物書きリハビリです。
私は何もせず、何も考えず……溜めた湯船に全身をずぶんと浸けた。それだけで身体はとても温まる。
湯船に浸かりながら、暗い窓をふと目に入れた。
そこには街頭の光、里の灯は遮光されており、私の姿がぼんやりと映し出されており……。
そうして、空虚なものを見つめていれば、思い起こされるのは、嫌なこと、私が背負わされた業……苦痛が胸の奥から湧き出てくる。
全てぐちゃぐちゃにして、パパとママも、アイツも、自分すらも
ナルコ……逆上せるぞ
「……そうだね」
そんな悪辣でしかない思考回路は、皮肉なことにも憎くて、大好きな同居人によって途切れてくれる。
……ひとまず、今1番先に考えるべきことは明日の演習であるのだ。
私は思考を切り替えるため、羽根板で完全に窓を閉じた。
そして、湯を手で掬い上げ、顔を拭った。
──演習内容は現状不明。
──忍び道具一式、つまり、完全装備。
──朝食は厳禁、吐くほどきつい演習ってこと?
要するに未知数。
ただ、思い起こされるのは、担当上忍──カカシ先生の言葉。
『卒業生27名中、下忍と認められる者はわずか9名。残り18名は再び学校へ戻される! この演習は脱落者66%以上の超難関試験だ!』
アカデミーに戻される。
イルカ先生にまた毎日会えることは嬉しい。
でもそれ以上に、私は普通に生きたいのだ。なんの柵もなく、自由に。
だから、そのためにも……絶対に忍にならなくてはいけない。
「……クーちゃんの力を借りればきっと……うんん、絶対勝てちゃうよね」
ただ……それでは意味がないことを私は理解している。
私だけの、私自身の力だけで上忍に認められてなければならないことを。
一人前の忍であると。……アイツに、あのクソの掃き溜めのジジイに証明しなくてはならないことを。
「だから……だから、私は、私の力だけで忍になるしかないってばね……!」
◇◆
翌日の早朝、木ノ葉の第三演習場に、私たち第七班は集まった。
──担当上忍のカカシ先生を除いて……である。
「…………おせぇ」
とうとう誰かの口から不満の言葉が溢れた。
その声の主は、うちはサスケくん。
彼は、眉間にこれでもかと皺を寄せており、あまりのイライラから落ち着きがない様子であった。
常に冷静沈着なイメージの彼にしては、珍しい姿で少しだけ意外でもあった。
──ぎゅるるるるるるる
が、腹の音が彼の方向から聞こえてきたことで察する。
なるほど、空腹も相まってのイラつきのようだ。
よほど恥ずかしかったのだろう、サスケくんの耳が赤くなっているのがわかる。しかし、気持ちはわからなくもない。
なぜなら、私も例外なくお腹が鳴っていたからだ。
──ぐぎゅるるるるるる……
それは第七班、最後の一人も例外ではなく、
「……しゃーんなろぉ」
春野サクラさんもぶつぶつと呟いていた。彼女は……その……とても穏やかではなさそうであった。
そうして、私たちの機嫌が急降下し尽くしたというところで、
「やー、諸君おはよう!」
私たちの担当上忍が悪びれることもなく、ようやく合流した。
マスクとかで片目しか表情が窺えないが、きっと悪いとなんて片隅も思っていないよこの人……。
私たちの空気を読まず、明るく手を振っているその姿は、さすがの温厚な私も額に青筋が浮かんだ。
というか、そんな私たちの空気すら楽しんでそうな雰囲気がするってばね!
しかし、ようやく役者も揃い、演習は始まる。
カカシ先生は私たちを第三演習場の中央に集めると、背負っていたリュックサックを下ろすと中から何かを取り出す。
それは目覚まし時計であった。
先生はそれを三つ並んだ丸太の中央にセットしはじめる。
「よし、12時セットOK」
「「「?」」」
その配置は丁度演習場の中央に位置しているが……、私たち三人はカカシ先生の意図が読めず、頭の上に?マークが浮かんだ。
そして、次に先生は細い紐で括られた小さな二つの鈴を取り出すと、
「ここに鈴が2つある……。これをオレから昼までに奪い取ることが今回の演習だ」
サバイバル演習の内容を端的に話し始めた。
「もし、昼までにオレから鈴を奪えなかったやつは昼メシぬきだ。あの丸太に縛りつけた上に目の前でオレが弁当を食うからな」
──ぐぎゅるるるる
……朝食抜いてこいって……そういうことだったってばね
「鈴は一人1つでいい。2つしかないから……必然的に一人丸太行きになる。……で! 鈴を取れなかったやつは任務失敗ってことで失格だ! つまり、この中で最低でも一人は学校へ戻ってもらうことになるわけだ」
なるほど……ドン引きである。
カカシ先生の言葉に私たちの顔は引き攣っていた。
そんな私たちの様子を気にも留めず、カカシ先生は淡々と話を続ける。
「手裏剣も使っていいぞ。オレを殺すつもりで来ないと取れないからな」
「でも! 危ないわよ先生!!」
「大丈夫。オレはアカデミー卒業したばかりのひよっ子に負けるほど弱くないから。じゃ……よーいスタートの合図で」
忍者は裏の裏を読め
声が頭の中で囁いてくる。
……どのような状況においても感情を表に出すな……
任務を第一とするのが忍だ
感情は……
理性は保たれている。狂ったわけではない。
私は普通のくノ一として目的を優先しているだけ……。
腰付袋から取り出したクナイを取り出し、私はカカシ先生に投げつけたのだ。
そう、卑劣な奇襲である。
その両刃の道具はサスケくんとサクラさん、二人の間からカカシ先生の胸元を貫きに進む。
が、
「おいおい、そうあわてんなよ。まだ、スタートは言ってないだろ?」
容易く受け止められてしまった。
私が投げたクナイをカカシ先生は人差し指と中指の間で挟み止め、動揺をしている様子もない。
相手は現役の上忍であるのだから当然である。実力の一端にも満たないが上忍の凄みを垣間見たことで、私たち3人は緊張感に包まれた。
そして、カカシ先生は私たちのその姿に嬉しそうに目を細めていた。
「でも、ま……やっと全員本気になってくれたようだな。……じゃ、始めるぞ。よーい……スタート!!」
私たち3人の忍生命を賭けた蹴落とし合いが始まる。
◇◆
モチベ高いので、次話も早いと思います…