美少女九尾に喰われたと思ったら生きてて結婚することになった話   作:佐藤サイトウ

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幽霊の宝石
二十一話 話じゃん


散りばめられ、捨て置かれ、聳え立つ。

実態は無いが、されとて虚ろにのさばるものでもなし。

故に、我らが悲願は成就されるべきであった。

 

それらは、人体の喪失により、不可能と決断を交わされた。

故に、代替品を、我らは育てねばならぬ。

努々、忘れるべからず。

館長 

 

「・・・・なんだこれ」

朝一番、再び体の飢餓感によって目を覚ました僕は、一人寝床から離れ椅子に腰を掛けていた。

二人が起きる前に、どうせ何か作れとせびられるのは目に見えていたから、今のうちに軽く朝食でも作ろうと考えていた最中、突然紙の束が頭上から現れた。

どういった技術で何もない空間から紙の束を発生させたのかは不明だが、まあ考えてもわからないことは一度おいておくとしよう。

それらは、恐らく手紙であった。

「読めるけど、意味が分からないから読めないのと同義だね」

床に散らばった紙を整理していると、一枚だけ、僕にも読める日本語で書かれた紙を発見した。

僕はそれを大して気にも留めず、散乱した紙を再び紙の束に戻す作業へと戻る。

「朝から精がでるの、白よ」

「おはよう狐。起こしちゃった?」

うむ、と一言返事をおいて、僕の目の前に足を組んで座る。

「まったく。人様の手紙を盗み見るとは、感心せぬな」

「それは、人じゃない狐相手だから許されるという意味で受け取っていいのかな?」

ニヤリ、と歪んだ笑みを白は浮かべる。そんな彼の頭を狐が軽く小突き、再度ため息をつく。

「ごめんて。僕だって盗み見る気はなかったんだよ」

「する気はなかった、ね。悪意がなければ他人に危害を加えて良いとでも思っているのかな?害意がなくとも君が害を為した事実は変わらないね」

「・・・狐?」

突然口調を変えた狐は、気にも留めず続ける。

「白。君は人間を毛嫌いしているよね。どうしてか、当ててあげようか?」

「・・・・・・・」

「君は、人を愛せなかったんだ。好意を抱けなかったんだ。腹を痛めて生んでくれた母親も、身を粉にして君に尽くしてくれた父親も」

狐は、軽快に笑う。

・・・・・ああ、そうか。

「自己否定の塊。それが君だ。だから、否定すべき対象である自分と、同種の人間が嫌いなんだろ?傲慢で不遜だねぇ。やれやれ。親の顔が見てみたいよ。って、そっか。文字通り身を粉にしちゃったんだっけか。にゃははは~」

気が付けば、目の前で座っていたはずの狐の姿が、その周囲の空間ごと歪んでいく。

「君には、罪を、悔いを、過ちを。一切合切全部忘れて、平穏な毎日をのうのうと生きることは赦されないんだ」

歪みが、一つに固まっていく。

「悔いて生きろ。私はお前を赦さない」

無機質であるが、確かな憎悪を内包した声が耳元で囁かれる。

同時に、歪んだ景色が少しずつ闇へと修復されていく様子を感じながら、白は意識を手放す。

 

 

「おはようだ!白!!!」

「わあああああああああああああああああああああああああああ!?」

突然の目覚まし時計もびっくりな爆音をかまされた白は、狐にがっちりホールドされた腕の中で大声を上げる。

「・・・・・・・・おはよう、犀禍。可能であれば声のボリュームを十段階下げてくれないかな・・」

寝起きの乾いた声で白は目の前のメイド服姿の少女に嘆願ともいえる悲痛な願いを口に出す。

「わかった!!!!!!!!!」

「・・・・・・うん、後でまた話そうか」

彼女に僕の願いを聞いてもらえるのは、またかなり先になりそうだ。

 

 

「二人に言っておくことがある」

狐に出した料理の皿を回収し、洗い物をしている最中、突然それまで沈黙を貫いていた狐が口を開く。

「なんですー?今日もお仕事ですー?」

「そうじゃ。今日は、ゴーストタウン化した町の調査に向かう」

「ゴーストタウン?」

確か、人がいない町をそういうのであったか。

昔テレビで特集されていた気がする。当時は、広大な街に人が一人もいない様を怖がったものだ。今では、人のいない町を見ても、安心感しかわかないのだから、奇妙な話だ。

「最近のー、人間がとんでもないスピードで減ってきてるのじゃ」

「へーそれはいい事じゃないですか」

「白にとってはそうかもしれぬが、妾ら妖怪変化の類には深刻な問題なのじゃ」

「っていうと?」

「人間を食べれなくなる!!!人間は死んだら増えないからな!!!」

「俗物的な回答をどうも」

「どういたしまして!!!」

笑顔で、横やりを刺す犀禍。先日の約束をもう忘れてしまったのではないかと不安になる発言ではあるが・・・。

「ふむ。まあ事実その通りなのじゃ。妾のような人間に頼らず存在を維持しているものにはまるで関係ないが、一般のあやかしは人が食えなくなると大変なんじゃ。生気を吸えぬと、通常は虚と化す」

「あー昨日の怖いやつね」

茂みから突然現れ、僕を襲ってきた黒いもやのような何か。確か、全ての力を失った妖怪のなりの果ての姿であると記憶している。

「もう二度と会いたくないね、あいつら」

あまりの恐ろしさに腰を抜かしてしまった苦い記憶を思い出す。

「話を戻すぞ。妾達の目標は三つ。一つ、人間の消滅の原因究明または解決。二つ、人間の救助活動。三つ驚異の排除。頭に入れておけ」

「へーい」

「気の抜けた返事じゃのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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