睡魔って怖いですよね―起きても何度も襲ってきますから。
士道に野暮用といって先に帰った僕を家で待っていたのはフラクシナスに所属する【憤怒の契約者】―『竜ヶ峰凌』が待っていた。
前回の一件から情報供給の為にお互いの連絡先などを渡し合い、今日の昼ごろに『渡したいものがあるからお前の家で待っている』と言う連絡を受けて士道を置いて先に帰ってきたのだ。
家に入ると何処から入ったのかロビーにてテレビを見くつろいでいた…本当に何処から入ってきたんだ?
「よお。お帰り―勝手に上がらせてもらったぜ?」
「……如何やって入ったのか…は、聞かないでおきましょう。それで渡したいものがあると言うのは?」
「ああ…お前の前回の戦闘で付けてたお面が如何にも不憫そうでな―上の技術部に頼んで作らせた物が完成してな。」
そう言って凌が取り出したのは士道が実につけているインカムより大型のそれこそヘッドホンサイズで全体がブラックカラーのインカムだった。
「何ですかこれ?」
「基本的な機能は士道が使っているのと同じだ。フラクシナスと無線通信が可能だ。」
「それにしては―随分と大きいですね?」
自分の耳がすっぽりと覆われてしまう。
「基本的な部分はな―ヘッドホンの部分にでかいボタンがあるだろ?押してみな」
手探りで探してみると、丁度右側のヘッドホンに大きなスイッチがある―押してみると、いきなりヘッドホンが変形して頭全体を覆うマスクに変形する。
『おおぉ、すっげぇ技術だな。』
「本当―視界も良好だし、狭まったって感覚もない。」
「ラタトスク機関技術部が腕によりを掛けた一品だからな―防弾耐性もあるから、ASTの攻撃でもそう簡単にはこわれねぇぞ。」
鏡で自身の頭を確認する―顔全体をスッポリと覆っていて何処ぞの仮面ヒーローや某サイボーグ忍者とかを思わせる。カラーリングといい鋭角的なフレームと良いヤバイ超カッコイイ!
「ボタンの位置をもう一度押せば、元のヘッドホンに戻るぞ」
凌の言葉を聞いてもう一度スイッチを押すと再び変形してヘッドホンに戻る
「まるでトランスフォーマーだね。」
『別に地球外生命体と戦うわけじゃないけどな―。』
「でも、これで戦いやすくはなったかな…機能としても文句ないし。」
「気に入ってくれて何よりだ―そいつは、協力者への餞別だ。有効利用してくれよ」
「そう言って―これで仲間に引き込めれば良いって、思ってたりしてません?」
「あわ良くば…とは思っていたがな。端から期待はしてねぇが…。」
「…やっぱり」
「俺にまともな人間性なんざ期待すんな―それはお前だって分かってんだろ?」
その言葉には概ね同意と言える―。
僕も凌も肝心な根の部分は同じだ―目的や望みの為なら手段なんて選ばない。善意とは真逆に居る―利己的な存在だ。
「まぁ、僕はそんなに安くは無いですよ?」
「んなこたぁ分かってるよ…さて、渡すものは渡した。俺は帰らせて貰うぜ。」
「次からは家に不法侵入しないでくださいよ…でないと通報しますよ?」
「したら、警察が全員病院送りになるぞ?」
「―うわっ」
流石は【憤怒】の契約者…見事な逆切れの図が想像できるよ。
「そういえばさぁ…十香ちゃんは如何してるの?フラクシナスで生活中?」
「あ?違う違う―あそこに本格的に住んでるのは俺だけだ。他のクルーは天宮市に散り散りに生活してる。」
「へぇ~~~…じゃあ何処に?」
「ああ、今頃なら―」
「出て行けぇええええええええええええええええええ!!!!」
突如、隣の五河家から琴理ちゃんではない別の少女の怒鳴り声が届く―
この声の正体は知っている。
「え?…まさか―」
「ああ―そのまさかだよ。琴理いわく、これも訓練だと―」
「………はははっ―」
『前途多難だなぁ~五河士道は―』
今現在、五河家で繰り広げているであろう男女のやり取りに僕たちは苦笑いした。
まぁ、十香ちゃんの事だから『一線』を越えることはまず無いから安心だろうけど――。
翌日―
隣の五河家から響く少女の大声に目を覚ます―うぅん…せめて、琴理ちゃん達には『近所迷惑』って事も考えて欲しかったなぁ
『あぁ~うるせぇ。今度は士道の奴何をやったんだ?』
案外、一緒に寝てたとか?
『ハハハ…何だそれ。何の訓練だよ、【夜這い】か?』
だよねぇ~~~まぁ、おかげで遅刻の心配はなさそうだけど―。
『そういやよぉ…五河家の隣―何時の間にか更地になってたよな』
あれ?あそこって…普通に家無かったっけ?
『さぁな…取るに足らない奴なんざ知ったこっちゃねぇだろ?』
……………それもそうだね。
「おはよぉ~士道……って、本当に疲れ果ててるね。」
「ああ…ちょっとな」
フラフラな重い足取りの士道を見て思わず苦笑いする。
「隣にまで響いてたからねぇ…あ、皆には内緒にしておくから。その方がいいだろ?」
「…………助かる。」
「そりゃあ…ただでさえ視線がうっとうしいのに、これ以上は士道も堪ったものじゃないでしょ?」
『何より―隣の席の女に知られりゃそれこそ修羅場なんてレベルじゃねぇぞ。』
全くだよ全然笑えない―。
「なあ五河って如何したんだ?」
やってきた殿町が士道の姿を見るなり怪訝な声を発する
「悪い殿町…色々あって疲れてるんだ。」
「見れば分かるって―後、迅?お前、そのヘッドホン如何したんだ?」
「これ?抽選で当たったんだ♪言っとくけどあげないよ?」
「ああ、そうかい……所でよ。お前は巫女とメイドとナース…どれが良い?」
「何だよそれ藪から棒に」
「読者長方で次号のグラビアのコスチュームで決まるらしいんだがな…悩むんだよなぁ。」
「如何でも良い。」
「僕も興味ないや―」
「いや、頼むって適当で良いから!!!」
何でコイツこんな必死なんだろう―二次元に性欲ぶつけて如何するのさ。
『それが若さなんだろ?』
『過ち』って奴か――
士道が面倒くさげに『メイド』と答えた事でその会話は終了するが、その会話はもれなく後ろの少女に聞かれていた―言わずものがな【鳶一折紙】である。
「お、おう……鳶一、おはよう。」
「おはよう――メイド?」
「っ、い、いや、気にしないでくれ。」
「そう―」
それだけ言って彼女は自身の席に着く
『聞かれたな…。』
聞かれたね…絶対来るよ。
『ああ、絶対来る―』
などと考えていると再び教室の扉が開かれて今度は【夜刀神十香】が入って来る。
「おはよう十香―」
「…うむ、おはようだ。シドー…。」
成る程ね…時間をずらして上手く周囲を誤魔化してるか…まぁそれくらいはしないとね。
『バカ正直とは行かないわな―まぁ、そう上手く行けばいいけどよ。』
世の中そんなに甘くは無いでしょぉ…
果たしてそれは昼休みに起こった。
「シドー!昼餉だ!」
すっかり元気になった十香ちゃんは勢い良く自身の席を士道の席にくっ付ける―のだが、その真逆の方向からも士道に席をくっ付ける鳶一折紙―途端に二人の間には火花が散る。
「ぬ、なんだ、貴様。邪魔だぞ。」
「それはこちらの台詞」
「あはは…すっごい修羅場」
因みに僕は身体だけを士道に向けて登校中にコンビニで買ったパンを食べている。
士道のとりなしで何とかその場は収まり―いざ三人が弁当を食べようとした瞬間―
「…おバカさん」
『あぁ~あ』
鳶一折紙が士道と十香の弁当を見て瞬時にあることに気付く―それは二人の弁当の中身が全く同じだと言う事―普通の奴なら気付かないだろうけど、この女はハッキリ言って僕等とは全く別のベクトルで【普通】じゃないのだ―それも士道関連限定で。
士道もことの事態に気付いたのかしまったと言う顔をしている…十香ちゃんは鳶一に「やらんぞ」と言う
「如何いう、こと?」
「こ、これはだな……じ、実はあれだ。これは朝、弁当屋で買ったんだ。それで、偶然十香も……」
「嘘。これは今から154日前、貴方が駅前のディスカウントショップにて1580円で購入した後、使い続けているもの。弁当屋のものではない。
「何でそんな事知って―」
「それは今重要ではない。」
有無を言わせない気で鳶一は士道にさらに問いかける―
と言うか、本当に彼女何者なんだよ―恋する乙女とかで許される範囲超えてるよ?
『てか、立派なストーカーじゃねぇかよ。』
だよねぇ……通報した方がいいかなぁ?
「むぅ、さっきから何を話しているのだ!仲間はずれにするな!」
っとさらに、寂しかったのか十香ちゃんまで会話に入り込んでくる―そろそろ修羅場が本格的になろうとした時だ―
ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――
それは突如の空間震警報―途端に賑わっていた教室内が静寂に包まれる。
「………………。」
鳶一折紙は士道を見ていたが、やがて席を立つと何処かへと行く―恐らくASTに合流するのだろう。
とにかく、士道は警報に感謝だね―
『おい、相棒―俺等も行くぞ。』
分かってるよ―士道達は士道達で、僕等は僕等で―ね?
「じゃあ、僕も行くかな―」
「迅…やっぱり、お前も行くのかよ。」
「ああ―お前がそうした様に、僕も僕でそうしたんだ…じゃあね―違ったね、【またね】士道♪」
士道達を残して僕も一先ずシェルターとは別方向に避難する。
人目の付かないところで、来禅高校のジャケットは脱ぎ捨てる―
空間震が見えた―場所は商店街付近か……まぁ、平地よりは身の隠せる事が出来る。
一々物を壊しても気にしない手前…好き放題やらせてもらうけれど―
『準備は良いな?』
ああ…スイッチONっと♪
ヘッドホンを装着し直してから、スイッチを押す―機構的な音を立ててヘッドホンが自身の顔を隠し護るマスクへと変形する。
「さぁってと―もう良いかな、【強欲】」
『おう相棒―どんな精霊ちゃんかなぁ?』
行けば分かるさ――
「【魔風暴君(グリード)】ッ!」
悪魔の罪名を呼ぶ―周囲を竜巻のように暴風が吹き荒れ、自身の両足を包み込む、自身の足には猛禽類の足を模した漆黒の脚甲が装着されていた。準備は完了した―さて、行こうか。
一気に地面を蹴り空間震が起きた町の方へと飛んだ
『聞こえてるわね?リード』
「ええ、聞こえてますよ日下部隊長さん―」
『目標は既に現出したわ―相手は【ハーミット】よ』
「ハーミット…あの、うさぎみたいな小さな子かよ。よりによって一番戦いたくないのが来たかよ。」
『何よ―怖気づいた?』
「違うよ―見た目からして良い子って思えたからさ。金で雇われる身として如何かと思うが―ああいう子に銃を向けるのはとことん気が滅入る」
『…………』
「―仕事はするさ。目標を指定したルートに通してくれればそれで良い。」
『分かってるわ―それだけで貴方が仕留めてくれるのなら上も両手離して大喜びでしょうね。』
「頼むわ―急がないと【レイヴン】が邪魔に入るぜ?」
『その前に終わらせて、一気に目標を【レイヴン】に変更するわ―良いわね?』
『『『『了解――』』』』
各隊員の声を聞いてから一度通信を切る―
「……【色欲】。もう一つ―隠れてるのは分かるな?」
『ああ―だけど、隠れていてオレにも何処に居るのかは分からん。こっちは力の都合上、うかつには動けんから探しにはいけないし―AST達には言っても無駄だろうしな。』
「全くだ―何が目的かは知らないが―まぁ、もう一つは分かるけどな―」
遥かかなたからこっちに近づいてくる気配がもう一つ―間違いない【レイヴン】…いや【強欲】か。
「―精霊を助けに来るかよ。」
『それがアイツとアイツの契約者が選んだ道か―悪魔としてのアイツからは想像つかねぇな。』
「人間視点で見れば―俺達も悪魔らしくはないだろ?人間の味方してるんだから…」
『あれは勘違いだ…そういう話ばっか人間は作るけど―実際には悪魔と人間はビジネスみたいに何かしらの取引をする事で力を貸したりしてるんだ。こっちから言えばお前ら人間の方が自分勝手だって言ってやりくらいだぜ。【リード】さんよう?』
「俺は悪魔と契約したのはお前が始めてだから何とも言えないぜ?」
『昔は本当に扱き使われたもんだ―まぁ、今は良い契約者と巡り会えたと思うから良いけど』
「そりゃあ如何も―作戦開始だ。行くぞ」
そう言った瞬間、リナルドの雰囲気が一瞬にして変わる。
頭を切り替え―作戦は開始された。それは俺にとっては始まりなんだ―此処からは駄弁る事なんて無い。自分に与えられた任務を―完了させる。それが俺が今此処に居る意味なのだから―その為には今出来る俺の―俺達の力を出し切るまでだ。
「穿て―【閃紅魔銃(ラスト)】」
リナルドが契約する悪魔の罪名を呼ぶと自らの左手が紅く輝きを発し、光が消えると左手には蠍を模した装飾が施された深紅に彩られたマスケット銃が握られている。
マスケット銃を構え、俺は自身の示した場所にてターゲットが来るのをひたすら待つ事になる。だが、それで良い―感情もいらない。あのお嬢ちゃんが狙撃に失敗したのは、あまりにも彼女の意志が強かったからだ。あんな『殺意』を向けられていれば、誰でも違和感を感じる―現に、あの少年はそれに気付いて【プリンセス】を庇った。俺から見れば【狙撃手失格】だ。自分から気配を発するなど、愚の骨頂も良い所だ。本人にそれを指摘したら物凄い目で睨まれたな―だが、だからこそ―俺達がこれから見せてやる必要がある―本当の【一撃必殺】って言うのが、如何いうことなのかを――
「…【色欲】らしく【心臓(ハート)】を射抜くとしよう。」
以上、四糸乃編―2話目でした。 感想お待ちしてます!
色欲の武器は【マスケット銃】です。
あの魔法少女と同じ武器ですが―決して首をがっぷり逝かれるようなことはありません。
マミさぁああああああああああああん!!!!