デート・ア・ライブ&クライム   作:星の翼

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十香デッドエンド&迅コントラクト Ⅸ

夕方時の高台の公園には士道と十香以外の人影は見受けられない。

時節と置くから聞こえる自動車の音や、鴉の鳴き声だけの静かな空間。

 

そんな二人から悟られないように-しかし逃げ場の無いように包囲しているAST…そんな光景をさらに離れた位置から呆れながら僕は見ていた。

 

「あぁ~あ…結局、こうなっちまうのかよ。」

 

全く-空間震も起こってないんだから、放っておけば良いのに-何でやぶ蛇突こうとするかねぇ?

『仕方ねーだろ?向こうは【組織】って所にいるんだから、自分の意思なんざ無関係なんだよ。』

はぁ…此処でも【組織】か…面倒くさいよねぇ。

『それで人間社会が成り立ってんなら、文句の一つ二つ垂れても仕方ねぇーだろ?』

はいはい…さて、如何したものか。此処から様子見たほうが良い?

『如何だかなぁ…ASTが動いてないってのも気になる。何起こらなければいいが』

こっちも顔を隠せるもの持って来てないし…【強欲】。 ASTの配置分かる?

『そうだなぁ…二人一組になって計5組だな…二人の一番近くにいるのは、宅地開発中の台地に居るチームだな。他は少し離れた位置-支援部隊と言ったところか。各自離れて様子を見てやがる』

了解…じゃあ、ちょっと情報集めと行きますか。

 

 

 

「それにしても、本当に精霊だなんて-これからどうなるのかしら」

「さぁ…大体、空間震も起きてないのに何で精霊がこっちに居るのよ。」

 

ASTの隊員の一組は待機という命令から精霊【プリンセス】の方を見ながら話をしていた。

無論、バレれば隊長からのお咎めがあるのでバレない範囲ではあるが…

 

今は隊長が上と精霊についての対処を話している…下っ端の自分達には分からないが、恐らく狙撃によって仕留めるのだろう。

 

「【CCC】も鳶一一曹が持っていたわよね」

「そうね。でも、民間人も居るのに本当に狙撃するのかしら?」

「だからこその狙撃なんでしょ?一発で仕留めて、それでおしまい」

 

「そう簡単に行けばいいけどね」

「「ッ?!」」

 

驚いて振り向いたときには、既に腹に強い衝撃を受けて視界が真っ暗になった。

 

 

「はい、ちょっと借りるよ。」

 

気絶させた二人の隊員の内、一人から通信機を奪い取る。

送信はすると拙いから…受信のみを機能させる。

此処から、ASTの動きが分かればいいんだけど-

 

『…使えそうか?』

「まぁ、何とかね…あ、出来た。」

 

向こうから上層部らしい男の声が聞こえる。

『狙撃の許可が下りた。【プリンセス】を仕留めろ-間違っても、民間人には当てるなよ?報告書問題じゃすまないから-』

「…………」

 

通信を全部聞く前に思わず通信機を握りつぶしてしまった。

向こうさんの行いに呆れと憤りが入り混じった変な気分になって如何し様もないイライラが完成する。

『本気で撃つ気かよ…千載一遇なんて耳の良い言葉じゃねぇんだぞ。』

全くだ…確かにハイリターンだけど、その前にハイリスクなんだよ。そこちゃんと分かって指示出したのか?-琴理ちゃん達はASTに気付いてるのか?

『【憤怒】は気付いてるかもしれないが…動きが無いのがな。』

許可が下りた以上時間が無い…士道達とも距離がある-【魔風暴風】を使えば、ASTに気付かれる可能性が出て来る-本命とは離れてる以上、それはリスクが高すぎる。何より、俺は今顔を隠せていない-。正体がバレれば鳶一を使って此方を監視してくる可能性もありえる。

『チッ…万策尽きたかよ…』

「とにかく、駄目下で士道達のところに行くしか-」

 

その時だった-声を遮るには十分すぎるほどのバカデカい銃声が響いた。

「ッ!」

 

間違いない-隊員や通信が言ってた、狙撃の銃声だ。

『バッカヤロウ共が…ッ!』

「ちぃ…!」

 

 

最悪の事態を想定しながら、僕は士道達の居る公園へと急いだ。

 

 

「士道!十香ちゃん…ッ!」

 

そこにあったのは光景は-予想外の光景だった。僕はてっきり…十香ちゃんが撃たれて呆然としている士道を予想していた。そう願っていた。

だが、そこ見える光景に十香ちゃんの姿は無く、来禅高校のジャケットを被せられた倒れた人影が一つ。

ジャケットをめくると脇腹が綺麗さっぱり削り取られたまま、眠った様に目を瞑った士道の抜け殻があった。

 

「…………」

『…………』

 

僕も【強欲】も何も言おうとも思わない。

ただ、黙って-ジャケットを再び士道に被せた。

 

此処から遠くに見える。狙撃ポイントであっただろう-台地を方から凄まじい衝撃が此方にも届いてくる。

出来れば-僕が思っていた方が、何事も起こらずに良かったのかもしれない。

だが、最悪の事態は起こった。彼女の-十香の拠り所に成り得たであろう士道は彼女の目の前で死んだ。否、『殺された』―それが本意不本意など彼女には如何でもいいだろう、始めての優しさ・温もり-自分を理解して、手を握ってくれるだろう存在を奪った相手。怒りに染まるには充分過ぎる。

今まで、一週間前―彼女を始めてみた時、彼女は進んでASTを攻撃しようとはしていなかった。やってきたらやり返す-そんな彼女が始めて本気の牙を向いたのだ。

人が敵う通り何て-ある筈がない。あるとすれば-

 

『如何する?止めに行くか?』

人ならざる力を持つ者のみだろう-これは、言うならば不幸な事故だ。士道が死んだのは、僕の両親が死んだような不幸な事故だ。

けど-だけど――如何しても、行く気になれない。

 

「士道-お前なら、彼女を止めに行くんだろうな。」

だが、僕はそんなお人好しにはなれない-目的のためなら、悪魔にだって魂も売れるんだから。

…ふと血溜まりの中に光るものを見つける。拾ってみれば、それは小さなインカムだった。

耳に付けてみると、聞きなれた少女の声が聞こえる-

 

『あら?ようやくこれで話が出来るわね』

「琴理ちゃん?…成る程ね、これで士道と連絡取ってたのか-」

別に一万二千メートルから傍観してた訳ではないんだな…けど。

「随分と冷静だね-いや『冷徹』って言った方がいいのかな?君のお兄ちゃん…お空に旅立っちゃったよ?」

『そうね。それでもナイトとしては及第点よ。あそこでお姫様が撃たれてたら、それこそ目も当てられないわ。』

「それはそっちの視点だろ?普通の人間視点なら、今の現状の方がよっぽど最悪だけどね-まあ、【神に触って祟りあり】って所かな。それで如何するの?僕はお姫様の怒りを止めに行けばいいのかな?あんまり気乗りはしないけど-」

『それに関しては心配いらないわ。ほら―』

「?」

 

倒れた士道を見てみる…そこには何故か炎が発っていた。

「……………んん?」

何だこれ…思わず、ジャケットを取り払うとその炎はよりハッキリと見える。傷口に沿って燃え上がる炎は士道の傷を焼くのではなく、癒すようにその規模を小さくしていく…それはまるで炎から再生する【不死鳥】のようだった…そして―

 

「アーッチチチチチッ!!」

「……士道?」

『な、なんじゃこりゃああああああああああ!!!』

 

生き返った―士道が、人間が、生き返ったッ?!

『何だよこれ…一体如何なってんだぁ?』

僕が知るわけ無いでしょ…とにかく、士道なんだよね?

『ほらね?言ったでしょ?』

「琴理ちゃん…これは―」

『詳しい事は後で話すわ、貴方達を回収させてもらうわよ。』

「……分かった。士道、立てるか?」

「迅?お前如何して此処に―ッ!十香は!?」

僕は何も言わずに十香ちゃんの居る方角を指差す、その方角を見て士道は真っ青な顔へと変貌する。

 

「心配できてみればこの様さ…とにかく、フラクシナスが回収してくれるんだ。そこで詳しい事を聞かせてもらうよ。」

「でも、十香が!」

「分かってる…止めたいんだろ?その為にお前を一度回収したいんだとさ。さぁ、行くよ。」

 

そのまま、一度士道と共にフラクシナスに回収される事を選ぶ。

琴理ちゃんや凌さん―【憤怒】からは詳しい事、根掘り葉掘り教えて貰わなきゃいけないだろうしさ。

 

 

回収されて早々、クルーの一人に引っ張られる形でブリッジに連れてこられた僕等を待っていたのは、琴理ちゃんとスクリーンに映された怒り狂って剣を振るう十香ちゃんと、その猛攻に滅多打ちにされる…あの狙撃を行ったであろうAST隊員【鳶一折紙】が居た。

 

「よぉ、久しぶりだな【強欲】…昨日の事で礼が言いたかったんだ。」

「どうも凌さん…でも、それは後。如何する気琴理ちゃん?」

「勿論―十香を止めるわ。士道が」

「お……俺ぇ!?ってか、何で俺生きてるんだよ!?」

「その話は後よ。それよりも、こっちが先―」

 

そう言って、スクリーンを指差す…確かに、今はこっちが最優先だよね。下手すれば、ってか、このままだと間違いなく死ぬよあの子…

 

「止めるからにはちゃんと方法はあるんだよね?」

「ええあるわよ…とぉ~っても、ロマンチックでドラマチックな方法が」

「な、何だよ?」

「案外、キスとか?ロマンチックでドラマチックって言うならさ」

「おい!冗談なんて言ってる場合が」

「あら、勘が良いわね迅」

「「え?」」

「そうよ―精霊と、キスするの。じゃあ、士道、頑張ってねー♪」

 

そのまま、問答無用でクルーに連れて行かれる士道を余所に僕は改めて琴理ちゃん達と向き合う。

 

「…それで、僕を此処に呼んだ理由は?」

「貴方にも見ておいて貰いたいと思って、士道が霊力を封印するところを―」

「それを僕に見せて如何する気さ」

「……琴理も凌も、君の事は昨日の事もあって高く評価している。それだけに、君をフラクシナスに【ラタトスク】に入って貰いたいと思っている。」

「……へえ~…令音さんみたいな綺麗なお姉さんにそんなこと言われるなんて照れるなあ。でも、前にも言った筈だよ?僕は【組織】って言う奴に大事なものを奪われた。周りにはどうかと思うけど、僕にとっては十分過ぎる理由なんだ。」

 

スクリーンには転送された士道とそれに気付いて彼を抱きとめる十香が映される。

 

「分かっている士道には精霊の力を封印する力がある―そして、私達はその力を使い、精霊を封印する。そしてこのフラクシナスは彼をサポートする為にあるわ。」

「…確か、そういう組織だったっけ?ラタトスクって―」

「そうだ。お前の昨日の行動―やっぱり、勿体無いんだよ。【組織】の為とは言わない―だが、士道の手助けのために、お前の力を貸して欲しい。」

「つまり、何が言いたいのかな?」

「お前と協力関係を結びたい―そう思っている。」

「協力関係?」

「この場合なら『同盟』とも言っても良い。お前をラタトスクの一員としてではなく、個人的な協力者として仲間になってもらいたい。個人的に得た情報の交換や共有。―如何だ?」

「………」

 

竜ヶ峰から再び、視線をスクリーンに移す。

士道が十香の精霊としての力を封印していた―つまり、十香とキスしていた。その瞬間、彼女が纏っていたあの鎧のようなスカートのような衣服が消滅して―生まれた時の姿になってしまった

 

うわぁ…凄い身体だ。

『男なら一度は抱きたい身体だな』

全くだよ…それにしても士道も大胆だねぇ~、皆が見てるのに…ま、それでもやらなきゃいけないんだから…男気って奴なんだろうけど。

『それで…お前は如何するんだ?』

そうだねぇ―精霊についての情報が少ないのは今後とも厳しいんだ。なら、決まってるよ

 

「そうだねぇ―条件がある。」

「条件―だと?」

「簡単な事さ。僕の行動のこれまで通り自由を最優先させて貰う事。」

「それは―」

「……構わないさ。君は私達の下に付く訳ではない。君はこれまで通りに行動してくれて構わない。琴理もそれで良いのだろう?」

「……はぁ。意外と頑固ね―分かったわ、迅。」

「―――契約成立だね」

 

ニヤリと口の端を上げて僕は言う―。

 

「ああ―これからよろしくな【強欲】」

「立場は一緒じゃないけどね【憤怒】」

 

スクリーンには、士道にくっ付きながら満面の笑みを浮かべる十香ちゃんの姿があった。

僕等の戦争は―一度此処で幕を閉じる事になった。

 




以上、9話目でした。 感想お待ちしております!

十香デッドエンド編…残すは後日談のみとなります
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