後日談へと話は変わります!!
十香の件から土日を挟んでからの月曜日。
ASTの復興部隊によって完璧に復元された来禅高校の校舎にはすでに相当の人数の生徒達が集まっている。
「………」
迅にとって、一人で居るときと言うのはほぼ確実に耳にイヤホンをして音楽を聴いていた。
あの件の後、改めて竜ヶ峰凌によって、精霊やASTについてのより詳しい事を聞かされた。
とはいっても、大体の事は【独自】の情報網を使って半ば非合法で集めた情報と同じ内容だったが―だが、意外にも精霊と言うのは複数居るらしい。
それぞれにはASTが付けた識別名として【ハーミット(隠者)】【ナイトメア(悪夢)】【イフリート(炎魔人)】【ベルセルク(狂戦士)】【ディーヴァ(歌姫)】【ウィッチ(魔女)】と言った、今現在出現が確認されているのは十香ちゃんや最初の空間震で確認された【最初の精霊】を含めたこの9体。―因みに十香ちゃんには当初は【プリンセス(王女)】と言う識別名があったらしい
確かに当初はあの凛とした姿にはまさしく【姫騎士】とも言える雰囲気はあったけど―やっぱり【十香】と言う名前が親しみを込め易くて良い。
士道の仕事は今現在確認されている精霊たちの霊力を封印する事も含まれている。その為にASTは最新鋭のテクノロジーを持ってそれらの情報解析を行っているらしい。
そしてもう一つ意外なのは―竜ヶ峰凌さんはあの立ち位置だが、何と【ラタトスク機関】の設立からのかなりの古参らしい。
だが、本人も契約の代償上―向上心や出世欲などともかけ離れ、現在の現場担当に居るらしい…まぁ、本人は【許可さえあれば好きなだけ暴れて良いのなら文句は無い】らしい。
とにかく、まず最初の課題だった十香ちゃんの霊力封印に士道は無事成功した。
あの後、ASTの応援が来る前に二人は<フラクシナス>に早急に回収されて事なきを得た―十香も最初は警戒心を露にしていたが僕の姿を見た事と―何より士道の言葉を信じて自身の身体の検査を行う事になった。
それから暫く会えていないのだが―それが気がかりなのか、後ろの友人はボーッと空…基天井を見上げている。
「…そんなに十香ちゃんが心配?」
「まあな―会おうと思ったんだけど、検査の一点張りで追い返されちまった。」
「仕方ないさ―あの姿でも中身は人間とは全く別物なんだから―」
「そうだけどなぁ…」
「それに会って何を話すのさ…キスしたこと?」
「なッ?!!」
途端に熟れたトマトのように顔を真っ赤にさせる士道―反射的に口を手で覆う。
「何やってんだ士道―本格的に気持ち悪いぞ?」
そこに突如現れたのは士道の友達の―――
「―誰だっけ?」
「殿町宏人だよ!と・の・ま・ち・ひ・ろ・と!!」
「あぁ~~~居たねぇ。そんな奴」
「ちょぉっとぉ?!何だか知りませんが俺の存在忘れるほど月日が経ったみたいに言わないでくれませんかぁ鴉間くぅん!!」
「だって、色々あったもんなぁ?士道」
「あぁ~~…うん、まあ。な。」
それには士道も同意らしい…まぁ、僕の悪乗りには乗ってこなかったけど。
「それより、もうすぐホームルームだよ?早く席に着きなよホモ町」
「と・の!町だ!!何それ!!俺がホモみたいじゃん!!!」
「え?違うの?!」
「何で心底驚いたような顔するんだよ?!って言うか、お前…前にもそんな弄り方しなかったっけ?!!」
「ええ?そうだっけ?知らない事ですね」
「コイツは…まぁ、良いや―どうせタマちゃん遅れてくるだろうし、俺はああいう先生タイプだぜ?」
「なら、告って来いよ…寧ろプロポーズして来い。喜んで了承してくれるだろうよ」
「「えっ?」」
何言ってるの士道…ボケてるのは僕のはずなのに
『十香対策の訓練で何かあったんじゃねぇか?』
それは…あぁ~~~…ありえそう。
そんな事を考えていると、ふいに教室がざわめき始めた
扉を見ると、そこに立っていたのは【鳶一折紙】だった―だが腕にはギプスを巻いて身体中絆創膏だらけの異様な姿だった。
彼女は無言なまま、士道のそばまで来ると頭を下げた。
途端に、周囲が騒然とする―当たり前だ。いきなり学校上位の美少女が一人の男子めがけていきなり頭を下げるのだから。
っと言うか、彼女狙ってやってるのか?
「――ごめんなさい。謝ってすむ問題ではないけれど」
「……五河、お前、鳶一に何かしたのか?」
「しとわんら!してたら俺が謝るだろうが!」
「まぁそうだよね―それよりさ、謝ってすむ問題って…何の事だろう?」
「…鴉間―迅。」
「………へぇ~…名前、覚えててくれたんだ。てっきり僕なんて取るに足らない存在なんだと思われていたと思ったんだけどねぇ~~。」
「………」
「それより本当、凄い怪我だよねぇ。【一体如何してそうなっちゃったのかな】?」
『どぉ~の口が言うのやら』
良いんだよ。そもそも士道は気にしてないみたいだけど、本来なら立派な『殺人』だよ?さ・つ・じ・ん♪
狙ったのは十香ちゃんであろうとも、結果的に当たったのは士道なのだ。世の中には【結果が全て】と言う言葉があるように、彼女の居る組織では過程なんて如何でも良い【結果】だけが重要なのだ。それこそ、撃った手前、【お姫様】の逆鱗に触れたのは完全に自分の責任だ。
彼女は僕の【質問】には答えず再び士道の方を向く。
「……でも」
そして、顔をぐぃッと近づけて彼に一言。
「浮気は、駄目。」
そう彼女が言うと同時にチャイムが鳴る。鳶一折紙は暫く士道をじっと見ていたが、やがて自身の席についた。
それよりも…ああ、あれって本当だったんだ。彼女の【妄言】ではなかったんだね。
「士道…お前は本当に―」
「な、何だよ?」
「何も言うな…ただ、お前にこれを渡しておく。きっと何かの役に立つ筈だ」
ただ、友人の貞操の危機とかも考えて―僕は士道に対して【防犯ベル】を渡しておく。
「?何だよ、これ」
「言うな―僕は冗談は言うが嘘は言わないししない。これは間違いようの無い僕の心に欠片ほど残った善意だと思って肌身離さず持っておくんだ。」
「???」
士道はいよいよ意味が分からないと首を傾げるが、寧ろ知らない方が彼のためのなのかも知れない。
岡峰先生が教室に入って来ると彼女は嬉しそうな声音で第一声を挙げる。
「はーい、皆さーん!今日は出席の前にサプライズがあるの!入って来てー!」
先生がそういうと、扉からまた新しい人物が現れる―と言うか。
「今日から厄介に【夜刀神十香】だ。皆よろしく頼む」
「………」
後ろで士道が口をあんぐりあけてるのが分かる。
「あはは…これはねぇ」
『楽しそうじゃあねぇかよww』
如何やら、この日常も目まぐるしく面白みを増して行きそうだ。
「報告は以上だ。」
フラクシナスに存在する【竜ヶ峰凌】は艦内にある自室のコンソールで一人、前回の件を個人的な視点として報告していた。
『ご苦労様。リョウ…精霊や彼はどうだい?』
「概ね問題なし―今日からはあのお姫様もナイト君の学校に転入させて様子を見ることにした。まぁ、他は奴らが如何こううるせぇだろうがな―」
『ハハハ。君を怒らせるととても厄介なのは皆知っている事だから、何も言ってこないと主けどね』
「-けッ」
コンソールの向こう側に映し出されている
『それともう一つ…確認しておきたい。【強欲】を仲間に引き込めたと言うのは本当なんだね?』
「まぁな―だが、予想以上に堅物で、仲間に引き込む問いよりは、【何とか協力関係】に持ち込んだって言うのが正しいだろう。油断は出来ないさ―」
向こうから一方的に同盟を破棄する事だって可能なのだから。
『それでも彼女たちを助けるための貴重な戦力ともなりえる人物だ―リョウ、君には今後も迷惑を掛けるがよろしく頼む。』
「――今更、んな事言うんじゃねぇよ、お前のおかげで第二の人生はそれなりに楽しんでんだからよ。それに五河琴理についてもだ―あの歳で<フラクシナス>を任せるのは如何かと思ったが、中々如何して…優秀に指揮官やってるぜ。お前が推薦しただけはある。」
『―それに関してだが君に話しておきたい事がある』
「………あぁ?」
「おいおい、それはマジなのかよ―」
『-疑うかもしれないが、紛れもない事実だ。とにかく、それも踏まえて彼女達の事を頼む。リョウ―』
「ああ―じゃあ、また何か分かったら連絡するぜ。身体には気をつけろよエリオットのおっさん。」
『私を年寄り扱いしないでくれるかな?』
「事実だろうが―」
そう皮肉を言って―ラタトスク機関の創始者【エリオット・ボールドウィン・ウッドマン】との通信を切り、椅子に大きく身体を寄り掛ける。
「成る程ねぇ―聞いたかよ【憤怒】」
『聞いていたさ―俺とお前は一心同体なんだぞ?』
「そうだな。琴理がねぇ……」
アイツがラタトスクにやって来たのは丁度5年前―正直、こんな小さなガキを機関に組み込むなんて何を考えてるんだかとエリオット達の正気を疑ったが、さっきの話で合点が行く。俺も当時はお前の力を上手く制御できずに苦労したもんだ。
『ふん―俺は【悪魔の王】だぞ?それを扱いきったお前の方こそ、大した奴だ。』
どうも……しかし5年前か。
『丁度、天宮市で大火災が起きたことがあったな…だと考えれば、五河兄妹の事も、そこからが始まりか。』
いや、そうとも限らないぞ―
『何?どういう意味だ―』
令音から聞いたんだが士道と琴理には血の繋がりが無いらしい―所謂、義理の兄と妹。そして、五河士道は幼い頃に両親に捨てられている。
『それが如何した?人間の中には然程珍しい事ではないのだろう?』
ああ―だが問題はそこじゃねぇ。普通なら捨てられたにしろ戸籍とかは残ってるものだ。だが、五河士道の戸籍上方を調べても情報が―特に士道が『産まれた家』に関しての情報が、『一切無い』んだ―
『何だと?―それは無いと言うより、消されたと言う方が正しいのではないのか?』
俺も同感だ―裏手を使っても重要な部分は全部消されてる。これは偶然だと思うか?
『………』
「…五河士道。―――か。」
精霊を封印する力を持つ少年―これは一重の偶然で生まれた存在なのだろうか、或いは――
陸上自衛隊AST天宮市にある駐屯地―そこで仕事に勤しむAST隊長『日下部燎子』の顔には苛立ちが見え隠れしていた。
前回の【プリンセス】狙撃の失敗―それに対しての始末書などもあるが、上官の口調にはつくづく苛立ちを抑えるのに頑張ったと思う。
何せ、言っている事が訳せばこうだ
『わざわざ狙撃許可出してやったのに失敗するとかお前ら実力なさすぎるんじゃねぇの?バカなの?死ぬの?とにかく未だに精霊一匹仕留められないでテメェら何のためにASTやってんだ。こっちだって上官として上から文句言われてるんだからきっちり結果残して貰わなきゃ困るんだよ。まぁ、とにかく…精霊一人倒せないお前らの為に外国から【一流の傭兵】を雇っておいた。 お前らと違ってひっっじょーに優秀な腕らしいからありがたく思えや。』である。
聞けば、周囲が渋るのを押して狙撃を行うよう促したのは他ならぬその上司だと聞く。
現場のリスクも考えないで、こっちを何だと思ってるのかあの糞上司は―確かに、狙撃と言う乾坤一擲とも言える作戦は自分達の落ち度かもしれない。 だが、隊員の一人が瀕死の重傷まで負ったというのにあの台詞は聞き捨てなるものではない。―ふと思い出したのだが、展開中だった部隊の内一つが謎の人物の襲撃を受けた事だ。
支援部隊の2名が正体不明に気絶させられ、一人は通信機を奪われたと聞く。その通信機も潰された形で彼女達の近くに落ちていたが―
気絶に留まったもののその二人は犯人の顔を見ていないと言う―一体何処の手練れか―今後も周囲の警戒を行っていかなくてはならない。
それよりも問題なのは前回の糞ボケの言っていた【一流の傭兵】についてだ―本日来る事になっているらしいが、たかだか傭兵一人で精霊一体を処理できればこちとらASTだって苦労なんかしてない。
そもそも、下手な戦力増強で統率が取れない可能性だってあるんだ―大体、傭兵って何よ?今時、そんなので食っていけるわけが―
「失礼します――隊長?」
「!え、如何したの?」
いつの間にか隊員の一人が入って来ていたのに気付いて我に返る。
ふと自身のデスクに目を通すと、書き殴った様な字で始末書がびっしりと埋まっていた。
「いえ―隊長にお客様が来られているのですがので―」
「客?誰の事かしら」
「さぁ…でも―とても素敵な方ですよ」
ハァと吐息を吐きながら、その隊員は両手を桃色へと色を変えた頬に添えながら
「分かったわよ…通して頂戴」
そう命じて隊員を出て行かせる。
しばらくすると―再びノックの音がする。
「どうぞ」
「失礼します。」
入ってきたのは中性的な顔立ちを残した好青年だった。スーツを身に纏ってやや幼げな容姿を残しつつ凛とした表情の美男子。
「―貴方が、ASTの隊長【日下部燎子】でよろしいですね」
「え、ええ…。それで、貴方は誰かしら?」
「はい。本日からこの部隊に所属するよう雇われた【リナルド・スコルピス】と言います。戦場では―苗字から【スコーピオン(蠍)】」と言われてますが―」
所変わって天宮市から遠く離れた位置にある住宅地―
予報外れの雨が降りしきる中―パペットをつけた少女は雨も気にせず一人水溜りに足を着けて遊んでいた。
周囲には誰も居ない。そんな時、少女は誰かの気配を察知した…ビクリと方を振るわせて振り返る。そこに居た気配の正体を見て少女は安堵した。
少女はその気配の正体に手を差し出す―【一緒に遊ぼう】。
その意思表示に気配の正体は大喜びで手を取る―雨が降りしきる中、一人の少女と一人の小さな男の子は、誰の目にも止まらず、気にせず二人で楽しく遊んだ。
【戦争(デート)】はまだ終わらない。
以上、10話目でした!感想などお待ちしております!!
ASTに雇われた傭兵、雨の中少女と戯れる少年の正体とは一体?!
四糸乃パペット編にてその正体が分かります。