基本女しかおらん。じゃから、種を増やすには人間の男を攫うしか無いのじゃが、それを禁じておる今、おぬしは格好の相手だと言うことじゃ」
「なるほどね!!なんか痴女率たけぇと思ったよ!!!!」
また一人突っ込んできた。しかも今度は空から。
「狐ぇ!!上!!上!!!」
ほぼ半泣きで狐にしがみつく。流石にこの状況で感情を表に出さないとか言う余裕はない。
「分かっておる。そう焦るな」
上空から突っ込んできた妖怪は、見えない壁のようなものにあたり、そのまま吹き飛ばされる。
「カッカッカ。愉快愉快。お主の慌てふためく様で腹が膨らむというもの」
「なんでそんな楽しそうなのさ!!さては狐、こうなるのが分かってたな!?」
「いやー予想外も予想外。全く想定していなかったぞ?確かにうぬを利用して天狗を釣ろうと考えておったがの、まさかここまでの人だかりができるとは」
「もともと僕で釣る予定だったんですね、畜生!!」
「気をつけるのじゃぞ〜。一度捕まれば身を喰われるだけでなく、奴らの種馬として一生を過ごすことになるぞ」
「なんで今更そんな事言うのさ!!」
それを最初に教えてくれたら絶対にこんな場所来なかったのに。いや、だから言わなかったのか。ちゃんと考えてますね畜生!!
と、己が不幸を呪ってる最中。
「狐〜〜わざわざ某の為に男持ってきてくれたのか!!ありがとうだぜ!!!」
声が響く。それと同時、激しい風が上空から降り注ぐ。
周囲の妖怪は、その風を浴び吹き飛ばされる。どういう理屈かはわからないが、僕と狐の周りにはその強風は届かない。
その明るい声と、強風の主の方を見る。右手には巨大な、なんだろう、傘か?を握りしめ、背中から黒い翼を四本生やし、赤い仮面を顔の右側につけている。
「あれが、天狗」
見た目からそう判別できる。狐以外で初めて「俺は妖怪だぜ!!!!」って全身でアピールしてる妖怪を見た。
「白よ」
小声で狐が僕に語りかける。
「いまからうぬにはやつに攫われてもらう」
「なんですと」
守るって話は何処にいったんですか。
「妾ではやつを説得できぬ事情があるのだ。じゃから、白、うぬが奴を説得するのじゃ。人間を襲わないでください、とな」
「僕一人で??????」
「うむ」
マジですか。周囲を吹き飛ばす力を持った妖怪に攫われて説得してこい???僕が???無理でしょ。
「これがうぬの初仕事じゃ。健闘を祈るの〜」
待ってくれ、そう口に出そうとするが、肩を掴む衝撃に遮られる。
「嘘でしょおおおお!!!!!!!!!!」
こちらに手を振る狐を眼下に眺めながら、僕は天狗、犀禍に上空へと連れ去られる。
助けて・・・・・。
宙を舞う。
あまりの高度に、思わず足がすくむ。
「狐も良い所あるじゃん♪こんないい男某にくれるなんてな〜」
僕を掴んで運ぶ少女、現在進行系で僕に素晴らしい空中遊泳を体験させてくれている少女が上機嫌そうに呟く。
「もう少しで巣だからしばらく待てよ〜?すぐに気持ちよくしてやっからな〜」
「気持ちよくって、なんかもてなしとかしてくれるの?」
「おうともよ!私と子供作る男はいつも気持ちようにしてるからな〜楽しみにしとけよ〜」
なるほど。
「誰か助けて・・・・・・・・」
消え入りそうな声で呟くが、こんな上空、誰にもその声が届くことはない。
説得しろって、一体どうすれば良いのだ。僕には全く検討はつかないし、仮に方法があったとしても、実現できる気はしない。しかし、
「仕事か・・・・」
これは仕事なのだ。できるできないではなく、やらなければいけないことなのだ。狐の後ろについて行くだけが仕事なはずもないだろう。
狐が僕を送り出したということは、僕なら可能と結論づけたからだ。ならば、それを信じる。その期待を裏切らないように自分にできる最大限のことをする。それが、僕が今やるべきことなのだ。
起きてしまった事態だ。いつまでも文句を言うべきではないな、と頭を切り替える。
まずどうするのが正解なのだろうか。普通に「人を攫わないでください」って言うべきか?
いや、僕は彼女について何も知らない。情報を集めてからでも遅くはないだろう。
「てか狐よ・・・。せめて少しは教えて下さいよ・・・」
狐から僕に送られた情報は、今の所彼女の名前は犀禍で、人を襲い、頭が悪いということだけだ。
ええい、泣き言を言ってもしょうがない。今は情報収集だ。
「あの、犀禍さん?」
僕の肩を掴んで飛行する少女に声をかける。
「お、なんで私の名前しってんだ?あ、分かったぞ!!狐に聞いたんだな!!そうだろ!?」
「え、あ、はい」
異常にハイテンションな彼女に気圧される。いくらなんでも元気良すぎないか。
「某はやっぱり頭いいなぁ!!!でもお前の名前は知らないな、なんて言うんだ?」
「白宗治と申します」
「そっかー!じゃあこれからよろしくな、はっくー!!」
「よろしくおねがいします」
自己紹介も済んだところで、何を聞けば良いのか。とりあえず人間を攫う理由でも聞いてみるかな。
「ねえ犀禍さん。最近人間を攫ってるらしいのですがなんでですか?」
「最近じゃなくてずっとだぞ!!」
僕の発言を訂正して、続ける。
「理由なんて決まってるだろ!!結婚するためだ!!!」
「ほう」
結婚するために人間を攫う?なんとも強引なやり方だな。最近は肉食系女子なるものが世に蔓延っているらしいが、彼女もその一人なのだろうか。いや、攫って、その上食べてるから普通の女子ではないのだけれど。
「結婚ってのは女の夢らしいぜ!!だから某も男と結婚したいんだけどな!!みーんな婚姻の儀の間に動かなくなっちまうんだ!!」
「ほうほう」
結婚の儀とは、僕が狐としたあれだろうか。性交の代わりに舌を喰われたあの儀式。結構前のことのように感じるが、まだ昨日の出来事なのか、あれ。
「だから、何度も男を攫っていると」
「おうよ!!まあ結婚したいって思う前も普通に人間攫っては食ってたけどな〜」
そう陽気に言う彼女が、突然僕の体を彼女のすぐ前に向ける。
「だからお前には期待してるんだぜ、なんせあの狐がわざわざ用意してくれた男だからな」
先程までの彼女とは打って変わって、その目の中には暖かな感情は感じられない。この冷たい目、初めて狐とあった時のあの目に良く似ている。僕をただの食料、はたまたそれ以下の俗物とみなす目。彼女の陽気な話し方から錯覚していたが、彼女も人食いの妖怪なのだ。狐のような優しさを彼女に求めるのは無理だろう。
「ご期待にそえるように頑張りまーす・・・」
無論、そんな目を見た僕は、半泣きになる。さっき沢山の妖怪に囲まれていた時は狐が近くにいた安心感で気を保てたが、残念ながら、今、彼女はここにはいない。
「ここが某とはっくーの愛の巣だ!!」
彼女に案内、もとい連れ攫われた場所は、木の上にある大きな家だった。いや、家というよりか、屋根付きの鳥の巣を想像してもらった方が正しいだろう。
「そこに座って待っててくれ!!今お茶でも持ってくるからな!!」
そう言い残し、彼女は入り口から外に飛び立つ。
地面には藁が引かれているため、そこそこ座り心地は良い。
「さて、どうしたものか」
逃げようにも、入り口は五メートル以上の高さに空いた穴のみであるため、まあ無理だろう。そもそも出られたとしてもこんな高さの木から降りれる気はしない。
大人しく待つだけというのもあれなので、家の中を観察してみる。かなり広いが、ただ広いというだけで、家の中にはほとんど何もない。唯一あるものといえば、恐らくベッドだろう、藁が積み上がっている場所と、大きな石のみだ。なんだか石が家の中にあるのを不思議に思い、好奇心から近づいてみた。
「なんか文字書いてあるな・・って、そりゃ読めませんよねぇ〜」
占書館で見たような謎の記号が書かれていた。何か彼女を説得する材料とか無いかなぁって期待したのだが、やはり無いか
「ん?」
と落胆する前に、下の方に日本が書かれてあることに気がつく。謎の記号と違って、かなり小さく汚い字であるため、何を書いてあるか理解するのに時間がかかったが、どうやら
「二、ゲロ?」
逃げろ、と、血で書かれていた。
「逃げろ、ねぇ。無理難題言ってくれるねぇ」
「そうでもないぞ、逃げるだけなら簡単じゃ」
「ていってもねぇ、僕の仕事は彼女の説得だからさー逃げ出すわけにも行かない・・・って、え?」
背後からする聞き慣れた声。あまりにも自然に会話に入ってきたため気が付かなかった。
「良かったぞ、白。仕事に対する心構えは二重丸じゃな」