美少女九尾に喰われたと思ったら生きてて結婚することになった話   作:佐藤サイトウ

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二十二話 急展開!ここから始まる人情物語(大嘘)

一人、荒廃した街に不釣り合いなアロハのシャツを着た男が歩いている。黒い背嚢を背にし、額を伝う汗を拭いながら、一歩一歩足を前にすすめていく。

彼の歩く場所は、荒廃していた。

否、崩壊していた。

雑多なビル街を歩く彼の目には、乗り捨てられた車、割られた窓。どこからか匂う硝煙の香りにむせながら、彼は歩く。

本来であれば、スーツを纏った社会人、慌ただしく青春を駆ける学生、買い物に来た婦人や、若い男女が手を繋いで歩いていたりと、混沌とした状況が繰り広げられるであろう街には、汗を拭いながら歩く男を除いて、人の気配が皆無である。

所謂、ゴーストタウン。彼の歩く場所は、その類の、曰くが付くような場所である。

二十代も後半の彼が、何故あの様な面妖な格好をしているのか、何故無人の廃墟を歩き回っているのか。

それらの理由が、或いは原因は、明記されるべきであるが、今は省く。

代わりと言ってはなんだが、彼の生い立ちについて語らせていただく所存だ。

もとより彼は、誠実で真面目な人間であった。高校時代に勉学に励み医学部に合格。大学在学中に医師免許を手にし、白い白衣を纏って患者を治療する医師であった。

同僚や患者に好かれる良き医師であり、その容貌も端麗で、何故伴侶がいないのか不思議な程できた人間であった。

 

彼が変わってしまった、変わらざるを得なかった出来事が、つい先日、賑やかな街がゴーストタウンと化した理由と綿密に絡み合っている。

が、先程言った通りそれらに関しては省かせてもらおう。

彼は望まない。記憶の発露を。

過ちを忘却の彼方へと遠ざける、それが彼に残された唯一の、罪を償う方法なのだから

 

「説明は省くぜ!いぇあああああああああふう!!!!」

状況は各々が判断しやがれ。わかりやすさなど知ったことか。俺は俺の死にたいように生きる。

サングラスをかけ、場違いなアロハシャツを纏った男が、笑いながら走る。

「言葉は不不要。否定に否定が入ると肯定になる意味わかんねーよなー結羅!」

「言ってる場合ですか!?早く逃げますよ!」

俺を見て、というか俺の後ろの光景を目の当たりにした結羅は、その場でくるりと踵を返し俺と同じ方向へ走り出す。

伽藍洞になった街の中を、かたやインテリを体現したかのようなスーツ姿の男、かたや浮かれた陽キャのような恰好をした男、そして数えられぬほど大量の胴長の怪物が駆けぬける。

「おいおい結羅、このままだと追っつかれるぜぇ?」

「わざわざ言われなくても理解してますよ!」

「んもーそんなに怒らなくてもいいジャン?血圧上がるぞぅ?こいつめーこのっ、このっ~☆」

「うぜえ!黙れ!!」

荒々しく、知的さなどを端において、結羅が返事を返す。

この男と共に行動しようなどというトチ狂った判断を下した過去の判断を悔やみながら、今は生き延びるためと、ただ両足を前に出すことをだけを意識して、結羅は走り続ける。

 

 

 

「・・・・撒いたみたいですね」

「みたいだねぇ。いやーよかったよかった一件落着ってやつよ。にゃははは~」

地下駐車場に逃げ込んだ二人は、辛くも追ってくる黒い怪物を撒くことに成功した。冷たいコンクリートの海の中で、蛍光灯がバチバチと己が存在を知らしめさんと音を立てる。

「一件落着ってやつよ☆じゃ、ねえんだよ!てめぇがしくって怪物どもに見つかったから俺まで巻きまれたんだろうが!」

「いやいや。俺だって見つからないよう頑張ったぜ?ちょ~っと良いバイクがあったもんで、弄ってたらエンジンかけちまっただけで」

めんごめんご~☆と、軽く頭を下げるアロハの男に向かってスーツの男が手をあげるが、ひょいっと身を捻り躱される。

「・・・・もういいです。あなたに何か言うだけ無駄ということにようやく気が付きましたよ。それで、後ろの馬鹿でかい鞄を見るに何か見つけたみたいですね」

「あ、おい!勝手にとるなよなぁ」

アロハの男の黒い背嚢を強引に奪い取り地面に下す。

・・・・ふむ。この手ごたえは、どうやら食料の様ですね。しかもなかなかに大量の。枯田のせいでさんざん走らされましたが、その収集スキルの高さに免じて許してあげましょう」

この荒廃した街から脱出するには、私一人では達成は困難。馬鹿で品性の欠片もない男ではあるが、馬鹿も使いようというだろう。使えるものであるならば、葦だろうがなんだろうが構わずに使う。妻に会うためには、私は手段を選んでいる暇はない。

「これだけの量の食料があればしばらくは持ちそうですね。ヘリの修理活動に勤しむ時間が確保できそうです」

「・・・取らぬ狸の皮算用、ってね」

枯田が小さく何かを呟くのを、結羅は聞き逃さなかった。

「なにか?」

「んーん、なんでも~☆とりあえずそれ開けてみ開けてみ~」

「・・・もしかしてこれ、食料じゃない?」

「んー食料であると思えば食料だし、思わなければ食料じゃないぜ」

「どっちなんだよ」

枯田が何やら言っているのを無視して、結羅は背嚢のジッパーを握りしめる。

これ、そこそこ重かったよな。体感的に二十キログラムはあるだろ。よくこんな重いものを担いで走れたな、枯田。

などと、枯田に感心しかけた心を追い払い、ジッパーを握る手に力を籠める。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

一気にジッパーを端から端へと下げ、内容物が現れる。

そして、予想外という言葉を顔に張り付けた結羅が、隣で煙草を吹かす枯田に向かって、一言呟く。

「なんで、人間がいるんだ・・・??」

中にあったのは、否、中にいたのは、中世的な顔立ちの若い少年であった。正確に言えば、半身半妖の出来損ないの化け物、白宗次が、黄色のマフラーに顔を埋めて、静かに眠っていた。

「だから言ったじゃんよ。食料と言えば食料だって」

「人なんて食えるか!この馬鹿やろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

コンクリートの壁に反響し、結羅の声が地下駐車場全体に響く。

そしてそれに釣られるかのように、地下駐車場の入り口から黒いもやの集団が現れる。

「しまった!!」

「はいこれでお互い様なー」

出入口は私たちが通ったあの一か所しかない。それを塞がれてしまっている状況は、かなりまずい、と結羅はパニックになりつつある頭を、深い深呼吸で落ち着かせ、冷静に判断する。

こちらを認識し、今まさに襲わんとするもやの集団への対処に結羅が頭を働かせているとき、唐突に枯田が壁際に向かって走り出し、壁を伝っていたパイプの一部を片手で引く。

骨が折れる様な音と言えばいいのか。少なくとも、平和的ではない音を立てながらパイプはその体を引き延ばされ、そしてバキッという木の折れる様な悲鳴を上げ、パイプが切断された。

「なんだその怪力!?」

パイプを、片手で引きちぎる!?いくら何でもでたらめすぎる腕力だろう。こいつの細い体のどこにそんな力が・・・・。

「俺があいつらなぎ倒すぜ☆お前はそいつ担いで俺の後ろついてきな~」

「こいつを連れていく必要あります?特に縁があるわけではないので置いていきたいのですが」

「そいつ、たーぶん何か知ってるぜ?あいつらとか、なんで人が消えたかとか」

「なぜ分かる?」

「んーーー。まあ、勘ってやつ?でも、俺の見立てによればそいつを利用すればこの町から出られるぜ☆」

「どんな見立てだか知りませんが、まあとりあえずこの人は運びますよ」

「聞き分けが良い!それでこそ俺の忠実な下僕ちゃんだぜ!」

「誰が下僕だボケ!」

軽口を交わしながら、枯田は両手でパイプを構える。

「さて、脱出劇の開始ですな!いぇああああああああああ!!!」

 




あーあーあーあーーあああああーーーーーあああーあーあーあーあーあーああーーーあーあーあーーあーあ
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