昨日の出来事が嘘みたいに商店街は賑わっていた。
【組織】【集団】の概念は僕は嫌いだけど…別に他人や人ごみまで嫌いなわけではない。
それはただのコミュ障・引きこもりなだけだし-どちらかと言えば外の空気は好きな方だ。とは言え、この人ごみの中を歩きながら、此処にいる人間達の平和ボケっぷりには辟易する。もうちょっと警戒しろってのに-
此処からの距離なら見える来禅高校…ハッキリ言って学校という機能は完全皆無だ。
廃墟あそこにある…僕が感じた率直な感想だ。 あれは建て直すのにも費用掛かるだろうなぁ
……あ。そうか-だからASTは攻撃を躊躇してたのか。
結局直すのも自分達なんだから-苦労を上乗せしたくなければ、最初から挑まなきゃ良いのに-人間が勝てる通りが何処に感じたのやら。あんなの技術とか如何こうで如何にかなる差とは思えないのに-。
「ふあぁ~~~あ…ねむっ」
駄目だ…気分転換のつもりだったのに、全然紛れないや……もう良いや散歩もこれで切り上げてさっさと帰ろう。
足を180度向きを変えて散歩道を帰宅道に変える-のだが、その時前方を歩く見知った男性を見つけた。
何故か来禅高校の制服に身を包んでいるのは男子生徒の名前は【五河士道】…昨日まであの廃墟同然の高校で精霊と話をしていた今の生涯で唯一【友人】と呼べるだろう存在。
これも何かの縁だし、声でも掛けて変えるか…向こうが気づくように手を上げて-
「おぉ~い、シドゥッ?!?!」
大声で士道の名前を呼ぼうとした時、彼の隣を歩く人物を見て自分の中に蓄積されていた眠気の全てが一瞬にして吹っ飛んだ。序でに呼ぼうとして変な声まで飛び出してしまった…さらに言えば、思わず今見えてるものが信じられず目が飛び出しそうになった。
士道の隣を歩くのは来禅高校の女子制服を身に纏った少女-それも超ド級の美少女だ。
凛として艶のある夜のような美しい黒髪をポニーテールに括る少女-無論、あんな美少女は来禅高校には在学してない。けれど、僕は彼女を知っている、昨日あっているのだから、一週間前にも出会った精霊の少女-見間違いようがない。
精霊【十香】が【士道】と今一緒に歩いているのだ!!
信じられない-空間震警報もなっていないはずなのに、何故彼女があそこに居る!?
【強欲】?【強欲】さん!!凄い緊急事態が発生したよ!?
『ぐああ…あぁ?何だよ相棒。まだ俺はねむてぇんだ…もう少し寝させてくれよ』
それところじゃないよ!!前前々!!!
『まえぇ?……ブッ?!!?!?』
僕の目を介して士道と十香の姿を見た【強欲】も思わず驚き噴出す
『おぉい、俺は夢でも見てるのか!?あれは一体如何いう』
知らないよ…僕だって-でも、あの子間違いないよね?見間違いじゃないでしょ?他人の空にじゃないでしょ?!
『ああ、あれは間違いなく本人だ。』
ですよねぇ~~あんな世界レベルな美少女がおいそれと二人も居て堪りますか?でも、何であの二人――まるで、『デート』じゃないか。
『デートじゃないか…じゃなくって、完全にデートだろあれ』
だよねー…ん~~…何か眠気も覚めちゃった。 面白そうだしあの二人と接触する?
『好きにすれば良いさ…まぁ、俺としてもこんな面白そうな状況見過ごすのも尺だがな』
じゃあ…決まりだね。
偶然会うを装うため、二人の進行ルートを先回りして向かう。
僕と【強欲】の共通点―【面白い事に目がない】こと。
【強欲】の力で士道達の居場所を感知しつつ、二人の進行ルートに先回りする。
途中で止まったりしているようだが……恐らく、デートは順調なんだろう。
『二人の仲を壊さないようにな』
分かってる、そんな無粋までは行かないさ。 それよりも、仲を壊さないか…気づいてる?【強欲】、あの場にもう一人、あの二人を見ていた奴がいる。
『ああ…上手く隠れてるみたいだったが、俺達の目は欺けねぇよ。』
如何しようか?邪魔だし…殺しとく?
『それには人目が多すぎるだろう?』
だよね-一応、顔知ってるのが死ぬってのも目覚め悪いし、忠告だけはしておくかな。耳を貸してくれる期待はしてないけど。
『お前に任せるさ…っと、士道達の気配が近づいてきてるぜ』
ああ…偶然は装ってね。不信感だけは絶対出さないようにしないと-何てったってまだ【十香】ちゃんは所謂【歩く一級災害】なんだからね。
「シドー!次は何処に行くのだ?!」
「そうだなぁ…ん?」
士道が向かいからこっちに来る僕に気付いたみたいだ…こっちから声を掛けるよりもこっちの方が自然に思うだろう。
此方も、自然を装って気付いたように振舞う。
「あれ?士道…学校の制服なんか着て何してるのさ。」
「何してる-っておまえ、それより昨日のッ-」
そこから先を言う前に士道の口の前にに人差し指を就きつけ、もう片方の人差し指を自分の口の前で立てる。
【声が大きい】…それを彼女に聞こえるよう言うのは今は少なくとも不都合だ。その部分はまだまだ未熟だなぁ士道?
「昨日の事は今は良いだろ?それより-これって如何いうことさ」
「俺が知るかよ…何故か、学校に言ったら十香に会って…その、まぁ-」
「成る程ね…」
名付けるなら【静粛現界】か…空間震も起こさずに此方の世界に現れる。
とにかく、【十香】ちゃんと話してみようか-昨日も出来ればお話したかったし。
「こんにちはお嬢さん。」
「むっ?何だ貴様は-」
覚えてない…か。まぁ、士道よりも彼女とコミュニケーションは取ってないからね。そもそも会ったのは一週間前の空間震の一度きりだったし。
『まぁ、別に接するに好都合不都合もないだろ?』
まぁね…でも、近くで見るとこんなに可愛いとはね-士道ってば妬けちゃうなぁ。
「ああ、そうだよね-初めまして、僕は【鴉間迅】って言うんだ。士道の友達だよ。」
「ともだち?友達とは何だ?」
「ん~~簡単に言えば、仲が良い人って所かな-君の名前は?」
「【十香】だ!」
「十香ちゃんね…可愛い名前だね」
「!そうだろう!シドーが付けてくれたんだ!!」
「ちょ…十香、迅!」
自分の名前を褒められて十香ちゃんの機嫌が警戒から一気に上機嫌になる。
成る程ね…昨日のシドーの会話と言い、この子は本当なら純粋無垢が素なのか。
『一週間前に出会った時とは大違いだな。』
だね…これは士道の成果だよ
「それは良かったね。 じゃあ、この際だから、僕の事も【迅】って名前だ呼んで良いよ。ところで、二人はこんなところで何してるの?ひょっとしてぇ、『デート』?」
「うむ!私はシドーとデェトをしているのだ…所で迅よデェトとは何だ?」
「え?…士道、この子デートの事知らなかったの?」
「あ、ああ…何と言うか説明し辛くてな。」
「ああ確かにね…」
いざ説明しろと言われれば確かに難しいよなぁ…
でも、此処で僕の口から教えるのはナンセンスだよね-
「ん~~~…僕も何て言えば分からないかな。デートした事ないし」
「む?迅はデェトをした事が無いのか?こんなに楽しいのに-」
「!!」
そうか-楽しいのか。成る程ね-
『こりゃあ、何の心配もいらなさそうだな…』
うん-そう言えばASTの相手してて良く見てなかったけど、士道と話してるときの彼女の顔-とっても楽しそうだったね。
「そうだね-十香ちゃん楽しそうだね。」
「うむ!シドーにたっくさん美味しいものを貰ったぞ!頭も撫でてもらったぞ!!」
「うんうん。良い事だ。」
『迅…これ以上は-』
分かってる-僕はお邪魔だね
「なら、僕はこれで失礼させてもらうよ」
「迅-もう行っちまうのかよ」
「そりゃあそうでしょ…デートに水差すのはもうお終い。此処からはお二人で楽しんで行きなよ。」
そう言って会話を切り上げて僕は背を向ける。後は邪魔にならない位置から見守る事にしておきますか-何て言ったって、シドー君の初デートなんだからね。
「あ、そうだ…十香ちゃん。一つ聞いて良い?」
「む?何だ?」
「今――幸せ?」
「うむ、とっても幸せだぞ!」
十香の答えは即答だった-とびっきりの笑顔にとびっきり元気な声…
「良かった-じゃあね。士道、男なんだから、十香ちゃんのことしっかりエスコートしてあげなよ。アデュー♪」
二人に軽く手を振りながら僕は一度二人から十分距離を取った位置で身を隠す。
「―幸せ、か」
あんな毒気一つ無く言われるなんて、予想外だよ。
『あんな笑顔で言われちまうと-つくづく心配だと思ってた事が馬鹿みたいだぜ』
「全くだよ……さて。」
『次はちょぉっと厄介だぞ?』
そうだね-まぁ、あっちに容赦する気はないし-
「何時までそうしてるつもりだい?出て来いよ…」
その言葉に対して、対象は沈黙を貫いている。
「……士道達には気付かれないみたいだけど、僕は騙せないよ。何なら、今から二人にお前の事、話しておくか?『気をつけろ、お前らの後ろをストーカーが追ってる』ってさぁ。」
「………」
現れたのは来禅高校の制服に身を包んだ人形の様な無表情の美少女-鳶一折紙が姿を現す。
「……ストーカーとは、聞き捨てなら無い。」
「へぇ…じゃあ、何て呼べばいいんだ?」
「恋人」
…………
『恋人のする行動じゃねぇだろ…』
同感――ストーカーの方がしっくり来る。いや、そもそも何でそうなってる-
「士道に告白されたのか?」
「昨日された。私は構わない。」
「………」
何してるんだよシドー。お前のやった行いは、餓死寸前のライオンの目の前でデミグラスソースを全身に塗りたくって『どうぞ召し上がれ』と叫んでいるようなものだぞ!!
『改めてこいつの欲を見てみたいんだが-』
え?止めようよ…前回のコイツの欲みたでしょ?『士道』に対してで一杯だったよ?
『それが今の心情どうなってるかってのも気になるだろ…な?一回だけ?』
うえぇ…分かったよ
行くよ?3、2、1…はい!
士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××士道と×××
はい終了!はいアウト!×が三つでスリーアウトだ、チェンジだ!そして、訂正-こいつ【餓死のライオン】んてレベルじゃない!!
『さながら例えるなら【餓鬼界における唯一の食料】か?なんつう欲望だ…【色欲(アスモデウス)】裸足で逃げ出すぞ』
前回よりもパワーアップしてるよもう見ない!見たくない!!!コイツの欲なんてッ!!!
「用が済んだのならどいて。私にはすべき事がある」
そう言って、鳶一は僕の横を通り二人の後を追おうとする。
思考を現実に引き戻し僕は再び彼女の前に立つ。
「待てよ…無視しないでくれるかなぁ?」
「私は貴方に興味が無い。邪魔をしないで」
「邪魔?邪魔って-それは【鏡】に向かって言うべき言葉だろ?」
そうだ…コイツにドン引きするのは後だ。
僕が最優先にするべきことは-この女に後を追わせない事だ。下手にこの女が介入すれば、それこそデートは台無し、十香ちゃんも精霊になって大暴れ―――待てよ?この女、確か十香ちゃんの顔を間近で見ていたなッ!!
『おい、それは本格的に拙いだろ…精霊が普通の男子高校生と歩いてる姿なんか、下手すりゃ恰好の獲物じゃねぇか。』
いや、それならまだしも-もしもそれで失敗すればそれこそ大惨事なんてレベルじゃすまないぞ。リスク大きすぎる事考えてるんだろうなぁ。とにかく、これは本格的に裏方役に回る必要があるな。
「二人は見たとおり、良い雰囲気なんだ…恋人だか知らないけど、此処は何も言わずに去るってのが良い女じゃないのかい?」
「あれは危険な存在。放っておく訳にはいかない。」
「危険?確かにとびっきり可愛かったなぁ~純粋そうで良い子だったし-あ、ひょっと士道を取られたりしないか心配してるの?」
「話にならない。貴方は早々に此処から去るべき。」
はぁ…駄目だねこれは-如何してこう、オブラートに包み込めないんだろう?
『お前の本性はあれだからだろ?』
それは言わないいわない…でも、こう思い通りに行かないと、ちょっと頭に来るなぁ
再び二人を追いかけようとする彼女の前を塞ぐ様に壁に手を強く叩く所謂、『壁ドン』だ。
「行かせないよ。二人はお楽しみ中なんだから-」
「貴方は何も分かってない。あれは早急に対処すべき存在」
「何を言ってるのか全然分からないんだよ…分かりやすく言ってよ」
「貴方には関係ないこと」
「じゃあ、駄目だね…そんな曖昧な言葉で僕が納得すると思ってるの?」
あくまで、此処を通さない-その一点張りだ。
その為には、僕を納得させる必要がある…実際には僕も士道と一緒に一週間前のあの現場に居たけど、彼女の印象には残ってないようだ。だが、都合が良い…傍から見れば、友達のデートを邪魔させない為に体張ってる【良い人】に、僕は見えるのかもね。
「彼女は放っておけば世界に害をもたらす存在-問題を起こす前に殺さなくてはならない。これは貴方の為でもある。」
「僕の?如何してさ」
「…それは秘密事項。しかし、私は彼女達のせいで両親を失った。私のような人間を作り出さないためにも、貴方は私に道を譲って」
「!」
両親を…十香ちゃん-つまり精霊に殺された?
『成る程-そりゃあ、仕事熱心になるのも頷けるわ。それに、士道って自分にとって大事な人も近くに居るのなら、尚更か-』
そして、僕の表に出てきた感情は-
「――プッ」
失笑だった
「!何がおかしいの?」
此処で始めて彼女の表情に変化が現れた。無表情から明らかな不機嫌な顔
「へぇ、そんな顔出来たんだ…意外」
「ふざけないで、私は真剣な話をしている」
「ああ、ごめんごめん…怒らないでよ。あまりに立派な【建て前】で思わずね…」
建て前…の言葉を強調して僕は言う
だってそうだろ?そんな自己犠牲的な善意の割には彼女の目の奥-
「如何して、そんな【憎悪】を含んだ目で言えるんだい?」
「!」
鳶一が眼を大きく見開く-図星かな?
まぁ、良いや――時間も稼げたろうし、此処までにしよう。 物陰とは言っても、流石に目も付くだろうし
「まぁ良いや-二人とも行っちゃったみたいだし、僕の役目はこれで終わりかな。じゃあね、【鳶一さん】」
壁に付けていた手を離し、僕は彼女を横切って行った。
はぁ~…士道達と随分距離離れちゃったね。
強欲の力で士道達の位置を確認する…如何やら商店街の奥の方に向かっているみたいだ。
『それにしてもあのお嬢ちゃんも随分な堅物だな』
全くだ…時間稼ぎをするのも楽じゃないよ
『それもそうだが…お前、随分と辛辣な言葉言ったなぁ~お前らしくもない』
僕らしくない…確かに。けどさぁ…何だろう。彼女の言葉聞いてるとさぁ…イライラして来ちゃったんだよね。
『イライラ?』
そう…【ハッキリしてない】って言うか【優柔不断】って言うか…ごめん、上手く言葉に出来ないや。
『ふぅん…それより、相棒…上の【アレ】気付いてるか?』
そうだね…少し前から士道と十香ちゃんをびゅんびゅん飛んで追い掛けてるガラクタ…邪魔だね。
「【魔風暴君】」
脚甲を纏った足を上空向けて薙ぎ払う。次の瞬間、真空の刃が上空へと放たれて、空中にあったガラクタ(ASTの観測機)を撃ち落とす。
「昨日と言い、余計な事するなってのに…」
『まぁ、人間って立場上、そうしなくちゃいけないんだろうよ-納得できるが、理解は出来んがな』
そうだね-でも、十香ちゃん達気付かれたかな?
『多分な…俺らも準備しておくか』
そうだね……
触らぬ神には祟りはないのに-
8話目でした…感想などお待ちしてます。
念の為言っておきますが、うp主は鳶一が嫌いな訳ではありません…むしろ、あの奇行とか見てて面白いと思ってます。
さて…そろそろ十香編も終盤です!