常に小説書ける人ってすごいと思う。
忍者登録書
うずまきナルコ
趣味
イルカ先生のための花嫁修行
イルカ先生とデート
イルカ先生との進路設計
以上
「…………」
「どうしたの、おじいちゃん。そんな何とも言えないって顔をして」
アカデミーの卒業試験から数日後。
現在、私は忍者登録書を三代目火影こと、おじいちゃんに提出をしに来ていた。
顔写真と共に出す公式の書類のため、少しばかり気恥ずかしかったが、忍として認められるためには必須の登録を怠るわけにはいかないのだ。
なんたって、私が自由でいてもいい理由の一つが忍になることであるからだ。それに、
「お前が……イルカのことを好きなのは知っているが、だからといってこれは……」
イルカ先生自慢の生徒として、一人前のくノ一にならなくては彼の評価に関わってしまうからである。
未来の旦那様のために、身体を張るってどんだけ私はいい女なのだろうか? あ、普通の女の子はこんなこと思わないのか……。えーっと、イルカ先生のためなら、私なんだってできるってばね!
うーん、これも違う気がする……と、私があれこれ考え事をしていると、
「書き直し」
「はぁ!? なんでてっばね!?」
書類の再提出を求められてしまった。
はぁ? なんで私の書類の何処に、何が問題があったってばね!? と強気の姿勢と眼光で、おじいちゃんに顔を近づける。
「……当たり前だ。この忍者登録書は里だけの隠密性の高い……お前にとっても大切な書類じゃぞ……なんじゃ、その不満な顔は」
「だって、何もおかしなことは書いてないってばね?」
「ダメなもんはダメだ。いいから書き直してこい!」
「いや! 絶対このまま出すってばね!!」
グヌヌヌ……とお互い一歩も譲らずにいると、私たちのいる部屋の扉がガラッと荒っぽく開けられる音と共に、
「じじィ!! 勝負だァ コレ!!!」
勢いよく小さな男の子が部屋の中に飛び込んできた。
ヘンテコな帽子に浅葱色の長いマフラーを巻いた少年の手には手裏剣が握られており、おじいちゃんはその姿にため息をついている様子……。
いったいどういうことだってばね……。
私が状況が飲み込めないままでいると、その少年の後を追っていたであろう人物も現れて……。
「ああ! また何てことを……あっ!」
「いってェェーーーーー!!!」
そして、勝手に躓いていた。
勢いがそのまま顔から行ったので、とても痛そうだ。それでも泣かずに立ち上がるところ、活発な少年である。
「くっそおお、トラップか。コレ!?」
「大丈夫でございますか!? お孫様!! ちなみにどこにもトラップはありません!!」
何だこのヘンテコな師弟?は。
「ん? こ、こいつは……確か……」
見慣れた鋭い眼光。私という存在を認めない目……。
どうやら、この少年の先生を私は好きにはなれなさそうだ。が、少年の方はどうやら私のことを知らないようで、
「そうか!! 貴様が何かしたんだなコレ!!」
違う意味で私を敵視してきていた。
「はぁ……私じゃないわよ。あんたが勝手にこけたんでしょ?」
「それはオレがただのドジだっていいたいのか!?」
少年の問いの返答をわざわざ言葉にするのも億劫であるため、私は肩を竦める。が、その対応がマルクロメガネは気に入らなかったのだろう。私に怒声を浴びせてくる。
「コラ! ナルコ!! 失礼だぞ!? その方は三代目火影様のお孫さんだぞ!!」
「ふーん、で? この子が偉いわけじゃないでしょ?」
「なっ……! なにィーーー!?」
はぁ、これ以上この場にいてもめんどくさいだけだってばね……。
書類も提出はしたし、この場に居続ける理由がなくなった私は、おじいちゃんの引き留めようとしてきた声を無視。
そして、足早に火影室を去った。
◇◆
火影室を立ち去り、建物の外へ出るため廊下を歩いていると……
「……久しぶりだな」
木の葉の里で一番会いたく男に遭遇してしまった。
顔の傷と、複数の巻かれた眼帯と包帯が目立つその男は、杖をつきながら、私に近づいてくる。
その男の声も、姿も、何もかも受け入れたくない、触れたくない私は無視をする。
そして、そのまま横を通り過ぎようとしたとき、
「……お前が
「ーーーーーっ!」
あんたが……私を……そんな目で見るな、憂うな……! 道具としか思ってないくせに、誰も愛したことのない人間のくせに……! 一端の父親のように子供を諭そうとするんじゃないってばねっ!! 一度はあんたみたいな非道な人間を義父として慕っていたことが……!!!
激情が喉から溢れそうになる。だが……
「……失礼しました。……お久しぶりです……ダンゾウ様……」
「……あぁ、久しぶりだな、ナルコ」
私は望み通りに言葉を並べた。
口論すらしたくなかったからだ。最低限の言葉で済ませたいのだ。
「……では、失礼します」
そして、別れの言葉を述べると、私はダンゾウの前から足早に去った。
背中から胸糞悪くなるアイツの視線を感じるが、私は絶対に振り返らない。
……絶対に。
◇◆
……ずっとついてきてるな。
そう、火影室のあるあそこを出たあたりから、ずっと……
「ササ……ササササ……」
おじいちゃんの孫が私をつけてきているのだ。
下手っくそな隠れ身の術で。
何か変に気に入られてしまったのだろうか? それとも何かの遊びなのだろうか? と、いつもとはまた違った好奇の視線に私は戸惑っていた。
が、その状態のまま、いつもの口汚い八百屋で既に今晩の買い物も済ませてしまっていたため、後は帰宅するだけなんだけど……。
さすがに家まで着いてこられるのも嫌だしね。というわけで、
「ねぇ、君、それバレバレだよ?」
「!?」
なんで、驚いてるんだこの子……。
「フフフ……よくぞ、見破った! コレ!!! さすが噂通りのやつ!!」
「はい?」
「オレ、お前の子分になってやる! コレ!! だから、そのかわり、今期のアカデミーで一番だったやつの強さを教えてくれ! 頼む!! 姉御!!」
「そんな汚い二つ名嫌だから、別の人に頼んで」
「なんでだよ!? かっこいいだらコレ!!」
どうやら……変な目的で目をつけられしまっていたようだ。
◇◆
同時刻。
「あれ? くそ! また逃げられた!?」
木ノ葉丸が見つからぬことを彼の家庭教師であるエビスは火影室で嘆いた。
どうして、エリート教師である自分の思い通りに学んでくれないのかと。
そのエビスの慌てように三代目火影ーー猿飛ヒルゼンは、至って落ち着いていた。
「どうやら、ナルコの後をつけていきおった。まぁ、ナルコと一緒なら問題ないじゃろ」
なぜなら、ナルコのことをよく知っているヒルゼンからしてみれば、何も心配をすることがないからであった。
だがしかし、ナルコのことをただの九尾の化け物としか知らぬ者からすれば……
「何ですと!? 九尾の小娘と一緒!? それは一大事!!」
そんな化け物と一緒に大事なお孫さまがいることは危険でしかなかった。
エビスの言葉にヒルゼンは思うことはあった。しかし、自身に彼らを罰することができる権利がないことを彼は自覚していた。
へその尾を切ったばかりの赤子であったナルコを九尾の器れ物とした一人であることを悔いていたからだ。また、その後を放っていたことにも……。
だから、ヒルゼンは罪の意識から今もただ黙っていた。エビスが火影室から出て行くそれまで。
「それじゃあいい? 基本のチャクラ練りからあんたはダメダメ! 無駄に練ってる!」
「オッス! 姉ちゃん! 変化!!!」
少年の身体から煙が湧き出る。
「変化の術」ーー他人や生物、物体などに身体の形状を変化させて化ける忍にとって基本の忍術である。
そして、白煙が彼の身体を丸々包み込むが……
「いい? 精神エネルギーが未熟なあんたが速攻で上達するためには、身体エネルギーを効率よく使う必要があるわけ……って、まじか……変化がまず上手くできないのか」
煙から現れたのは、金髪碧眼ではあるが、私とは似ても似つかないぼるんっとした私だった。
それとも少年の目から見たら、私の姿はこれなのか? なにそれクソ腹立つってばね。
「ええ!? 結構上手くできたと思ったけどなコレ!!」
「あんたぶん殴られたいの?」
「ヒィィィーー!? 嘘ですコレ!」
はぁ……これはだいぶかかりそう……断ればよかったってばね……。
そして、少年の修行ともいえない生ぬるい修行の指導をし始めてから数刻。
そこらで買ったお茶を両手に私たちは少し休憩を入れることにした。
「ほらあげる」
倒木に腰掛ける少年にお茶の一本を投げる。すると、彼は慌ただしくそれを受け取ると、
「お、おわわっ、と、……ありがとう、コレ」
素直にお礼を述べてくれた。
ほんと、私はなにやってんだろうか……自分らしくもない。
ただ、なんとなく放っておけなかったのだ。それに少年にちょびっとだけ興味が湧いていたのもある。
はぁ……今日はイルカ先生には会えそうにないなぁ。
そう考えると、これに付き合うのだいぶ辛いって思いつつも、私は諦めたように少年と同じ倒木に腰を置いた。
「それで? 何であんたは、あんなに火影のおじいちゃんに食ってかかるの? 嫌いなの?」
「……別に嫌いなわけじゃない……」
その反応は、むしろ大好き、と。
「……木ノ葉丸って名前……じいちゃんがつけてくれたんだ。この里の名前にあやかって。でも、これだけ里で聞きなれた響き名前なのに……誰一人その名前で呼んでくんない!」
……。
「みんなオレを見る時やオレを呼ぶ時、ただ火影の孫として見やがんだ! 誰もオレ自身を認めてくんない。もう やなんだそんなの!! だから、今すぐにでも火影の名前がほしーんだ!!」
「ふーん、そういうこと……あんたバカね」
「え!?」
「誰にでも認めてほしいなんて、そもそも無理な話よ。そもそも、あんたの火影のおじいちゃんだって、里の全ての人に認められてるわけじゃないんだよ?」
「なに!? じいちゃんをバカにするな、コレ!!」
「ぷっ、やっぱおじいちゃんのこと大好きなんだね」
「は!? 別にじいちゃんのことなんか好きでもなんでもないぞ!!」
「じゃあ、あんたはおじいちゃんのこと嫌いなの?」
「そ、それは……」
あちゃちゃ、これは意地悪をしすぎたかな……。
私が弄び過ぎたせいで、しどろもどろになってしまった。
はぁ……しょうがない。どうやら、私は年下にはお節介になってしまうようだ。
言葉を詰まらせ、困っている少年の頭に優しく手を置く。
「嫌いじゃないんでしょ? で、その大好きなおじいちゃんはあんたのことを名前で呼ばれなかったことなんてあった? じゃあ、おじいちゃんには認められてらんだからいいじゃん」
「……それは……そうだけど……でも……」
「でも?」
「オレはもっと、もっと、色んなやつに、みんなに認めて欲しいんだ! だから、今すぐ火影の名が欲しーんだ!!」
「……」
強情なやつ……。
でも……気持ちがわからなくもない……。
誰にでも認めて貰いたい、生きていていいって、存在してていいって……認めて欲しかったから……。それは私が諦めたものだから。
だから……
「そっか……じゃあ、今よりもっともっと強くなるしかないね、
「!!」
「なに驚いてんの? ほら修行の続きやるんでしょ?」
「お、おうだコレ!」
「いえ、それは化け狐の役目ではありません」
「え!?」
ふーん、家庭教師の特別上忍といっても腐っても上忍。そこそこの瞬身の術ね。
ただ……
「フン」
その蔑んだ目をやめろってばね、
おっと、木ノ葉丸のいるのに殺意はよくない。
しかも一応彼はただ職務を真っ当しようとしているだけである。
だがしかし、こっちも木ノ葉丸という少年に興味を抱いた今、私も彼のもう一人の師匠という座を譲るつもりはーーー
「さっ! お孫様帰りましょ!」
「ヤダ! オレはナルコの姉ちゃんに鍛えてもらうんだ!」
「なにを!? 私の言う通りにするのが、火影の名をもらう一番の近道なのですぞ!! ささっ、帰りましょ!!」
「ヤダァーー! メガネ教師よりもナルコ姉ちゃんのほうが教え方うまいし、なんかいい匂いするし、か、かわ、とにかくヤダァ!!」
ーーない。
私は、両手の人差し指と中指を交差させ、印を作る。そして、チャクラを必要な分だけ練り、
「影分身の術」
術を発動した。
煙が晴れると共に実体を持った私の分身体が数十体生成される。
「うっわぁぁっ、スッゲェー!! コレ!!」
「フン! くだらない! こう見えても私はエリート教師。影分身如きではやられはしないですよ」
「「「「「だろうね」」」」」
だから、簀巻きにさせてもらおう。
「「「「「金剛封鎖」」」」」
私の脊髄にチャクラを凝縮し、解き放たれたそれはチャクラによって生成された無数の鎖。
身体から放たれた鎖は、私の意思に従って、対象の巻き取りに一直線に伸びていく。
しかもそれは、分身体も例外ではない。
「なんですと!?」
そう、無数の鎖がただ一人の身体を拘束しに伸びていったのだ。
クロメガネ教師が絶叫するのも仕方がないとは思う。あ、身代わりの術で逃げた。まぁ、それが正解なんだけど……。
「うわわわわ、むぐっーーー!!」
この量の鎖を相手に逃げ回るのに、その程度の瞬身の術では無謀だってばね。
クロメガネは簡単に私の分身体の鎖に巻き取られてしまった。
そして、それを見ていた木ノ葉丸は興奮気味に私の下へと駆け寄ってくる。
「すっげえええ! コレ!! ナルコ姉ちゃん今の全部教えてくれ!!」
素直に褒められるのは……久しぶりだ。
もう少し、甘えてしまいたくなる。が、私は影分身を解き、クロメガネも解放する。それから、喧しい木ノ葉丸の頭を軽く叩いた。
「いってえぇ……!!」
「アホ、あんたは基礎からちゃんとやりなさい」
「な、なんでだよコレ!! オレにさっきの術教えてくれないのか!?」
「ばーか、目先のことだけ考えてたら、いつまでも立派な男にはなれないの。いい? みんなが認めてくれる、火影って名前をあんたが本当に語りたいなら、近道なんて絶対にない」
偉そうに口舌垂れるほど、私は立派な忍でも人間でもない。ただ、それでも教えてあげられることはある。
「だから、あんたはまず、あそこにいるクロメガネに自身を認めさせて、超えてやるところから始めなさい。そしたら、次は私、その次は火影のおじいちゃんって超えていけばいいんだってばね!」
「ーーーー!」
私の言葉に木ノ葉丸を目を大きく見開く。そして、肩を震わせ、私の視線から逃れるようにそっぽを向いた。
「ふ、ふん、えらそーに説教なんかしちゃってさコレ! 姉ちゃんだって忍成り立ての子供のくせに……でも、わかったコレ! 姉ちゃんの言う通り、めがね教師にオレのことを認めさせてやる! そんで……そんで……ね、姉ちゃんが惚れるようなすげえ忍になってやる!」
なんか後半にとんでもないことを言っていたような気がする……が、どうやら、木ノ葉丸の迷いを拭ってあげることはできたようだ。
それに、クロメガネ教師との関係もどう転ぶかはわからないが……きっと良くなることを願う。
伸びたままのクロメガネは木ノ葉丸に任せることにし、私は珍しく他人の想いが願うことを祈りつつ、帰路を歩いた。
ほんと、今日の私は…。私らしくない。